自分で選んでいるつもり 行動科学に学ぶ驚異の心理バイアス

発刊
2024年5月15日
ページ数
306ページ
読了目安
352分
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心理的バイアスをマーケティングに活かすヒント
行動科学によって発見されている様々な人間のバイアスを紹介し、それをマーケティングに活かすヒントをまとめている一冊。
人間の心理的な癖をうまく利用して、マーケティングに活かすためのポイントが数多く紹介されており、1冊あれば、マーケティング施策を検討する際に参照するツールとして使えます。

習慣形成

人間は「認知的倹約家」である。思考すると認知のエネルギーを消耗する。だから、そのエネルギーをなるべく使わずに済まそうとする。可能な限り頭を働かさずに済むように、買い物などの決断において、人は習慣に頼る。つまり、同じ状況では同じことをただ繰り返す。これをビジネスに応用するには次の6つのポイントがある。

  1. 既存の習慣を崩すには、新しい期間の始まりなどタイミングを狙う
  2. モチベーションだけに頼らず、行動を引き出すキュー(きっかけ)を組み合わせる
  3. 既存の行動をキューにする
  4. させたい行動はできるだけ簡単にする
  5. ただ報酬を出すだけでなく、報酬を不確実にする
  6. 習慣を定着させるために反復させる

 

簡単にする

行動を変えるには、アクセルを踏むか、ブレーキを離すかのどちらかだ。マーケティングでは、アクセルを踏み込ませることを狙うよりも、むしろブレーキを緩めさせることを考えるべきだ。

  1. 摩擦の発見と低減に時間をかける
  2. 最初のステップは何が何でも簡単にする
  3. 選択肢の数はなるべく減らす
  4. 行動改善を阻んでいる心理的な壁を取り除く

 

面倒にする

同じ要求でも、最初からそれだけ頼むのではなく、先に大変すぎる活動を持ちかけた後に頼み直すことで、承諾しやすくなる。この2段階のプロセスで、頼みを持ちかける方は妥協したことになる。持ちかけられた方も、自分も同じような妥協をしなければならないというプレッシャーを感じ、小さな要求の方を呑む。

  1. 2段階アプローチで行動を変えさせる
  2. 少しの面倒や摩擦を加え、その対象に価値を感じさせる
  3. 「これには手間がかかっている」と意識させる

 

産出効果

答えを自分の頭の中で作り出す、つまり産出することに伴う認知的労力は情報を脳にしっかりこびりつかせる。

  1. オーディエンスを巻き込み、受け手に多少の労力を払わせる
  2. 宣伝文にシンプルな問いかけを入れる

 

キーツ・ヒューリスティック

頭にスッと入る情報ほど、信ぴょう性を感じられる。人は、情報の処理しやすさと真実味をイコールで結びたがる。

  1. 広告の文章に韻など修辞的な仕掛けを入れて、信ぴょう性を高める
  2. リズムを活かして記憶に残す

 

具体性

具体的な部分は記憶しやすいが、抽象的な部分は忘れられやすい。

  1. 可能な限り抽象的な言葉を取り除き、具体的な表現に置き換える
  2. 商品の使い心地を想像できるようにする
  3. 統計よりもストーリーを優先する

 

緻密さ、細かさ

緻密さは目立つだけでなく、統計値でもキリの悪い細かい数字の方が、信頼できると思われやすい。「細かい部分まで言えるなら正確であるはず」という連想は根強い。

  1. キリの良くない数字を使うことで、より正確だと伝えて信頼性を高める
  2. 細かい価格設定で価値を伝える

 

ベースバリュー・ネグレクト効果

消費者は、前面に出てくるパーセンテージに気を取られ、元々いくらに対するどんな割引なのかという重要な点を無視してしまう。

  1. 割引よりも増量を強調して、効果を調べてみる
  2. 価格設定よりも、より効果的なパーセンテージを強調する

 

極端回避

金額を3つ提示されたら真ん中を選びやすい。正解がない状況において、一番安い選択肢は品質が悪いと考え、それを選んだらお金をケチったと思われると想像する。一方で、一番高い選択肢はふっかけているだろうと考え、見栄を張ったと思われると想像する。

  1. 超高級価格の選択肢を足すことで、高額な商品の売れ行きを伸ばす
  2. 人は最初に目に入った金額から過大な影響を受けるため、メニューの上または左に高いプランを載せる

 

分母無視

人は強調された数字で頭がいっぱいになり、その数字が何を表しているかという点をよく考えない。

  1. 割引はパーセンテージで伝える。100の数字より高い価格設定なら、割引は絶対額で伝える
  2. 定価のフォントサイズを大きくすることで、割高に感じさせる

 

フレーミング

言い方をちょっと工夫するだけで、インパクトが変わる。人は決断する時、自分が知っている知識をよりどころにする。目の前にある情報だけを検討して、今現在は見えない関連要素を無視する。

  1. 得よりも損にフォーカスする
  2. 動詞(何をするか)ではなく、できるだけ名詞(どんなものか)を使う

 

公正さ

人はたとえ自分が損をしてでも、公正さを踏みにじる相手を罰する方を選ぶ。

  1. ライバルの行動はアンフェアだとリフレーミングする
  2. 価格設定を正当化できる理由を提示する
  3. 「〜ので」「〜だから」を入れる

 

選択の自由

人は自分の自主裁量の権利を脅かされたと感じた時、それを取り戻すため反発の行動に出ることが多い。つまり、過度に強制的な命令は大抵逆効果となる。他人の行動を改めさせたい時は、できるだけ言葉を抑える。相手の気分が良くなる言葉にする方が得策である。

 

ハロー効果

1つのポジティブな特徴があれば、他の特徴の印象も良くなる。消費者は気づきやすい具体的な要素を利用して、無関係の、しかし答えの出しにくい要素について予測を立てるヒントにする。