その仕事、全部やめてみよう 1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」

発刊
2020年7月30日
ページ数
224ページ
読了目安
241分
推薦ポイント 6P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

ビジネスにおける本質的な価値の生み出し方
ITベンチャー企業と老舗大企業の経営と文化の違いを経験した著者が、あらゆるビジネスに共通する「本質的な価値」を生み出すために必要な考え方を紹介している一冊。
顧客価値の作り方やダメなアイデアに陥らないための方法、生き残れるキャリアの描き方などが書かれています。

「谷」を埋めるな、「山」を作れ

「欠点が何1つない」製品など存在しない。欠点や弱点、不足している点を「谷」と呼んでいる。人は欠点を補うことばかり考えてしまう。しかし考えるべきは製品の長所であり、ユニークな価値「山」だ。「山」ではなく「谷」ばかりに気をとられてしまうのは、次の3つの理由がある。

 

①社内の賛同を得やすい

他社製品と比べて、自社製品に足りない点があるのは誰から見ても否定しようがない。だから「谷」を埋めるプランは社内の賛同を得やすい。一方で「山」を作るプランは、実際にやってみないとどうなるかわからないので保守的な人から反対されやすい。

 

②考えなくてすむ

「谷」を埋めるプランを考えるのは簡単だ。他社製品の特長を調べ、自社製品に足りないところを一覧にしていくだけでいい。一方で「山」を作る場合、確証の得られない状態で進めていかなければならない。

 

③長所よりも短所の方が気になりやすい

人間は何かが突出していることより「何かが不足していること」の方が気になりやすい。

 

しかし本当に重要なのは顧客視点で考えること。どれだけ「谷」を埋めても、「山」がなければ、その製品の特徴は見えない。「谷」を埋め続けても、できあがるのは無個性な製品ばかり。「既存の価値」に追従しているだけだからだ。

最初にやらなければならないのは「山」を明確にすること。「山」がはっきりしていないのに「谷」を埋めることばかり考えるのは、楽だが無駄な仕事だ。「山」を見極めるには次の3つの要素がヒントになる。

 

①まだ誰もやっていない

②他業種や他国の成功例のエッセンスを取り入れる

③ギャップに目をつける

 

大切なのは、どんな状況下でも「谷」に惑わされず、自分たちの「山」が何なのかを見極めること。この「1%の本質」に焦点を当てることが、世の中に新しい喜びや驚きを届ける唯一の道だ。

 

ダメなアイデアを回避する

多くのITやサービスは「こんなことができたら面白いんじゃないか」という子供のような遊び心から誕生している。「こんなものがあったら」と新しいハンマーを生み出していく無邪気さは、この世界のダイナミズムを語る上では欠かせない重要な要素だ。

一方、あまりにも頻繁に新しいハンマーが生み出されるので、ハンマーで釘を打ちたい衝動に負けてしまうことがある。すると、課題解決に適していない技術をつい使ってしまう。いかに遊び心を殺さずに、この危険性を回避するためには、次の3つの落とし穴を確認すべきだ。

 

①その技術が課題解決にどう役立つのか

②他のやり方では実現できないことか

③その技術を使ったことがあるか

 

良いアイデアとは、誰かの役に立つものだ。喜ぶ人の顔が見えてこないアイデアは、すべてダメだ。誰に役立つかわからないアイデアが出てきてしまいがちなパターンは次の通り。

 

①プレッシャーを受けて無理やり考える時

②役職者の思いつきを取り入れる時

③変に差別化しようとする時

④流行に安易に寄せる時

⑤「この機能が追加されれば大型案件がとれる」という時

 

この5つの罠に陥らないようにするには「これができたら必ず喜んでくれる人がいる」という明確なイメージを描けるかどうかに尽きる。

 

To Stopリストを今すぐ作る

仕事の生産性は足し算ではなく引き算で決まる。「何をやるか」より「何をやらないか」を明確にすべきだ。日々のタスクを少しでも減らすことが、時間なりコストなり、何かを新しく始めるための余力を生み出す。

「やるべきと思われているが、実は不要な仕事」を入れた「To Stopリスト」を作成すること。

 

・リストを作るタイミング

  1. 何かを新しく始める時
  2. 忙しすぎて業務がまわらなくなってきている時
  3. 非効率な仕事が増えてきている時

 

・リストに加えること

  1. 定例会議:特に支障がない会議は大幅に頻度を落とす
  2. 引き継がれた業務:今までのやり方をずっと踏襲してきたものは見直す
  3. 手作業のデータ集計・資料作成業務:自動化できるものは意外に多い
  4. 社内向けに提供しているシステムやサービスで利用者の少ないもの
  5. 事故の再発防止策を重ねた結果、慎重になりすぎている仕事