下請け製造業のための脱炭素経営入門

発刊
2024年1月17日
ページ数
216ページ
読了目安
207分
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中小企業の脱炭素の進め方
欧州を中心に世界的にCO2排出量の規制が進む昨今、日本の中小企業にもその影響が及びつつある。大企業の要請にとって、中小企業でもCO2削減が必要になってくることが予想される中、どのように脱炭素を進めればいいのか。
中小企業にとって必要な脱炭素の進め方が、わかりやすく書かれている一冊。特に大企業の下請け企業にとっては、避けて通れない内容が書かれており、その全体像を把握するのに役立ちます。

2026年には中小企業でも脱炭素が始まる

「脱炭素」という言葉はカーボンニュートラルとほぼ同じ意味。CO2の排出量を吸収量で埋め合わせることにより、CO2排出量を実質ゼロの状態にすることを意味する。排出量を最小限に抑えながら、削減できない排出量に関しては、新しい技術によって吸収することで実質ゼロを目指すことになる。

脱炭素を求める声の源は世界的な消費者、世論であり、それらの声に押される形で政府や大企業を中心に脱炭素の具体的な取り組みが進みつつある。この流れは中長期的に止まることはないだろう。2026年には大企業だけでなく、多くの中小企業が脱炭素に取り組み始め、2030年には脱炭素に取り組んでいない中小企業が淘汰される時代がやって来る。

 

既に大手企業から脱炭素に対する要請が取引先へ徐々に波及している業界も存在する。トヨタ自動車は、2035年までに世界の自社工場のCO2排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。2021年6月に、数百社の一次取引先に対してCO2排出量を前年比で3%削減する目標を示したほか、二次取引先以下のすべての階層のCO2排出量についても調査を進めている。

自動車業界以外でも、同じような形で一次取引先は二次取引先へ、二次取引先は三次取引先へと脱炭素化の取り組みが広がり、中小製造業者にも脱炭素が要請される未来が近づいている。

 

大企業が主導するサプライチェーン全体のCO2排出量把握

大企業においてはCO2排出量の開示が広がっており、サプライチェーンのCO2排出量の計算も始まっている。CO2排出量の計算方法は、国際的な枠組みによって定められており、多くの文書が公開されている。

CO2排出量の算出範囲は、3つの「スコープ」に分類される。

  1. 燃料の燃焼(事業者自らによる温室効果ガスの直接排出量)
  2. 電気の使用(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出量)
  3. その他(原材料の供給業者から製造、物流、販売、廃棄までサプライチェーンすべての事業者の排出量)

中小企業の場合、スコープ1、2とスコープ3の内、原材料などの上流のCO2排出量が主な算出の対象になる。

 

2023年時点で取引先からCO2排出量を聞かれることが少ないのは、大企業がCO2排出量を実測値ではなく、購入金額から推計しているからである。CO2排出量の推計は、供給業者のCO2排出量の削減努力が取引先のCO2排出量の計算に反映されない。そのため、政府はなるべく実測値を利用するべきという指針を出している。最短2025年頃からCO2排出量を実測値で計算して公表する大企業が出始めると予測される。

 

さらに一部の大企業は投資家向けにCO2排出量の削減目標を開示し、取引先にも要請を始めている。大手企業が中小企業を含めたサプライチェーンの全供給業者に対して、CO2削減を求めてくる将来も遠くない。

 

脱炭素に取り組むメリット

脱炭素の取り組みを始める大企業が増える一方で、ほとんどの中小企業は取り組みを始めていない。その理由は、やる意義がよくわからないこと、自社への影響が見えないことである。こうした状況を踏まえると、多くの中小企業が脱炭素に取り組み始めるまでには、まだ少し時間がかかる。だからこそ、今から動き出す企業は確実に先進企業になることができる。

 

脱炭素に取り組む中小企業は、次の3つのメリットが期待できる。

  1. 取引先から選ばれる
    大企業は脱炭素に取り組む企業の中から下請け取引先を選ぶため、新規取引のチャンスが広がる。
  2. 若い求職者から選ばれる
    脱炭素への取り組みを積極的に宣伝することにより、環境意識が高い人からの応募が増える。
  3. 政府から応援される
    政府は、脱炭素に取り組む中小企業を後押しするため、補助金など、様々な制度を用意している。

 

CO2削減が価値になる

これまで商品価値は、QCD(品質、コスト、納期)の3軸であり、これらの要素に重み付けをして調達先が決められた。しかし、これからの商品価値は、品質、コスト、納期にカーボンが加わり「QCDC」の4軸で評価するように変わる。例えば、A社は価格は安いが、CO2をたくさん排出しているので、少し割高でも品質、納期は同程度でCO2排出量がほとんどないB社から調達しよう、といった評価に変わる。つまり、製品をつくる上で排出するCO2を抑えられると、単価を上げたり、競争に勝つことができるようになる。

 

QCDCが商品価値の軸になった社会では、取引先から選ばれる勝ちパターンに大規模な変化が起こる可能性がある。

  • 「必要な時に必要なものをつくる」トヨタ生産方式から、一括生産・輸送へ
  • 長距離輸送が必要な海外生産から、国内への生産拠点回帰へ

 

QCDCの商品価値の軸のような新しい概念が普及する時は、取引関係が流動化しやすくなる。脱炭素に取り組む中小企業にとっては、新たな取引先への提案の余地が生まれ、チャンスになる。