これからのマネジャーが大切にすべきこと

発刊
2021年2月17日
ページ数
232ページ
読了目安
267分
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マネジメントの本質
マネジャーの仕事とは何か。本物のリーダーシップとは何か。42のストーリーで、マネジメントの本質とは何かが学べる一冊。マネジメント論といった難しい内容を抜きにして、組織を機能させるリーダーに必要なことがわかります。

マネジメントとリーダーシップ

リーダーシップをマネジメントと切り離し、マネジメントより高度なものとみなす「神話」が浸透している。この神話はマネジメントに悪影響を及ぼしてきた。リーダーシップへの悪影響は、それに輪をかけて大きい。

よく正しい物事を行うのがリーダーで、物事を正しく行うのがマネジャーだと言われる。しかし、この見方は間違っている。正しくない方法で正しいことを実行することなど不可能だからだ。リーダーシップのないマネジャーの下で働くと士気が下がる。マネジメントをしないリーダーは、現場で起きていることを把握できない。

 

リーダーシップとマネジメントは一枚のコインの表と裏の関係にある。マネジメントの過剰とリーダーシップの不足を問題にする主張をよく耳にするが、現実は正反対だ。実際には、お高く止まったリーダーシップが蔓延し、地に足のついたマネジメントが不足している。マネジメントは、現場から離れた高い場所でリーダーシップを振りかざすことではなく、地に足をつけて現場に関わっていくことであるべきだ。

 

魂なきマネジメントを行うための5つの簡単な方法

①ひたすら財務成績を気にしてマネジメントを行う。
製品やサービスや顧客を尊重するより、お金をマネジメントすることによって利益が得られると考える。

 

②あらゆることを計画通りに行う。物事を自然な流れに任せたり、その過程で学習したりすることは一切拒否する。

 

③マネジャーを頻繁に人事異動させ、流行のマネジメント手法以外は何も詳しくない人物を作り上げる。

 

④原材料や設備などの「資源」を売買する感覚で「人的資源」を雇ったりクビにしたりする。

 

⑤あらゆることを「5つの簡単な方法」の類いに従って遂行する。

 

マネジメントの本質

マネジメントの本質はいつの時代も同じだ。マネジメントは、アートとクラフト(技)を土台にした実践であって、分析を土台とするサイエンスや専門技術とは異なる。マネジメントの対象が変わることはあっても、そのための有効な方法は変わらない。

マネジメントとは「いまいましいことが次々と降りかかる」仕事だ。いつも時間に追われていて、強いプレッシャーにさらされ、ひっきりなしに行動しなくてはならず、何かをしていても頻繁に中断される。

 

マネジャーの仕事は、概ね口頭で行われる。読んだり書いたりするより、話したり聞いたりすることの方が多い。そして、タテの関係にある人たちと同じくらい、ヨコの関係にある人たちとコミュニケーションを取らなくてはならない。大半のマネジャーは、部署内の部下たちと同等かそれ以上、部署外の人たちとの仕事に時間を使う。

 

デジタル時代には、マネジャーがますます多忙になるため、マネジメントが現場と乖離して上っ面だけのものになりがちだ。大事なのは、テクノロジーの恩恵だけでなく危険もよく理解し、テクノロジーを使いこなすことだ。

 

リーダーシップよりコミュニティシップ

組織とリーダーシップは切っても切れない関係にあるとみなされている。どの組織にも組織図が用意されていることが、その証拠だ。企業が組織改編が好きなのは、それがお手軽だからだ。なにしろ、紙の上で人を動かすだけで状況が一変する建前になっている。しかし、実際に変わるのは、紙の上のことだけだ。

 

「リーダーシップ」という言葉は、必然的に一人の個人に光を当てる。誰か一人がリーダーになれば、それ以外の全員はフォロワーにならざるをえない。マネジメント論ではリーダーシップが神聖視されるが、それよりも重要なのは「コミュニティシップ」だ。

素晴らしい組織には、リーダーシップ以上に、強力なコミュニティシップの精神が浸透している。組織としてうまく機能するのは、生身の人間のコミュニティであって「人的資源」の寄せ集めではない。

ある組織にコミュニティシップが存在するかを見分けるのは簡単だ。そのような組織では、職場にエネルギーが満ち溢れていて、人々が献身的に働き、仕事に熱中している。わざわざ正式にエンパワーメント(権限委譲)する必要もない。元々、強い参加意識を抱いているからだ。組織がメンバーを大切にするので、メンバーも組織を大切にする。リーダーという名の誰かが最終的な数値目標を設定したりはしないからだ。

リーダーが不要なわけではない。不要なのは、過度にリーダーシップを重んじる姿勢だ。