観光”未”立国 ~ニッポンの現状~

発刊
2025年3月1日
ページ数
216ページ
読了目安
206分
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課題山積みの日本の観光業界の現状
インバウンドにより、観光業界は伸びているが、一部を除いて十分に収益化できていない。特に地方においては顕著な観光業界の課題を紹介しながら、その処方箋が提示されています。

ウェブサイト、SNSの運営すら乏しく、旅行者向けの価格設定も全く考えられていないというのが観光業界の現状であり、インバウンドの波の乗れている観光事業者とそうでない事業者との差も広がっている。インバウンドに対応して観光業界が発展していくためには何が必要なのかが、様々な事例とともに解説されています。

日本の観光業界はまだ稼げていない

「「空前の日本ブーム」が起きているのに、日本の観光業界は、首都圏ほか一部の地域を除くと収益化できていない現実がある。その土地の文化を理解できる体験価値の高いコンテンツを提供し、多様化するニーズにきめ細かく応える仕組みを整え、観光業の従事者にきちんとお金が落ちる「健全な観光経済圏」を成立させることが必要である。

 

本来、「この土地でどんな観光消費をしてもらいたいのか」といったことを考えるべきなのに、足元を見ずに間違った施策を打って、人が来る前に価値のある観光資源をダメにしてしまったり、オーバーツーリズムを制御できずに、地域の住民に負荷をかけてしまう事例が全国各地で起きている。

 

情報発信ができていない

近年、インバウンドはFIT(ツアーに参加するのではなく、飛行機などの移動手段や宿泊などを個人で手配する旅行者)が旅のスタイルとして8割を占める。外国人観光客は、好きな時間に、好きな場所で、好きな体験をするためにスマホであらゆる検索をしてくる。この人たちにお金を落としてもらうには、旅行前に観光情報を知ってもらい、事前に予約できる仕組みを整えなければならない。しかし、日本の観光産業は自治体、ホテル、交通網、飲食店に至るまで、観光コンテンツの「情報発信」が行き届くには、まだまだ程遠い。

 

  1. デジタル上の情報が整備されていない
  2. いまだにSNSの活用ができていない
  3. GoogleマップやOTA(旅行サイト)での見え方に気を配れていない
  4. 「何が観光資源として魅力的か」がわかっていない

 

マネタイズができていない

日本の観光業は「観光客を呼んでから」の設計にも課題が残る。「お金を落とす場所」がなかったり、提供する体験価値と値付けにミスマッチが起きていたり、収益化がきちんとできていない。

 

  1. 相場がわからず適切な根付けができない
  2. 文化財の入館料・拝観料が安すぎる
  3. 花火大会や祭りは赤字が当たり前になっている
  4. お土産のデザインが購買意欲を掻き立てない

 

担い手不足

観光業がこれから伸びていくことはあらゆる統計が物語っている。しかし、観光地から見た時にそれを「受け入れる体制」が整備されているとは言い難いのが現状である。宿泊事業者の従業員不足にとどまらず、観光コンテンツの作り手、売り手、現地での受け手まで、すべてにおいて人材が不足している。担い手不足によって、著しい機会損失が常態化しており、「稼ぐ機会」も「稼ぐ力」もモノにすることができていない。この問題は、特に地方において深刻である。

 

  1. 観光業界で働く人たちの給与、報酬が安すぎる
  2. ランドオペレーター(現地の手配予約)機能がどこも欠如している
  3. タクシーやバスなどの二次交通がない地方では移動手段がなく観光客が行かない
  4. 課題解決につながるディレクターがいない

 

観光産業の当事者が取り入れるべき処方箋

①伝える力の向上

国も言語も違う方々に存在を知ってもらうためには、PRに重点を置かなければならない。イベントや新規事業を発表する際、メディアへのプレスリリースは不可欠。特異性や希少性を明記し、取材を呼び込むこと。そして、公式サイトのスマホ検索対応、SNS対策、Googleマップ対応を行い、定期的な運用を行うことが重要である。

 

②マネタイズを恐れない

観光振興を目指すならば「観光でお金儲けすべきではない」という呪縛から脱却し、マネタイズを意識しなければならない。価格を地域外からの訪問者と地域住民とで分けることを検討すること。こうした価格の差別化は、アクティビティや伝統工芸体験のワークショップ、祭りなどで特に効果を発揮する。

 

③遊休時間の有効利用

ホテルが旅行業の資格を取得すれば、宿泊客の送迎が可能になり、食事後の夜間や早朝に現有のリソースから逸脱しない観光体験を提供できる。これだけで地方に訪れる観光客に新たな地域の価値体験を生み出すことができ、アイドルタイムの活用が新たなビジネスチャンスになる。

 

④空き家・空き地を活用せよ

用途の乏しい空き家でも、使い方次第で多様なイベントの受け皿になり、それが観光振興の起爆剤になりうる。日本各地には、空き倉庫などの遊休施設が散財するが、企画やリノベーション次第で人気の誘客施設へと昇華することができる。

 

⑤デザインを重視せよ

インバウンド客は、InstagramなどSNSを事前に見て、興味を持ってやってくる。であれば、魅力的な写真やショート動画で視覚の訴求力にこだわらなければならない。パッケージのデザインから空間演出、イベントまで、デザインに注力することで商品力は格段に上がる。

 

⑥体験価値を追求せよ

インバウンド観光客を取り込むには、体験価値にこだわり、高付加価値を感じさせるプログラムを提供しなければならない。高付加価値にするには、ただ高額にするのではなく、「これは本物だ」と観光客が体感できる仕組みをつくることが重要である。