スタンフォード式人生を変える運動の科学

発刊
2020年5月9日
ページ数
312ページ
読了目安
426分
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運動をすることで幸せになる
最新の研究をもとに、運動と幸福の関係を紹介している一冊。運動をすると人は幸福になれるというメカニズムを説明しながら、運動の利点を説いています。

運動は幸福感をもたらす

世界的に見ても、体をよく動かす人たちの方が、幸福感や人生に対する満足度が高い。また定期的に運動している人たちは、目的意識が強く、日常生活において感謝や愛情や希望を実感することが多い。仲間との深いつながりを感じるため、孤独や気分の落ち込みを感じにくいこともわかっている。このような効果は、年齢や社会経済的な地位や、文化の違いに関わらず、共通して見られる。

 

運動がもたらす心理的な効果は「幸福ホルモン」と呼ばれるエンドルフィンによる高揚感だけではない。運動によって、他にも多くの脳内化学物質が活性化するため、エネルギーが湧き、不安が和らぎ、人との絆が深まるなど、様々な効果が得られる。脳の炎症を抑える効果もあるため、長期的にはうつ病や不安症や孤独を防ぐことにもつながる。

 

持続的な運動は高揚感をもたらす

最新の理論によれば、人間が運動によって多幸感を得られるのは、人類の祖先たちの狩猟採集生活に関係しているという。脳内化学物質の作用によって走ることに喜びを感じる状態は、原始人たちが狩猟や採集に励むための報酬として役立っていた。私たちがランナーズハイと呼んでいるものは、祖先たちが協力し、狩の獲物を分け合うのに役立っていたようだ。

 

ランナーズハイはエンドルフィンの作用によるものと推測され、高強度運動はエンドルフィンの分泌を引き起こすことが研究でも明らかになっているが、さらに内因性カンナビノイドというもう1つの脳内化学物質の関連性も指摘されている。これには、大麻やマリファナのように苦痛を緩和し、気分を向上させる作用がある。研究では、30分間のウォーキングや全速力で走った場合には効果がないが、ジョギングは内因性カンナビノイドの分泌を促すことがわかった。

ランナーズハイを引き起こすカギは、走る行為そのものではなく、中強度の運動を継続することにある。継続した動きによって心拍数が上昇する運動なら、どんな運動であれ、高揚感を得られる。

 

内因性カンナビノイドの血中濃度が高くなると、人と一緒にいることが楽しくなるだけでなく、交流の妨げとなる社交不安が緩和される。そして、内因性カンナビノイドの作用が阻害されると、ランナーズハイを経験できなくなるのと同じように、人と交流する意欲や能力が削がれてしまう。

 

運動は他人同士のつながりを生む

脳が産出する鎮痛剤とも言うべきエンドルフィンは、高揚感と共に他人同士のつながりを生む。エンドルフィンの分泌は激しい運動に関連していると思いがちだが、座ったままできるジェスチャーのなどの穏やかな動きを合わせるだけでも、痛みへの耐性が高まり、他人同士のつながりを生む。

集団的な喜びがもたらす効果には、高揚感や恍惚とするような調和や親しみの他に、協力という副次効果もある。みんなで動きを合わせることで信頼感が高まり、仲間同士の分かち合いや助け合いが促進される。

私たちは一緒に体を動かす時、人間の基本的かつ原始的な本能によって強い結びつきを感じ、共に動く仲間のために進んで協力しようとする。