人類はふたたび月を目指す

発刊
2020年12月15日
ページ数
224ページ
読了目安
247分
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月についての最新事情
人類が月に着陸したアポロ計画以後、50年あまりを経て、再び世界中で月探査の動きが活発になっている。これまでの月探査の歴史を振り返りながら、現在判明している月のことや残された謎や仮説を紹介している一冊。

50年以上前に途絶えた月探査

米国のアポロ計画による人類の月着陸探査は1969〜1972年までのわずか3年だった。その後しばらく月の探査は途絶えた。なぜなら、月は人類がそこに活動の場を求めるには、あまりに厳しい環境だからである。

月面は、灼熱の日中と極寒の夜が2週間ずつ交互に訪れる。月の赤道域では、昼は摂氏120度、夜は摂氏−170度にもなる。この温度差の繰り返しは、人にも機器にも厳しい。月面では、宇宙服や機器は地面に接しており、「熱伝導」によって熱がそこから出入りする。「放射」という形でしか熱の出入りがない宇宙空間とは状況が異なる。さらに、月面は宇宙空間とは異なり、隕石衝突や飛散物の危険性を十分に考慮しないといけない。

 

1970年代後半から1990年代まで、月探査が長きにわたって途絶えたことは、この時代に無人での太陽系探査が花開いたこととも無関係ではないだろう。米国とソ連は月を越えて、様々な惑星へと向かうようになった。

 

世界はなぜ今、再び月を目指しているのか

1994年、米国の探査機「クレメンタイン」が打ち上げられ、月の裏側を含む全域を観測して、これまで情報が不足していた中緯度や高緯度、極域の観測に成功した。クレメンタインは、月の南極の夏でさえ日が当たらない永久影の場所を撮影した。月の極の永久影に水氷があるらしい。もし月に水があれば、飲み水や燃料として利用できるかもしれない。地球から宇宙に持っていく水は、打ち上げコストから計算すると金より高くなる。もし月の極の永久影に水氷が堆積していて利用できるならば、一気に宇宙開発が進むと思われた。

 

20世紀の終わりから、月の水探しが月探査で重要な柱になった。現在、月の探査については、有人探査を見据えて世界的に活発になっている。ただ残念なことに、月の極の水氷の存在・濃集については、確実なことはまだ何も言えない状況である。「1〜2%もの水の存在にさえ懐疑的にならざるを得ない」という不確実さである。1〜2%というのは、砂漠の中の水の含有量と同じくらい。月の極にある永久影の中の数%に及ぶような水氷の存在については、多くの専門家が懐疑的な念を抱いている。

 

ただし、水が月からは失われていないという考えは、その可能性が高まっている。月の隕石の中に、水がなければできない鉱物「モガナイト」が発見され、赤外線による観測でも、月のあらゆる場所に水の存在を示す兆候が認められている。もし、月面の至る所にある水のもとが、火山活動によって内部から出てきた溶岩に含まれているものだとすれば、より大量に水を含有している所があるかもしれない。その場所の1つが月の地下に存在すると考えられる「溶岩チューブ」である。

 

溶岩チューブとは、火山活動によって地下にできる空洞のこと。穴から風が吹き出てきたり、チューブの中に氷があったりするので、「風穴」や「氷穴」と言われることもある。そんな溶岩チューブが実際に月にあることを強く期待させるものが今世紀になって、日本の月周回衛星「セレーネ」によって発見された。「縦孔」である。これこそ、地下空洞の上に開いた「天窓」であるに違いない。地下に空洞が存在していて、その天井を隕石が貫通して縦孔が作られたと考えられる。

月に溶岩チューブが本当に存在すれば、基地として利用できる可能性がある。人や機器を放射線や隕石衝突から守ってくれ、温度も安定していると考えられる。

参考文献・紹介書籍