「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる

発刊
2015年10月17日
ページ数
570ページ
読了目安
204分
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推薦者

すごいリサイクルビジネス
不要になった衣料品を回収し、バイオエタノールやポリエステルにリサイクルする。
独自のリサイクル技術によって、石油を不要とする社会を目指して、事業を行っているベンチャー企業の物語。

事業のきっかけ

2006年の中頃、「トウモロコシから、エタノールなどのバイオ燃料ができる」という新聞記事を読んで、ある事がひらめいた。「トウモロコシからバイオエタノールが作れるなら,同じ植物の綿でできた服からもバイオエタノールが作れるのではないか」

日本も世界も、繊維製品のリサイクルはほとんど進んでいない。日本国内では、衣類が年間100万トン、カーテンのような繊維製品も含めると年間約200万トンが廃棄されている。その内、2割ほどがリユース、リサイクルされるが、残り8割はごみになっている。

何かいい手はないかと、当時は、新聞や雑誌の隅々までチェックし、また異業種交流会のようなものにも時間があればあちこちに顔を出す毎日だった。そんな生活を数年は続けていた。

 

会社のはじまり

とある異業種交流会で出会い、一緒に会社を立ち上げる事になった高尾正樹は、このとき東京大学の大学院に在学する技術者のタマゴ。その高尾に新聞記事を見せ「植物からバイオエタノールが作れて燃料になるなら、綿からバイオエタノールをつくれるのではないか」と話した。

高尾は、すぐに技術開発に向けて動き始めた。大阪大学の兼松康男教授から共同研究について快諾を頂き、実験に取りかかった。綿は95%が「セルロース」という「炭水化物」に一種でできている。これも「糖」がたくさん連なってできたもので、トウモロコシと同じように「セルロース」を「糖」に分解する事ができれば、バイオエタノールを作る事ができる。綿からバイオエタノールを作る技術的な課題は、このセルロースを糖化するプロセスの効率化にあった。

店で買ってきた綿100%のTシャツを2cm四方に切り取って、それをセルロースを糖化する働きのありそうな酵素を溶かした液に浸してみる。一晩置くと、糖ができていた。後でわかったのは、服を作る行程の中にセルロースを効率よく分解するポイントがあった事だった。もし、綿から直接バイオエタノールを作ろうとしていたら、ハードルを超える事はできなかったはずである。衣料品からバイオエタノールを作る事ができる。これで研究を進める事になり、2007年に日本環境設計株式会社を設立した。

 

ビジネスモデルの構築

実用化レベルの技術開発の目処が立ったのは2008年の春先。次に実証実験用のプラントが2009年5月に今治市にできた。使わなくなった衣料品やタオル工場から出る綿かすを集め、実証実験用のプラントでバイオエタノールを作った。

この頃から、この技術を武器に衣料品を回収してバイオエタノールを量産する事業モデルを作るために駆けずり回り、官公庁や会社を行脚した。

リサイクルをビジネスとして成立させる上で最も難しいのは、実際のところは技術ではない。いかに「集める」か、即ち回収の動線を作る事こそ、最も重要なポイントだった。「集める」事はできなければ「戻す」技術も役に立たない。

特に大事だったのが、企業の協力と消費者の参画の2点だった。集めるに当たって「売る」側の企業と、それを「消費する」人を取り込まなければ、服は集まらない。この2点を実現して事業化を成すために不可欠だったものが「しくみ」と「ブランド」だった。駆けずり回る内に、良品計画の金井社長に巡り会った。それがきっかけで、衣料品のリサイクルプロジェクト「FUKU-FUKU」が生まれる事になった。

小売店の店頭で衣料品を回収するモデルについて、経済産業省の調査事業としてスタートさせ、ワールド、良品計画、三菱商事、イオンリテール、丸井グループといった企業が参加してくれた。そして、消費者に認知されていく事になった。