クラウドファンディングとは
2016年に大ヒットした『この世界の片隅に』は、Makuakeでクラウドファンディングを行い、2015年3〜5月、3374人から3912万1920円を集めた。クラウドファンディングを始めた段階では、まだ映画化が決まってもいなかった。
こうしたチャリティーやクリエイターの支援の他にも、個人が世界一周旅行に出るための資金集めや、スポーツチームや選手を支援するためのお金集めなどにも、クラウドファンディングは使われている。
クラウドファンディングでは、お金を出す人のことを「支援者(サポーター)」と呼ぶ。この「支援したい」という気持ちを集めるのが、クラウドファンディングの大きな特長である。新しい取り組みに「チャレンジしたい人」とそのチャレンジを「支援したい人」をマッチングするのが、クラウドファンディングである。
お金と顧客を集める仕組み
クラウドファンディングには「リターン」がある。新製品であれば、その新製品自体がリターンになるし、新店であれば、そこでの食事券や会員権などがリターンになる。新製品も新店舗も、それが完成する前の「試作品」や「出店計画」の段階で、支援者はお金を出している。「こんな新製品をつくりたい」「こんな新店をオープンしたい」という人や企業に対して、「ぜひつくって!」という気持ちでお金を出す点が、単なる「購入」とは違い「支援」なのである。
クラウドファンディングで集められるのは、お金だけではない。それ以上に大事なのが顧客である。しかも、新製品や新店のコアなファンとなってくれるロイヤルカスタマーの数が多ければ多いほど、ヒットも大きくなる。
「こだわり」にお金を出す、新しい生活者のニーズ
こだわりのないものは、大量生産品で最低限の質が担保されている安い商品を買うが、こだわりのあるものに対しては、ストーリーを求めるし、つくり手に一歩でも近づきたい。自分で「これは!」というものを探し出すこと自体が楽しい経験にもなる。新製品がヒットするかどうかにおいて、ストーリーの重要性は間違いなく高まっている。
10年くらい前までは、流行りものにみんなが群がる、一極集中する傾向が強かったが、SNSが台頭したことと、情報メディアが多種多様化したことで、趣味嗜好が急速に多様化している。自分のこだわりのあるものであれば、多少高くてもお金を出すように生活者の意識は変わり、しかも、この変化は急速であり、好みも多種多様である。
大量製品・大量消費の時代が終わり、より小回りの利く少量生産・少量消費の市場が、次の競争の場になっていく。クラウドファンディングは、その経済の大転換を担うことができる仕組みである。
プロジェクトを成功に導く3要素
クラウドファンディングでは、「クリエイティブディレクション」が一番大切である。これは単に写真や動画などの見栄えを良くするということではない。自分たちの製品や店の「特長」をはっきりさせ、その製品や店を魅力的だと思う人たちを「ターゲット」として明確にし、ターゲットが実際に製品や店を使った「体験」をイメージすることが大切である。
「このターゲットが魅力的だと思う特長は何なのか」を考える。定量よりも定性が非常に重要で、魅力をうまく言語化することで、どういった特長がターゲットに対して魅力的に映るかが見えてくる。但し「特長」と「ターゲット」だけでは人は動かない。人は、製品や店にお金を出すのではなく、「体験」にお金を出す。クラウドファンディングにおいても同様で、その製品や店を使うと、どういう「体験」が待っているのかを、イメージできるように言語化することが何より重要である。