現代語訳 論語と算盤

発刊
2010年2月10日
ページ数
256ページ
読了目安
307分
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日本実業界の父、渋沢栄一が説く経営哲学の教科書
かつてピーター・ドラッカーも「渋沢栄一に学べ」と言っていたとされる渋沢栄一が実践した商業に論語を応用したビジネス哲学。

約470社もの会社設立を成功させた日本実業界の父、渋沢栄一が、生涯を通じて貫いた経営哲学「利潤と道徳を調和させる」という、経済人がなすべき道を示した『論語と算盤』は、すべての日本人が帰るべき原点と言える。

明治期に資本主義の本質を見抜いていた彼の言葉は、指針の失われた現代にこそ響く。経営、労働、人材育成の核心をつく経営哲学は今もなお色あせず、未来を生きる知恵が満載である。

論語と算盤

「論語とソロバン」は一致すべきものである。孔子は、道徳の必要性を示したが、その一方で、経済についてもかなりの注意を向けている。
社会で政治を執り行うには、その実務のための必要経費が要る。一方で、国を治めて人々に安心して暮らしてもらうには道徳が必要となる。だから、経済と道徳は調和しなければならない。

かつては、東洋だけでなく、西洋でも金銭を賤しむ風潮があった。昔は知識も乏しく、道義心も薄いため、利益に目がくらんで罪を犯す者が多かった。そのために金銭を軽蔑する風潮が高まった。

しかし、世間一般の進歩とともに、金銭に対する見方もまともになり、経済活動と道徳を分けない傾向が高まっている。金銭のマイナス面を警戒し、プラス面にも目を向け、道義と一緒にする形で金銭の本当の勝ちを利用する努力が必要である。

正しい経済活動を行う方法

実業とは、利潤を上げていくことに他ならない。しかし、皆が「自分の利益さえ上がれば、他はどうなってもいい」と考えると国は危うくなる。だからこそ、本当の経済活動は、社会のためになる道徳に基づかないと長く続かない。

一方で自分の利益が欲しいという気持ちで働くのは、当たり前の姿でもある。社会のためになる道徳だけでも、世の中の仕事は衰えてしまう。現実に立脚しない道徳もまた、最後には国を滅ぼす。利益を得ようとすることと、社会正義のための道徳に則るということは、バランスを取る必要がある。

「モノの豊かさを実現したい」という欲望を、心に抱き続ける一方で、その欲望を実践に移していくために道理を持つ必要がある。

成功と失敗

人を見る時、単に成功したとか、失敗したとかを基準にするのは誤っている。人は、人としてなすべきことを基準として、自分の人生の道筋を決めていかなければならない。

成功や失敗というのは、心を込めて努力した人の身体の残るカスのようなものである。多くの人は成功や失敗よりも大切な、天地の道理を見ていない。人は、人としてなすべきことの達成を心がけ、自分の責任を果たして、それに満足しなければならない。

とにかく人は誠実に努力し、自分の運命を開いていくのがよい。それで失敗すれば、自分の知恵が及ばなかったと諦めることである。失敗しても勉強を続けていれば、いつか幸運に恵まれる時がくる。

成功と失敗といった価値観から抜け出し、超然と自立し、正しい行為の道筋に沿って行動し続けるなら、成功や失敗などとはレベルの違う、価値ある生涯を送ることができる。