対話型OJT 主体的に動ける部下を育てる知識とスキル

発刊
2020年12月22日
ページ数
288ページ
読了目安
391分
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推薦者

自ら考え動ける人材の育成方法
指示待ちではなく、自ら考えて動く人材を育成するにはどうすればいいのか。人が仕事を効果的に学ぶ経験学習の基本から、OJTによる指導方法まで、科学的エビデンスをもとにした効果的な人材育成方法が紹介されています。
リモートワークや兼業・副業の時代にあって、いかに人材を育成し、組織にコミットしてもらうかといったマネジメントの参考にもなります。

自律型人材をどのようにマネジメントすれば良いのか

これから求められる人材は、自ら考え行動できる「自律型人材」である。変化の激しい時代においては、指示待ちの「問題解決型人材」ではなく、自ら問いを立て、解決すべき問題を自ら見つけていく「問題発見型人材=自律型人材」が求められる。

自律型人材は、次のような行動をとることで、周囲からの信頼を得ていく。

  1. やることを決める:自分で「自分がやること」を、自分なりの判断基準で決められる
  2. 決めたことをやる:自分で決めたことをやり、言行一致の姿勢で周囲から信頼を得る
  3. チームとして働く:周囲を気遣い、チームとして動くことを忘れない

 

自律型人材が増えるのは良い反面、上司・先輩としてはやりづらい。自律型人材は、本業以外に、副業・兼業、または起業しようというぐらい自分の能力に自信がある人が多い。自分たちの組織だけにしばることはできない。だからこそ、今やってもらう仕事に、明確な意義を感じてもらったり、成長につながる手応えを得てもらうことができないと、退職するという選択につながる可能性もある。

自律型人材を、職場・組織へとつなぎとめておく「求心力」を保つには、この職場・組織に属していれば、この上司・先輩、仲間と一緒にいれば、自分が成長できると感じてもらう「成長環境」を提供することが重要である。このような成長環境を提供するための1つの手法が「対話型OJT」である。

 

効果的なOJTは仕事を任せること

OJTにおいて大切なのは、「仕事を任せる」ことである。上司のOJT内容の調査では、部下にとって効果的であったOJT内容は「権限委譲」である。つまり、上司による部下への直接的な教育・指導は、部下の能力向上に有効に結びついておらず、職務機会提供と自由裁量付与こそが部下の能力向上に対して有効な「唯一無比のOJT」である。

 

まず仕事は「やらないと」できるようにならない。人のやっているところを見たりしたとしても、自分で経験しなければできるようにはならない。近年の調査では、人の学びに及ぼす影響として「経験55%、他者25%、研修20%」という結果が出ている。つまり、育成したい部下・後輩に対して「経験」を積んでもらう必要がある。

 

部下・後輩に経験を積んでもらうために役立つのが「仕事マップ」である。

  1. 自分の仕事および部署の仕事の全体像
  2. 部下・後輩にやってもらいたい仕事

 

その上で、「自分の過去の経験としてはこういう経験が役に立ってきた。ただ今の時代はわからない。だからこそ、どう言う経験を積んでいったら良いかを一緒に考えていきたい」という姿勢を示し、実際にすり合わせを行っていく。これが対話型OJTの基本姿勢となる。

 

複数でOJTを実施し、部下の経験学習サイクルを回す

人の成長を促すのは、背伸びが必要な挑戦空間での「ストレッチ経験」である。ストレッチ経験には、次のようなものが考えられる。

  • これまで他の人の手助けが必要であったことを、1人でやってもらう
  • 他人の指導を行う
  • 他者との協働作業を増やす

こうした経験をしてもらう際に重要なのは「なぜ、その経験をしてもらいたいのか」という理由を説明し、意見を聞きながら進めていくことである。こうした話し合いをきちんと行っていくことが、部下・後輩の成長を促すために必要である。

 

「ストレッチ経験」を部下・後輩に積んでもらう上で忘れてならないのが、上司・先輩側からの支援である。

 

部下・後輩を効果的に育成する手法に、複数で教える「ネットワーク型OJT」がある。新人育成がうまくいっている職場では、他者による「1対N型のOJT」が行われている。職場の多様な人々から3種類の支援を提供することが若手社員の能力向上に寄与する。

  1. 内省支援:客観的な意見や振り返る機械の提供といった本人が自己を省みる手助け
  2. 業務支援:仕事の相談に乗る、必要な情報を提供するといった仕事の手助け
  3. 精神支援:精神的な安らぎや心の支えといった安心感を与えるような手助け