運命をひらく生き方ノート 約三十年、稲盛和夫氏のもとで学んだこと

発刊
2024年9月28日
ページ数
312ページ
読了目安
341分
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推薦者

稲盛和夫の教え
京セラ創業者の稲盛和夫氏の側近として約30年過ごした著者が、稲盛氏の傍らで学んだことを綴った60冊のノートから、その教えをまとめた一冊。

稲盛和夫氏の言葉とともに、その言葉の背景、物語を紹介しながら、その教えの本質的な部分を解説しています。
いかに生きるか、リーダーのあるべき姿、経営の要諦などをテーマに、稲盛哲学のすべてを改めて振り返ることができます。
人生を振り返りながら、改めてどのように生きるべきなのかを考えるきっかけになります。

人生に向かう基本的な姿勢

「人生における不運、挫折が人生を豊かにする。素直に一生懸命生きればいい」「辛酸をなめることが魂を磨く」「神様は苦しんでいる人を助けてくれる」

いずれの言葉も、どんな困難に直面しても前向きに捉えることの大切さを伝えている。稲盛さんは「人間は暗いと失敗する」と断言している。それは、心のあり方次第で人生は良い方にも悪い方にも変わることを確信していたからである。

 

人生ではどんなに真面目に努力を重ねても、思いもよらないことで挫折をしてしまうことがある。しかも、繰り返し不運に見舞われることさえある。そういう厳しい状況に身を置いた時にどういう心構えで向き合うのか。その時の姿勢1つで人生が変わるということを稲盛さんの言葉は教えている。

 

稲盛さん自身、子供の頃から不条理とも思える不運・挫折を繰り返し経験し、それを乗り越えてきた。家は貧しく、旧制中学を浪人するも結核を患い、志望校に進めず。就職にも苦労し、専攻とは異なる会社に就職。そのような経験を踏まえ、苦難に直面した時は「挫折が人生の栄養になるんだ」と受け止めて、常に前向きに、まっすぐ生きることが大切だと教えている。

さらに「どんな厳しい状況に置かれようと、あるべき姿、明るい未来を絶対に目指さなくてはならないと思うようになった。そうすると妬みや嫉みがなくなった」「悪い思いを持つのが恐くなった」という言葉を残している。

これが、稲盛さんの人生に向かう基本的な姿勢である。そのためにはどうすればいいのか。

「今日を精一杯生きてみよう。そうすれば明日が見える。遠大な目標を立てるのも大事だが、それでは、最初から萎えてしまう。それよりも、まず今日を一生懸命生きることが大事。その積み重ねで遠大な目標にも近づける」

 

稲盛さんは「俺の辞書に否定的な言葉はない」と言い、無理やりでもいいので「常に底抜けに明るい未来を描きなさい」と諭している。つまり、平時の時の心の中から暗くネガティブな思いを払拭しておくことで、苦境に陥った時でも前向きでいられると教えている。

 

自分の生き方を律する確固たる哲学を持つ

稲盛さんは、自分の生き方を律する確固たる哲学を持つことの大切さを色々な言葉で表現している。哲学とは、判断基準、考え方、信念、生きる指針と呼んでもいい。

その1つに「哲学のない人生は、錨のない船のようなもの。どこに行くかわからない」という言葉がある。人生であれ、経営であれ、いつもフラフラと「不易流行」の「流行」に乗ろうとしていると、いつも漂流してしまうことになると、稲盛さんは警告している。

 

人生を漂流させないための錨になるような考え方・判断基準・哲学とは、どのようなものか。それは難しいことではなく、自分にとって正しいことではなく、誰から見ても正しいこと、つまり「人間として正しいこと」だと稲盛さんは教えている。

具体的には、子供の頃、親や学校の先生から教えてもらった「やっていいこと、悪いこと」を思い出せばいいという。「嘘をつくな」「正直であれ」「人のために役に立ちなさい」「一生懸命努力しなさい」「弱いものをいじめるな」「欲張るな」という初歩的な道徳律のようなものだと説明している。

稲盛さんは「真理は単純なもの、しかし実行は難しい。でも、実行しないと価値はない」と教えている。真理を実行する時に大事なのが「謙虚さ」である。謙虚さがなくなると誰も協力してくれなくなる。謙虚さがなくなり、少しでも自分が偉いと思ってしまうと判断も甘くなり、結局は失敗してしまう。だから「謙虚さは魔除けだ」と教えられた。

 

平常心が大事

確固たる哲学を持ち、一所懸命努力して1日1日を精一杯生きていても、それでも失敗することがあるのが人生である。その時に「この失敗は神様が与えた試練だから、乗り越えたら、素晴らしい人生が待っている」と前向きに考えることができるかで、人生は大きく変わる。

稲盛さんは、子供の頃の自らの体験に重ねて「人生は心に思ったことが現象として表れる」ことを確信した。さらには、師と仰ぐ京都・円福寺の西片擔雪老師から、因果応報、善因善果、悪因悪果という人生の決まり事を教えてもらった。

そのことから、どんな厳しい環境に置かれても「常に明るく前向きに、夢と希望を抱いて素直な心」が大切であり、「成功して驕らず、失敗して落ち込まず」という姿勢を忘れてはならないと伝える。

 

そのためには「平常心が大事だ」と稲盛さんは言う。どんな逆境に置かれても、成功しても、心が乱れることのない平常心が大事だという。稲盛さんはよく中国古典の『呻吟語』の中にある「深沈厚重なるは、これ第一等の資質」という言葉を引用し、何事にも動じず、物事を深く考えられることが人間として一番大事な資質だと話していた。それは平常心を持つということとほとんど同義語であり、稲盛さんの生き方に近い。

 

参考文献・紹介書籍