破壊なき市場創造の時代 これからのイノベーションを実現する

発刊
2024年10月2日
ページ数
296ページ
読了目安
395分
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既存の業界を破壊しない市場創造型のイノベーションを実現する方法
既存の業界や企業を破壊せずに、新しい市場を創造するイノベーションをつくるためのマインドセットと手法を解説している一冊。

既存の業界の課題を画期的なソリューションで、破壊してしまうイノベーションには、経済成長の代償として、様々な社会的コストが伴うとし、非ディスラプションな市場創造のあり方が考察されています。
全く新しい市場を創造した起業家たちの事例をもとに、非ディスラプションな創造を達成した企業や組織の特徴が示されています。

ディスラプションなきイノベーションと成長

ディスラプションだけがイノベーションと成長への道ではない。ディスラプションや代替を伴わない新市場の創造を「非ディスラプティブな創造」とみなす。非ディスラプティブな創造とは、企業の破綻、雇用の喪失、市場の荒廃を引き起こさずに、新たな産業を創出することを意味する。これは、何もなかったところに新たな市場をイノベーションする、計り知れない可能性を秘めている。

 

新規事業を革新するための包括的な道筋は3つある。

 

①ディスラプティブな創造

業界の従来の問題に画期的なソリューションを提供する。新市場が既存業界の内側で創造されて垣根を広げるため、経済成長は新陳代謝の社会的コストを伴う。

 

②ブルー・オーシャン戦略

業界の抱える問題を再定義して、再定義された問題を解決する。新市場は既存の業界の垣根を超えて創造され、創出された需要の一部は真新しく、一部は既存市場から移ってくる。その結果、ディスラプティブな成長と非ディスラプティブな成長の混合形態が生じる。

 

③非ディスラプティブな創造

全く新しい課題を掘り起こして解決するか、従来の業界の垣根を超えて全く新しい事業機会を創造して掴み取る。新市場は既存業界の垣根の外側に創造されるため、経済成長は新陳代謝の社会的コストを伴わない。

 

既存業界の境界の外側で全く新しい問題を特定、解決したり、全く新しい事業機会を掴み取ったりする組織は、非ディスラプティブな創造を実現する。この手法では、既存業界が抱える問題についてブレークスルー的な解を探すのではなく、まずこう問いかける。「既存の業界の垣根を超えて解決できる、全く新しい問題はあるだろうか」「それらの垣根の外側に、解き放つことのできる真新しい事業機会はあるだろうか」。このように焦点をずらすと、既存の業界や企業の利益も中核も蝕まない新規市場を開拓する、これまで見えていなかった機会が視野に入ってくる。これによって生み出される需要が事実上すべて新しいものであり、非ディスラプティブな成長をもたらす。

 

非ディスラプティブな創造に必要な視点

非ディスラプティブな創造を実現する人々は、長らく受け入れられてきた主流の視点や心理状態とは多くの点で異なる、次の3つの視点でリーダーシップを発揮している。

 

①心の中の台本を投げ捨てる

現実世界における限定合理性に囚われない。構造を重視するタイプのリーダーが当然視して受容するあらゆることに、率直に疑問を投げかけ、考え直し、「なぜ◯◯しないのか?」「もし◯◯なら?」と問いかける。

 

②手段と目的を混同しない

テクノロジーを素晴らしいイネーブラーと見なす半面、バリュー・イノベーション(買い手に飛躍的な価値増大をもたらすこと)こそが、最終的に非ディスラプティブな新市場の創造につながるのだと認識している。

 

③少数でなく大勢の力を解き放す

メンバーの多様性など特定の好ましい集団力学があれば、集合知は少数精鋭の知恵を凌ぐ可能性がある。非ディスラプティブな創造を実現するためには、異なる視点やスキルを持つ人々のネットワークが必要である。

 

非ディスラプティブな創造を実現するための3つの基本条件

非ディスラプティブな新市場を創造して掴み取った組織や個人には、次の3つの基本条件が共通している。

 

①非ディスラプティブな機会を特定する

追求したいと思う、全く新しい課題や機会を見つけ出す。非ディスラプティブな市場を創造するには、次の2つの道がある。

  1. 未対応の課題や問題に取り組む
  2. 新たに生じている問題や課題に対応する

2つの道を理解した上で、事業機会を特定するためには、次の3つの方法を活用できる。

  1. 自ら体験する
  2. 共感しながら観察する
  3. 意図的に解決不能に見える問題や機会を掘り起こす

 

②機会を解き放つ方法を見つける

機会を見えにくくしている既存の前提を疑問視し、捉え直すことにより、機会を解き放つ方法の発見へとつなげる。機会を覆い隠す前提を見つけ、そのビジネスへの意味合いをより体系的に導き出すには、「前提-含意分析」というツールを活用し、探り当てた機会に気づいて行動すべきであったにもかかわらずそれをしなかった、業界の暗黙的・明示的な判断を突き止め、解明する。既存業界の前提を「リスク・リターン評価」「対象顧客」「事業範囲」の3つの要素から、その意味合いを理解し、前提を問い直し、機会を解き放つ。

 

③機会を実現する

高価値・低コストの方法で機会を実現するために必要な3つのイネーブラーを確保する。

  1. リソースフルネス:知識、専門性、資源、ケイパビリティなど、創意工夫を活かして、機会実現に必要なものを揃える。
  2. 内部のリソースとケイパビリティ:新しく築いたリソースやケイパビリティと既にあるものを組み合わせる。
  3. shouldではなくcouldのマインドセット:どうあるべきかではなく、どうすれば可能かを問う。