新しい「あたりまえ」をつくる
PR(パブリック・リレーションズ)とは、新しい「あたりまえ」を世の中に定着させるため、あらゆるステークホルダーと対話し「合意形成」を目指す活動、及びその考え方と技術のことである。
今、世界は次の3つの波に晒されていて、どの時代よりも新しい「あたりまえ」を必要としている。
- テクノロジーの波
- ダイバーシティの波
- サステナビリティの波
PRは、時に価値観の異なる人や集団との間で共通の利益、つまり「ここは握れますよね?」というところを見つけ、合意形成していく。共通の利益を見つけることで、新しい「あたりまえ」が普及しやすくなる。
PRの原則
PR活動において、合意形成を進める時に要となる原則は次の5つである。
①自分でやらない。第三者を頼る
影響力のある第三者を必ず頼り、世の中と合意形成を作っていく。新しい「あたりまえ」は1人では作れない。社会の様々なプレイヤーが自分ごととして、新しい考えを広め、実行してくれることが大事である。そのために「ここは同じですよね」というポイントを探りながら、なるべく多くの人が納得してもらえるような、新しいアイデアの定着の方法を考え直す。
②複数のステークホルダーを巻き込んでいく
消費者、株主、従業員、学界、業界団体、NPO、地域住民、自治体、所轄官庁、メディアなど、立場の違う人たちが、新しい考え方を共にしたり、共通の目標を持った行動を起こすことで、新しい「あたりまえ」は浸透していく。
③対話をし続ける
新しい「あたりまえ」は、合意が結べたらそれで終わりという類のものではない。社会の環境は絶えず変化している上に、価値観に向き合う人や団体のスタンスにはグラデーションがある。その中で、より積極的に支持してくれる人を増やしていく、反対派の人を容認派に変えていくというメンテナンスをする必要がある。
④社会視点で考える
「市場の中の私の役割」を語るのではなく、「社会の中の私の役割」を語る。「社会視点」で物事を語ることで、商品やブランドが、単なる商品としての優劣ではなく、社会の価値観や、社会現象を牽引する存在として世の中にとらまえられ、その価値が高まる。
⑤ファクトベースで語る
PRにおいては、立場や価値観が異なる様々な思惑を持った人たちと合意形成する必要がある。興味を示していない人や、ネガティブな意見を持っている人たちには感覚的なストーリーは通用しない。ファクトは誰も否定のできないことなので、意見が異なる双方が話を始める共通通貨になる。
新しい「あたりまえ」をつくる方法
新しい「あたりまえ」を世の中に浸透させるための「補助線」には次の7つがある。
①インサイト:隠れた欲望を見つける
日常生活で感じるちょっとした異変や、昨日まで考えられなかった人間の行動に覚える違和感の背後には、新しい「あたりまえ」を渇望するインサイトが潜んでいる可能性がある。
②社会記号:欲望に名前をつける
新しい「あたりまえ」が、まだそれぞれの人々のモヤモヤである時に、「草食男子」「終活」「タイパ」などのような社会記号が誕生するとそれはみんなが目指す北極星になる。
③社会視点:市場の外に出て、社会の視点から見立てる
「人生100年時代」のような、社会の中で浸透しつつある新しい「あたりまえ」の文脈の中で、自分たちのサービスや商品を語れると、そのブランドは社会の追い風を受けることができる。
④ナラティブを生む余白:受け手のクリエイティビティを発動させる
発信者が伝える新しい「あたりまえ」のメッセージが受け手によって解釈されることが重要で、時に受け手によってアイデアが足される状況になることを目指すべきである。そのためには余白が必要であり、まず相手がどう考えるか尊重することが大切である。
⑤ファクトの発見:知られざるファクトを明らかにする
価値観の異なる人たちと、現状を認識し、課題を浮き彫りにし、新しい変革を一歩ずつ進めていくためには、お互いが信じられる共通言語としてのファクトが力を発揮する。
⑥オーセンシティ:問うべき人が問う
なぜ、あなたがそれを言うのか。そういう整合性が取れていないと、どれだけメッセージ、未来をよくする新しい「あたりまえ」を発信していても、誰もそこについてきてくれない。
⑦リスク予想:新しい概念は古い概念と摩擦を起こす
リスク予想は、新しい「あたりまえ」を提示した時、それが生み出す対立をなるべく回避する、和らげるために必ずやるべきである。社会には市場の景色の中にはいない相手がいると常に考えて、その人たちのことを考えてメッセージ発信する。