AX戦略 次世代型現場力の創造

発刊
2021年8月20日
ページ数
388ページ
読了目安
570分
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大企業がイノベーションを生み出すための組織マネジメント手法
ソフトウェア開発の手法として確立された「アジャイル」は、現在多くの組織で企業経営の手法として使われている。大企業がアジャイルを成功させるためには、どのようにすれば良いのかを、アジャイルの根本的な考え方や事例から紹介しています。

アジャイルと官僚主義のバランスをとる

アジャイル(自律マネジメント型のチームが高速回転しながらイノベーションを推進するビジネスの手法)が企業経営の主流として認められるようになってきた。アジャイルは元来、ソフトウェア開発を迅速かつ柔軟に行うための手法として確立された。今日では、ソフトウェア開発に留まらず、企業経営手法として多くの企業に急速に普及している。
大企業の多くはイノベーションを起こすことが難しいと感じており、官僚主義的な組織やプロセスに押しつぶされそうになっている。アジャイルは組織のイノベーションスピリットをそうした抑圧から解き放ってくれる。アジャイルによって、企業は顧客に提供する製品やサービス、あるいは社内の運営方法などを刷新することができる。

 

しかし、多くの素晴らしいアイデアがそうであるように、それを実践しても思い通りにならないことがよくある。アジャイルは拡大スピードが速すぎるとコントロールできなくなる恐れがある。アジャイルを誤解し間違って用いている企業もある。アジャイルを間違って実行すれば、必ずといっていいほど惨憺たる結果が待ち受けている。

一部のカリスマ指導者は、アジャイルはどのような状況においても、官僚主義にとって代わるべき万能薬として推奨している。しかし、「アジャイル万能論」的な熱狂者は、長期にわたり培われてきた官僚主義の長所を理解できていない。変革や技術革新の対極にあるものとして忌み嫌われる官僚主義は、ビジネスの歴史では偉大なイノベーションの1つだった。
階層的な権限、労働の特化と分担、事務手続きの標準化によって、企業はそれらが導入される以前よりもはるかに大きく成長することができた。
アジャイルの特徴である、多様性、現場判断、意思決定の分散化は、食品や医薬品の安全性、差別禁止やハラスメント対策、会計基準、航空安全、品質管理、製造規格のような領域では弊害となる。企業がやるべきことは、官僚主義をすべてアジャイルに置き換えればいいというのではなく、いかに両者のバランスを図っていくかである。

 

アジャイルチームが成功するのは、物事を迅速に進める場合だ。チームは新しいアイデアが十分確立される前に、将来の顧客のために試してみようとする。彼らは官僚主義的な手続きや細かな計画に従うこともない。そしてチームが組織内で力を発揮するためには、彼らに多くの自由を与え、それを支援する必要がある。
アジャイルを本当に成功させようとするなら、官僚主義とイノベーションは共に手を携えなければならない。それによって両方の機能が改善し、スタッフが互いに協力しあってパフォーマンスが向上するシステムが生まれる。

 

アジャイル企業になるための道のり

①アジャイルチームを好きになる

アジャイルチームは、何をどのように実行したらいいか漠然としていて、予測も難しい時に、革新的な問題解決を見つけるためのツールだ。チームの主要な目的はイノベーションを通じてビジネスを変革することである。そのイノベーションとは次の3つ。

  1. 新しい製品やサービスの開発と顧客体験の改善
  2. 業務プロセスの改善を通じて、顧客にソリューションを提供する
  3. 業務プロセスを支える技術を革新する

アジャイルチームを支援し、参加する人々は、アジャイルの実践に通じているだけでは不十分だ。なぜチームは自力で何でもしなければならないかも理解しておく必要がある。チームが独立しているのは、自律性によってモチベーションが高まり、顧客やオペレーションに最も近いところで働く人々に権限を委譲できる。そして、経営幹部は企業戦略の策定と実行に多くの時間を割けるようになる。

 

②アジャイルを拡大する

チームを拡大させることによって、複数のチームからなるチームがマトリックス組織や階級組織の官僚機構の中でどのようにすればうまく機能するのかを学ぶことができる。アジャイルの拡大を上手に行うためには、リーダーが「アジャイル」という言葉が何を意味するか十分に理解する必要がある。官僚制度とイノベーションを共生的なパートナーに高めて、両者の共同作業から優れた成果が生み出せるようにする。

 

③アジャイルのイノベーションを活用して目的を達成する

アジャイル変革に着手した時、最も困惑するのは、目標をどこに置き、そこへどのように到達したらいいかが全くわからず知ることもできない点だ。そもそも、アジャイルの狙いは、何をどのように提供したらいいかわからない状況で革新的な問題解決を生み出すことである。最初のステップはアジャイルなリーダーシップチームを設立して、他のアジャイルチームと同様の運営を行うべきである。リーダーシップチームの中に、企業全体の業績に責任を負うイニシアチブオーナーと、チームのメンバーにコーチングを行い積極的な関与をサポートするファシリテーターを設ける必要がある。

 

④アジャイルを楽しむ

アジャイルとは、チームワークによる優れた働き方を見つけ出すことだ。それによって、人々は幸せになり、チャレンジ精神が旺盛になり、大きな成功を手にすることができる。アジャイルを楽しむ方法の1つは、成功体験を積み重ねて、みんなで祝福することである。アジャイルのスプリントを適切に運営すれば、私たちは毎週あるいは2週間に一度、有意義な目標に向かって前進している満足感を味わうことができる。

参考文献・紹介書籍