経営に「手法」が効くのは1% 美容室14店舗のオーナーの「生きた経営」講義録

発刊
2018年7月31日
ページ数
158ページ
読了目安
162分
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美容室経営の極意
スタッフ100名以上を抱える美容室『I'm』の代表が、美容室経営にとって大切なことを語っている一冊。経営者の在り方、人材の育て方などが紹介されています。

いかにしてスタッフを100人にするか

アイムでは当時、他社が取り組んでいなかった、次の点に力を注いでいった。

①内装費に費用をかける
お客様が一目で「カワイイ」「素敵」と思えるような空間演出にこだわって、当時の一般的な店の2倍超の費用を投じた。これを単に内装費と捉えればそれまでだが、お客様の反応やクチコミでの広がりを見れば広告宣伝費と捉えられる。そうした思考の転換が大事である。

②一ブランドで宣伝を効率化する
当時は各店舗での広告や宣伝を打つのが一般的だったが、それを1つのブランドで捉えて展開した。そうすれば、当時主流だった新聞広告やチラシ、リーフレットなどを各店共通で大量印刷し、コストを効率化できる。

③一パッケージで店のシステムとサービスの質を高める
ブランド、席の配置、提供するサービスメニュー、営業するシステムなど、すべてが成功したものであれば、それをパッケージにして同じように他店で展開していった。これは、他店のスタッフが応援で移動しても、違和感なく営業でき、効率的なスタッフ配置につながった。

スタッフ100人を達成する方法

美容室は人件費こそ利益を左右するファクターだから、客数に合わせてスタッフを効率的に配置することが重要だ。多くの場合、店は集客のために立地戦略を立てていくが、どうしたらスタッフが集まるのかを考えた。

アイムは京滋エリアにおいて、スタッフが通いやすい、駅から5分以内の立地にある。一時は、沿線の各駅への出店、さらには同じ駅の周辺で半径200mの間に3軒があるということもあった。そんな便利のいい場所にある物件は家賃が高く、保証料も高い。だから余計にお金も借りなければならず、銀行もいい顔をしなかった。だが、それでアイムは着実にスタッフの数を増やすことに成功した。さらに、スタッフが増えるとお客様も増える。立地としても集客に良い効果が出て、売上も大きく伸ばすことができた。

遠くに石を投げろ

会社を経営していく者は、会社の未来を自分で決めなければならない。未来を志向していかなければ、経営者自身も、会社もいずれは堕落していく。

『遠くに石を投げろ』

遠くとは、時間軸を距離に例えた表現で、遠い先の未来を指す。そして石とは、夢や目標だ。石は大きければ大きいほど、重さも増えて、遠くへ投げるのが大変になる。でも、少しでも遠くへ、大きな石を投げられた分だけ達成感は増すものだ。遠くに石を投げるとは、遠い先の未来に夢・目標を打ち立てることだ。

道具を使わずに、できる限り遠くに石を投げる。その瞬間は、「自分が非力だ」とか「遠くへ投げられる根拠がないから」といった想いなど関係なく、誰もがただ力一杯投げる。現状がどうだ、根拠がどうだということは関係ない。遠くに石を投げると決める。そこからすべてが始まる。

夢や目標を口にする時に、必要なのは現状分析や根拠ではない。「必ず夢・目標を成し遂げてみせる」との決心と、「どんな苦難があろうとも、受け止めて乗り越える」との覚悟だ。

経営で「手法」が効くのは1%

目標の実現に向けてどうしていくか。ここで間違えてはならないのが、手法に気を取られ、そればかり追ってしまうことだ。手法は、短期的には効き目があるかもしれない。しかし、長い目でみたら、手法が効くのは1%か、それにも満たない。経営者として在るべき姿で真正面から取り組む、そして経営に専念するべきだ。会社を経営するのは、片手間ではできない。

ところが、美容業界は、ハサミを握ったままのプレイング・マネージャーが圧倒的に多い。なぜなら、自分が店を持つ前は美容師だからだ。美容室の9割が5年以内に潰れると言われるのは、経営という視点が欠けているからだ。経営者になったからには、経営者の感覚を身につけるよう努力する必要がある。