よい謝罪 仕事の危機を乗り切るための謝る技術

発刊
2016年11月3日
ページ数
200ページ
読了目安
243分
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推薦者

有事に対応するための謝罪マニュアル
35年にわたって吉本興業の謝罪会見を取り仕切ってきた著者が、企業が謝罪をするにあたっての段取りからポイントをまとめた一冊。

平時から謝罪のシナリオを事前に考えておく

謝罪する回数をでき得る限り減らし、たとえ謝罪しなくてはならない事態が起きても、事を荒立てずに収める方法は、平時に緊急事態を想定し、対処する手順をあらかじめ「シナリオとして書いておく」ことだ。そうしておけば、いざ緊急事態が起きたとしても、慌ててパニックを起こして謝罪に失敗してしまい、さらに相手を怒らせてしまう状況にはならない。

その際、加害者が決して忘れてはならないのは、「被害者の気持ちを最優先する」ということだ。これを明確に意識していないと、なかなかうまくできない。ついつい「他人事」のように対応してしまいがちになる。相手の気持ちを知り、「自分事」としてリアルに感じる力が必要である。それさえあれば、起こってしまった事態を真摯に受け止め、誠意を持って対処することができる。この気持ちがあって初めて「よいシナリオ」が書ける。

被害者の怒りの収め方を探る

加害者はもちろんだが、被害者も「落とし所」を探している。何を持って加害者を許すのか、どうすれば自らの怒りが収まるのか、被害者の側でも有事が起きた直後にははっきりわかっていないことも多い。だから、加害者と被害者がある意味「協力して」うまくコミュニケーションを取ることを目指すのだ。頭の下げ方や賠償額以上に、ここが重要である。

謝罪とは、被害者の抱えている怒りを加害者がしっかりと受け止め、誠意といたわりの気持ちを持って事実関係や原因、反省の気持ちを伝えることで、被害者に心を落ち着かせてもらうことだ。弁償や賠償などが必要になることもあるが、それらは「処置」であって、謝罪の本筋ではない。謝罪とはあくまで「心の問題」なのである。

謝罪しなければならないような事態が起きてしまったら、腹をくくって真摯に対処するに限る。逃げれば逃げるほど追われるものだ。というのは、加害者の「逃げ腰な姿勢」は、被害者の怒りを増幅してしまうものだからだ。弁解、言い訳、正当化、無視、軽視、無責任、反省なし、他人のせい、加害者のこういった姿勢は、被害者に容易に見透かされてしまい、ただでさえマイナスに振れている被害者の心の動きは、さらに悪化してしまう。

被害者の気持ちを「自分事」として捉える時には、「自分が被害者と同じ状況になった場合、どこまでどんな謝罪をされれば、加害者を許してもいいと思えるか」を考えること。被害者の「許し方」を探っていくことも重要である。被害者の「怒りの収め方」を考えれば、被害者がどう謝って欲しいのかが見えてくる。

謝罪を成功に導く6つのステップ

「よい謝罪」とは、被害者にできるだけ短期間で「怒り」を「理解」に変換してもらうことに成功し、その後何度も謝罪し続けることなく、賠償などの処置を粛々と行える状態に持っていき、信頼を少しでも回復することである。謝罪を成功に導くプロセスは、次の6つのステップで考えると整理できる。

①命や身体にかかわることがないかを確認
②経緯・事態を時系列で整理して完全に把握
③「謝罪シナリオ」を書く
④原因を究明し、再発防止策をまとめる
⑤直接の被害者に、直接謝罪に行く
⑥必要であれば、対外的に発表する

このステップの順番は非常に大切である。いきなり「直接の被害者に、直接謝罪に行く」に取り掛かろうとすると、準備不足がたたり、謝る相手や内容を誤って、目にも当てられない事態が起こる可能性が高まる。また、この作業は1人でやってはいけない。正確を期すために、スピードアップするためにも、必ず複数で行う。さらに「スピード感」が重要である。のんびりと進行していては命取りになる。