AI経済の勝者

発刊
2024年10月23日
ページ数
392ページ
読了目安
569分
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AIの潜在能力を活かすために必要なこと
AIの導入があらゆる産業で始まって10年経つが、未だに経済に対して、AIの潜在能力が十分に活かされているとは言えない。

多くの企業で、AIの活用がピンポイントなソリューションにとどまっており、システム全体の変化につながっていないとし、今後AIを企業活動にインパクトを与えるソリューションとして活用するために必要なマインドセットを説いています。

AIのシステムの未来

今のAIは、予測分析の新しいツールとして応用されている段階で、ごく一握りの企業が、精度の向上した予測の恩恵を受けている。これらの企業は全体の11%を占め、既に金銭的利益を確保しつつある。いずれもかねてより予測を行なっており、AIを導入したおかげでその精度は向上し、予測にかかる時間は短縮し、費用は安くなった。

しかし、今のAIは時代のはざまから抜け出せない。既にAIの可能性は明らかになったが、世界を変容させるほどの影響力を発揮する段階にはまだ達していない。

 

ソリューションの種類は、以下の3つがある。

①ポイントソリューション

既存の手順を改善する。これは自立的に導入され、ソリューションが組み込まれたシステムに変化は引き起こされない。

 

②アプリケーションソリューション

新しい手順への交換が可能になる。これは自立的に導入され、ソリューションが組み込まれたシステムに変化は引き起こされない。

 

③システムソリューション

相互に関連し合う複数の手順に変化が加えられる。その結果、既存の手順が改善される時もあれば、新しい手順が導入される時もある。

 

システムソリューションは通常、ポイントソリューションやアプリケーションよりも実行が難しい。なぜならAIによって意思決定能力が向上すると、システムの他の意思決定にも影響が及ぶからだ。

AIの導入が最も増えるのは、システムに変化が引き起こされた時だろう。こうした変化は破壊的で、業界の内部で大勢の人たちや企業の役割に変化が生じ、パワーシフトが引き起こされる。つまり、経済的な勝者と敗者が生まれる可能性があり、システムの変化が急速だとその傾向はさらに強まる。

 

既存のシステムを変化させるよりも、新しいシステムをゼロから構築する方がやさしい。歴史を振り返っても、システム全体を見直して最適化する必要がある時は、新規参入企業やスタートアップが既存の企業の成果をしばしば上回る。その結果、システムレベルの変化は既存の企業のディスラプションにつながる。

 

システムのマインドセットが重要

現在のAIの潮流が押し寄せて10年になるが、機械が人間の代わりを務めるようになったタスクはほとんど存在しない。チャットボットが顧客サービスで果たす役割は大きくなったし、翻訳で機械が占める割合が増えているのは事実だ。しかし、テクノロジーの導入による失業はまだ深刻ではないし、人間が行う仕事はたくさん残っている。たとえAIが人間のパフォーマンスを上回っても、機械に置き換えるよりは、長所も短所も併せ持つ人間を使う方が安上がりなケースは多い。

今やAIの可能性を分析し、タスクを実行させようとするための努力が大々的に進められているが、そこではシステム全体にわたる変化が無視されている。

 

AIの導入に成功するには、システムのマインドセットが必要とされる。これはタスクのマインドセットとは対照的で、AIの潜在能力にもっと広い視点から注目する。その上で、真の価値を生み出すには、機械の予測と人間のどちらにおいても、意思決定のシステムを見直して再構築する必要があることが、システムのマインドセットでは認識される。これは既に一部で実現しているが、歴史を見る限り、AI予測など新しい汎用テクノロジーを活用してシステム全体の変化を進めやすいのは、既存の企業ではなく、むしろ業界に新規参入した企業の方だ。

 

AIをポイントソリューションに使おうとするのではなく、価値があるのは、組織に変革を起こすためにAIを採用する機会を探すことだ。そのためにはシステム全体を見直した上で、システムの改善をAIがどのように促すのか理解する必要がある。そこにこそ、AIを活用する絶好の機会が存在する。

 

AIがイノベーションを加速させる

AIが経済を変容させる潜在能力が最も高い分野を1つ挙げるとしたら、それは通常のビジネス活動のほとんどよりもはるかに上流に位置する分野、すなわちイノベーションや発明を支えるシステムである。イノベーションシステムでのAIの中心的な役割の1つが、新しい組み合わせがもたらす成果の予測だ。かつては科学理論や試行錯誤に頼っていた場所で、今ではAIの予測を利用して仮説を立てられる時もある。

 

仮説を立てる段階が自動化されれば、イノベーションの生産性は大きく向上する可能性がある。但し、このテクノロジーの恩恵を十分に受けるためには、仮説を立てる段階だけでなく、イノベーションシステム全体の見直しが必要になる。例えば、仮説を立てる時間が短縮されても、プロセスの次の段階である仮説の実験に何の変化もなければ、ほとんど影響はもたらされない。

 

参考文献・紹介書籍