作り方から疑う
絵本『えんとつ町のプペル』で、これまでの絵本と大きく変わった点は、作り方を「超分業制」にしたこと。これまで超分業制で作られている絵本は存在いない。1万部売れれば大ベストセラーと言われる絵本市場は、市場が小さく売り上げが見込めない。だから制作費を用意することができず、絵本は1人で作る以外に選択肢がなかった。
そこで、絵本『えんとつ町のプペル』の制作では「資金調達」を最初に行った。「作り方を疑う」という作業から始めると、人が手をつけていない問題が出てきた。つまり、その時点で他との圧倒的な差別化を図ることができた。あとは問題をクリアするだけ。
制作費用は「クラウドファンディング」で集めた。絵本の制作費を集める時と、絵本を知ってもらうための個展を無料開催する時の二度に分けて行った。支援額合計は5650万4552円、支援者数は9550人だった。
クラウドファンディングで勝つには信用が必要
クラウドファンディングは金のなる木ではない。同じような企画でも、100万円集まる人と、1円も集まらない人がいる。クラウドファンディングで勝つには、まずは基礎知識として「お金とは何か?」「クラウドファンディングとは何か?」の2つの問いに対する答えを持っておかなければならない。
「お金」とは信用を数値化したものだ。そして「クラウドファンディング」とは信用をお金化する為の装置だ。同じ企画でも100万円集まる人と1円も集まらない人がいるが、両者の差は、企画者の信用度の差に他ならない。
クラウドファンディングで勝つ為にやらなければならないことは、信用を勝ち取ることだ。
信用を勝ち取るには嘘をつかないこと
タレントとして信用を勝ち取る為に、まずは「嘘をつかない」ということを徹底した。仕事だからといって、マズイ飯を「美味い」とは言わない。「嘘をつかない」ということは「自分の意思を明確に表明する」ということと同義だ。
そのためには、自分の意思を明確に表明できる環境を作っておく必要がある。ことテレビに関して言えば、テレビ以外の収入が安定していないと、なかなかテレビには意見しづらい。オンラインサロンという環境は、自分の意思を表明することができて、自分の意思を表明すれば、オンラインサロンの会員が増え、さらに意思を表明しやすくなる。スポンサーからお金を頂く広告ビジネスを放棄し、このループに入ると、嘘をつくメリットがなくなった。
フリーミアム戦略をうまく使うこと
これだけ情報に溢れた時代には、「良い作品を作れば勝手に売れる」という幻想は今すぐ捨てた方がいい。そして、インターネットを使って、上手に広告をうちたいのなら、インターネットの特性を把握しておく必要がある。インターネットは物理的制約を破壊し、ありとあらゆるものを無料化した。そのため、それに合わせて売り方も変化させる必要がある。
価値がないモノを無料で提供しても、お金は発生しない。価値があるモノを無料公開しているから、ファンが生まれ、巡り巡って、お金が落ちる。データは1個提供しようが、10億個提供しようが、基本的には1個分のコストしかかからない。
本屋さんで2000円で売っている『えんとつ町のプペル』をインターネット上で無料公開してみた。絵本の場合、「データとしての絵本」の価値と本屋で売られている「物質としての絵本」の価値は別の場所にある。紙の絵本には「読み物」としての機能の他に、「読み聞かせ」という「親と子のコミュニケーションツール」としての機能がある。この部分に料金が発生している。「紙の絵本を買いたい」となってもらうには、まずは内容を知ってもらわねばならないので、Web上で無料にした。秋元 康