組織サバイバルの教科書 韓非子

発刊
2016年8月18日
ページ数
344ページ
読了目安
396分
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成果を出すための組織はどのように作ればいいのか
成果を出す組織はどのように作ればいいのかをテーマとする中国古典『韓非子』を解説している一冊。2000年以上も前に書かれた現代にも通ずるマネジメントの方法論が紹介されています。

『論語』と『韓非子』

「うまく機能する組織とはどのようなものか」という難問に対して、全く正反対の立場から解答を出そうとした2つの中国古典が『論語』と『韓非子』だ。共に中国の紀元前、戦乱が真っ盛りだった春秋戦国時代に著された。両者の考え方は対極に分かれる。

①人のあり方
論 語:人間、志が重要だ
韓非子:しょせん人間は利益に目がくらむ

②政治において重視するもの
論 語:上下の信用
韓非子:信用など当てにしていたら裏切られる

③上下関係
論 語:上司と部下は敬意を持った関係であるべき
韓非子:足を引っ張りあっているのが常態だ

④法やルールに対する態度
論 語:法やルールに頼るのはマズイ
韓非子:法やルールこそ統治の基本

『論語』
ひとまず人を信用してかからないと、よき組織など作れるはずがない。

『韓非子』
人は信用できないから、人を裏切らせない仕組みを作らないと、機能する組織など作れない

孔子の理想とした組織

孔子は、成果の上がる理想的な組織として「よき家族」を雛形とした組織を描いた。上下、同僚間を問わずお互いがお互いを信頼し、自分の得意とするところで力を発揮。さらに助け合い、育み合い、活かし合うような組織。このような組織を生み出すための胆を「上に立つ人間の品性・品格」に見ていた。皆から憧れられ、手本とされる人間が組織の上に立つならば、下は皆そのリーダーを慕い、信頼し、整然と組織を回すようになるだろうと考えた。しかし、孔子の理想とした「徳治」には問題もあった。

①徳の高い人物はそうそういない。たとえ今はいたとしても、後々続かなくなる
②徳を持った人物自体、変節してしまうことがある
③徳と信頼でしか上下が結びついていないので、現場の暴走を止める術がない
④自分を育ててくれた先輩や上司の悪や問題点を、咎めたり是正したりできなくなる

こうした問題への解決策として登場するのが、韓非に代表される法家の思想だった。

韓非の理想とした組織

韓非は「人は信頼できない」という前提をもとに機能する組織を作ろうとした。そして「人は利害で動く」というのが、韓非の基本的な前提であった。さらに韓非は、人を動かす際には、名誉が物質的な利益以上の誘因になるとも考えていた。

つまり君主たるもの、人が本能をむき出しにしがちな「恩賞」「厳罰」「名誉」という三要素によって共通の価値観というレールを敷き、組織をうまく1つにまとめていけといった。この制度の有り様を決めるものを「法」と呼ぶ。韓非は、皆が平和に暮らす理想的な国を作ろうとしていたわけではない。戦乱が進む状況の中で、内部から自壊しそうな組織を立て直し、生き残れる国を作りたかったのだ。

アメとムチによる統治

人為的な要素が排除できず、理想的な統治の実現が難しかった古代において、「法」を浸透させ、定着させるには何が必要だったか。韓非は「権力」の力を借りて国や組織に法を浸透させ、信頼できない家臣や人々を1つにまとめることを目指した。アメとムチの組み合わせを存分に活用することで、下を意のままに動かすのが権力の形である。韓非も「利」と「害」との組み合わせを考えたが、一番の柱としたのが、アメを賞、ムチを殺戮とする組み合わせであった。

家臣を操る術

権力というのは、必然的にその源泉の奪い合い、権力闘争を生まざるをえない。この副作用を制するために考案されたのが「術」であった。周囲や下から見ると「何を考えているのかわからない人」になれば、つけ入られることはない。相手には手がかりを与えないでおいて、自分の方は相手をしっかり観察し評価する。そして、否応なくアメとムチを与えるのが基本中の基本になる。