人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則

発刊
2018年10月18日
ページ数
240ページ
読了目安
304分
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成功企業は人事をどのようにしているのか
リクルート、ライフネット生命、オープンハウスで、人事・採用責任者を歴任してきた著者が、成功企業に共通する組織運営のノウハウを紹介している一冊。

企業のタイプに応じて、人事の一貫性を決める

人事の機能は一般的に「採用」「育成」「配置」「評価」「報酬」「代謝」の6つに分けられる。これらの6つの機能を担う上で重要になるのが「人事の一貫性」である。人事に一貫性がないと、各機能がバラバラに最適化してしまい、全体として効果を打ち消し合って、パフォーマンスが上がらない。

一貫性の「軸」は、事業戦略が最も遂行できるように置く。軸を決める上で考慮すべきポイントは、次の2つのタイプに分けることができる。

①安定・成熟事業型
勝ちパターンが決まっており、会社の様々な方針を大きく変える必要はない。むしろ今のやり方をより早く、安く、効率的に実施するための改善型の行動が求められる。長期で人を雇用して自社内で育成するのが合理的。

②変革・新規事業型
勝ちパターンが見えない中で事業をしている。業務のスタイルで求められるのは、ゼロベースでモノを考えて抜本的な方針転換も考慮する改革型の行動である。組織運営も協調性を重視し過ぎて個々人の個性を殺すのはNG。自律的で自由なマネジメントスタイルが適している。

目標とする人材ポートフォリオとフローを設定する

人事担当者は通常、会社の状況やステージ、企業風土や事業モデルなどに応じて、必要な人材を検討し、「人材ポートフォリオ(組織に必要となる人のタイプ・レベルとその構成比)」を決める。ポートフォリオの軸は「チーム↔︎個人」「新しい価値創造↔︎既存手法の運用」の2つは普遍性が高い。

①将来の経営陣:新しい価値×チーム
②現場管理職:既存手法×チーム
③経営参謀:新しい価値×個人
④専門家・技術者:既存手法×個人

次に自社内に各セグメントがどのくらい在籍しているかを概算する。現実と理想のギャップを把握した上で、それを埋める施策「人材フロー(組織における人の流れ)」を練る。人材フローの検討にあたっては、次の3つの考え方を決める。

①採用比率:新卒等のポテンシャル採用か即戦力の中途採用か
②外部流動性:「Up or Out」的な高い外部流動性を良しとするか
③内部流動性:同一組織や職種内での異動を行うか、横の異動も行うか

人材ポートフォリオと人材フローの2つを決めて、採用、育成、評価、報酬、配置、代謝の方針をたてる。

組織の成長に応じて、人事の考え方は変わる

組織の成長段階は5つに分けられる。

①背中でマネジメント(6人)
創業者のリーダーシップ、インフォーマル

②行動でマネジメント(36人)
管理職の出現、1から10まで行動レベルでの指示、マニュアル化

③結果でマネジメント(216人)
市場原理による競争、自由と自己責任、インセンティブ、部分最適

④計画でマネジメント(1296人)
官僚制、横断的資源管理、再配分、全体最適

⑤文化でマネジメント(7776人)
トラブルシューティング、例外管理、社員の創造性

理想的な⑤の実現は容易ではない。社員に、成熟度や自律性、高度な知識・スキル、経験などが求められる。一足飛びに無理にやると組織が空中分解する。これら組織の限界人数を理解した上で、人事の方針を変えていく。

採用と代謝をセットで人材の流れを作る

人事の6つの役割の中で、最も重視すべきは採用である。その理由は「人は大人になるほどに変われない」からである。優秀な人材を採用できなければ、配置を工夫したり、育成したり、評価や報酬でモチベートしても多くが徒労に終わる。逆に良い人を採れば、能力を発揮する適切な場を与えるだけで勝手に成果を出す。

組織も人の流れが淀めば濁る。濁った組織では、多くの人が同じ部署に長くいて同じような仕事をしている。どんなに優秀な人でも、長年同じ仕事をすれば、マンネリ化して成長が止まり、創造性が失われ、成果が出ない。よって、採用と代謝をセットで考え、目標とする人材ポートフォリオを実現する必要がある。