宇宙は想像を絶するほど大きい
現在では、太陽系外惑星の発見だけを目的とする宇宙探査ミッションがすでにいくつも始まっている。NASAによると、今では4000以上の太陽系外惑星が確認され、生物が居住できる可能性がある系外惑星が約60個特定されている。しかも、私たちはまだ地球に最も近い恒星をいくつか調べたたけに過ぎず、天の川銀河だけでも約1000億の恒星が存在する。だとすると、地球と同程度の大きさの惑星でハビタブルゾーンに存在するものは110億から400億個となるだろう。
では、私たちは一体いつそこに行けるのだろうか。この疑問に対して、特定の日付や日付の範囲を含む答えはない。地球から最も近い恒星、プロキシマ・ケンタウリは、約4.2光年離れている。つまり、秒速約30万kmで進む光が4年以上かけてやっと辿り着く距離にある。
1977年に打ち上げられたボイジャー宇宙船は、これまでに最も遠方まで到達した宇宙船だ。ボイジャー1号は、地球と太陽の距離(約1億5000万km)の156倍にあるが、そこまで行くのに44年かかっている。ボイジャーが正しい方向に進んでいたとしたら、プロキシマ・ケンタウリに辿り着くまでに約7万年かかると推定される。
星間旅行の難しさ
これまでの打ち上げ用ロケットは探査機を宇宙に打ち上げて、地球の重力から、そして場合によっては太陽の重力からも逃れられる速度とエネルギーを与えるが、探査機に与えられた推力はやがて停止し、その後の進路において探査機は目的の天体までただ慣性飛行するだけだ。
恒星間の途方もない距離を現実的な長さの時間で移動するには、高速飛行が実現できるような推進システムの開発が鍵になる。そもそも、それほどの高速での飛行自体が大きな問題を孕んでいる。現実的な最小の星間宇宙機は質量が1kgで、o.1c(光速の1/10、秒速3万km)で飛行している時に450兆ジュールの運動エネルギーを持っている。この探査機がある惑星に衝突して爆発した場合、その破壊力は広島に投下された原子爆弾7個分に相当する。これがボイジャー級の宇宙船なら、広島型原爆5000個を優に超える。
0.1cの速度で進む宇宙船は、プロキシマ・ケンタウリに辿り着くまでに43年以上かかる。より大型の人間の乗組員を運ぶことができる宇宙船は、0.1cよりもかなり遅い速度で飛行せざるを得ないので、旅行時間はもっと長くなる。
星間推進技術の候補
スペースシャトル、スペースX社のファルコン9などで使われたのと同じ方式の化学ロケットは、太陽系以外の恒星系に到達するのに必要な速度まで宇宙船を加速するには、全く不十分で、太陽系の外に出るための最初の一歩を踏み出すという目標にも、やっと必要を満たすに過ぎない。化学ロケットは高い推力を達成して重力を断ち切る能力はあるが、最高性能が出ている時でも効率はあまり高くない。それは、ロケットの燃焼室で起こっている、化学結合を作るという過程で引き出せるエネルギーの大きさが限られているからである。
ロケットは地球の表面から宇宙へ行く手段としては最善だが、一旦宇宙へ出てしまった後は、何か別のものが必要になる。より効率的で、エネルギー密度も一段と高く、その先の100万、10億、1兆kmを進ませてくれるものが。
①核融合
核融合を動力源とする宇宙船なら、300年未満の移動時間でケンタウルス座アルファ星まで運ぶことができるかもしれない。
②電磁エネルギー
電気推進ロケットは、化学ロケットや核熱ロケットの10から100倍も効率が高いにもかかわらず、人類を太陽以外の恒星まで連れていくには効率がまだ足りない。
③反物質
理論的には、反物質を利用すれば質量からエネルギーへほぼ100%の変換を起こすことができる。しかし残念ながら、必要な量の反物質をいかにして製造し、貯蔵し、効率的に使用すればいいか、技術的なことに関しては全くわかっていない。
④核爆弾を爆発させて加速する宇宙船
宇宙船の底部を厳重に遮蔽しておき、そのすぐ外側で核爆弾を爆発させて推力にする。目的地に到達し、到達後に減速できるように宇宙船を加速するには数百個の小型核爆弾が必要である。これだけの核爆弾を爆発させれば、生物の住処が汚染されてしまう。
本当に太陽以外の恒星まで行くことはできるのか。鍵となるのは、加速用のエネルギー源を搭載しなくても宇宙船が加速できる方法を見つけ出すことだ。
当面の間、効率は高いが推力は低い、太陽光、レーザー、マイクロ波セイルのような、高速小型探査機を飛ばすのに有効だと期待されるシステムが最有力候補である。これ以外にも現時点で望みのある選択肢は、セイルよりも効率が低い核融合と反物質だけだが、これらは無人機にも有人機にも使える可能性がある。