リーダーには人間力と知力の両方が必要である
自衛隊においては、指揮官のリーダーシップを「統率」という言葉で表現する。「統率」は次の2つの要素からなっている。
①指揮
与えられた任務を基準に、その時の状況に応じた最適の判断を下し、それを部隊に確実に実行させること。この力を身につけるためには、どんな時にも冷静に論理的な判断を下し、それを実行に移せるよう、知的なトレーニングを積み、そのノウハウを習得する必要がある。これはリーダに必要な「知力」と表現できる。
②統御
リーダーとして部下を感化することにより、組織として士気高く、一致団結して任務達成に邁進できるようにすること。これはリーダーが、日頃からの立ち居振る舞いや言葉などを通じて、人間として影響を与えるということなので、ノウハウを学ぶというよりも、人間性そのものを磨いていかなくては、身につけることはできない。これはリーダーの「人間力」と言える。
信頼を得るには「即、実行」
リーダーにとって一番大事なものは「信頼」である。リーダーが、そのチームのメンバーから信頼されなくてはならないことはもちろんだが、横並びの他のリーダーやその上にいる上司たち、組織外のカウンターパート等々、関係するすべての人々から信頼されることこそ、リーダーがリーダーとしてその役割を果たすために、一番大事なものである。
信頼を勝ち取るためには、「即、実行!」が大事である。結果が百点満点でなくても、言われたことにすぐに反応する者は信頼されるが、いつまで経っても何の反応もない者は、頼りにされなくなっていく。すぐに反応するということは「その相手のことを大切に考えていますよ」というメッセージである。反応があれば誠意を感じ、反応がなければ不信感が募る。
そして、リーダーにとっては、チームのメンバーに言われたことを、すぐにやることが大事である。メンバーから何か提案があった時、それをすぐに取り上げて実行するリーダーをメンバーは信頼するようになる。
「想い」を持って、メンバーを輝かせよ
組織を率いる以上、その組織の目的を実現することこそが、リーダーの役割である。従って、その目的実現に向けて、何らかの「想い」を持っていることが、リーダであることの必要条件だと言える。「想い」を明確にするには、自分が率いるグループが目的を達成するために、自分は何をすべきか、それを考え抜くことが糸口となる。
組織が強くなるためには、1人1人がやり甲斐を感じながら生き生きしていなくてはならない。そのためには、リーダー自身が「想い」を持って生き生きと輝くことが大前提となる。
組織というものは人によって構成されているがゆえに、それ自体が全体として生き物のような面がある。ある時には、皆が充実感に満ち溢れ「やる気満々」だと思えば、数日後には、全体が重苦しい空気に包まれ、消極的な守りモードに入ってしまうこともある。リーダーの役割の大きな1つは、これをうまくコントロールしていくことである。この時重要になるのが、リーダーの「想い」である。リーダーが日頃何を考えているかは、知らず知らずのうちにメンバーの心の中に染み込んでいる。特にムードが落ち込んだ時、日頃から染み込んだこの「想い」に火をつけることで、グループ全体のやる気が徐々に回復していく起爆剤となる。
よく聞いて、感謝し、決断せよ
リーダーとして成功した人ほど「他人の意見を聞かなくなる」という罠によく陥る。他人の意見を聞かないリーダーは、メンバーの信頼を失い、チームを壊してしまう。
リーダーたる者、皆の意見に感謝の念を持って耳を傾けた上で、最終的には、それらの意見の良否を判断し、自分の責任で結論を出さなくてはならない。それこそがリーダーの仕事である。