チームのことだけ、考えた。 サイボウズはどのようにして「100人100通り」の働き方ができる会社になったか

発刊
2015年12月18日
ページ数
256ページ
読了目安
294分
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多様な組織をつくる方法
「最長6年間の育児・介護休業制度」「副業は原則自由」など、ユニークな人事制度を持つサイボウズの代表が、起業から現在までの組織マネジメントの試行錯誤を綴った一冊。多様性のある組織をつくるための様々な手法が紹介されています。

多様化前のこと

サイボウズは、1997年に創業した会社で「グループウェア」という情報共有ソフトを開発している。中小企業から大企業まで広く利用されており、日本ではトップシェアだ。グループウェアを使えば、様々な情報を共有し、スピーディに意見交換できるので、効率的に働けるようになる。

サイボウズは創業後、売上を伸ばし、2000年に上場した。しかし当時、異常な忙しさが原因で社員同士の関係は険悪だった。そこで採用しやすい東京に移転し、どんどん人を採用していった。結果、急いで人を増やし過ぎた。2002年には、社員数が70人を超え、2年で2倍以上に増えた。社内の一体感は急速に失われ、さらに売上と利益は激減し始めた。そもそも持続的に成長できるビジネスモデルではなかった。ソフトウェアは1回買ったら永久に使い続けられる。生き残るためには持続的にお金をもらえる仕組みを作らなければならない。そこで毎年料金を頂く保守契約を新たに作った。しかし、保守契約が定着するには数年の時間が必要だった。

 

成果主義の失敗

売上を回復するには別の製品が必要だと考えた。そして、ハングリー精神を復活させたいと、成果主義に基づく人事制度を作った。しかし、この人事制度は、社員同士の競争を促進したため、今までにも増して他人の仕事を手伝わなくなった。また妙に低い目標を立てる人が出てきた。ボーナスも士気向上につながらなかった。売れ筋製品を扱う事業部は多額のボーナスを手にしたが、立ち上げ途中の新製品を扱う事業部は全員ゼロ。納得できない社員は辞めていき、2006年には離職率は28%を記録した。事業規模拡大のために、M&A戦略を進め、1年半で9社を傘下にしたが、業績の悪化も明確になった。

 

人間は理想に向って行動する

なぜ社員が辞めるのか。それは、辞める事で理想を実現したいからだ。例えば、もっと残業を減らしたい、もっとスキルが上がる仕事をしたい、もっと高い給料が欲しいなど。現在の会社の状況に満足せず、高い理想を持っているから、不満という感情が生まれる。対策は、その理想を聞き出し、実現するための課題を考え、それを遂行していけばよい。

この法則に気づき、サイボウズに一体感がない原因も理解できた。サイボウズには共通の理想がなかった。多様な人達をチームとして活かすためには、共通の理想が必要だ。社会の役に立っている実感を得ながら、自信と誇りを持って最高のソフトウェア作りに取り組みたい。「世界で一番使われるグループウェア・メーカーになる」、事業分野をグループウェアに絞り込み、買収した子会社の株式を売却した。

 

多様性を重視する

組織が何を目指し、どのような状態に変われば、チームワークが高い状態が作れるのだろうか。結果的に「多様性」を追求する事が楽しい事を引き起こし続けていた。この多様性を追求するにあたり、「100人いれば、100通りの人事制度があってよい」という方針を掲げた。ミッションに共感してもらえるならば、週3日働きたい人でも、自宅で働きたい人でも、みんな仲間に加えられるのが理想だ。

多様性を実現するには、全体の理想に共感している必要がある。そして、マネジメントをするには、この人がどの距離で付き合いたいかを確認しながら、距離に応じた制度を用意しなければならない。

組織に多様性をもたらしながら、かつ秩序を守り、成果を上げていくには、メンバーに「公明正大」と「自立」という2つの事を求める必要があった。メンバーがそれぞれの理想を持っているからこそ、1人1人が自覚と責任を持つ必要がある。

多様な働き方を選択できるようにした結果、離職率は2013年には4%を切るまでになった。離職率が低下する事によって、採用と教育にかかるコストを低減できた。