起業参謀が備えるべき「5つの眼」
スタートアップが大きく成長するためには、起業家を支える起業参謀の存在が欠かせない。起業参謀は、ビジョナリーである起業家に対して、クリティカルシンキングに基づいて事業の実現可能性を高めていく。
事業の成果とは「行動の量」と「行動の質」の掛け算で決まる。起業家は圧倒的な「行動量」を持っている人が少なくない。しかし、闇雲に行動量を増やしているだけでは成果につながらない。そこで「行動の質」を高める必要がある。行動の質を高めるには、自社のコンテクストやリソースを勘案しながら、有効な施策の幅を出し、その中で最も有効なものを優先づけることが必要である。
そのためには、広く多角的な5つの視点が必要である。起業参謀は次の5つの視点を行き来しながら、起業家の視座を拡大・整理してアドバイス・メンタリングを行う。マクロとミクロを行き来して、抽象と具体を駆使して、スタートアップを成功させる勝ち筋へのストーリーを起業家と作っていく。刻々と変化する文脈に沿って、様々なフレームワークを活用し、整理・幅出し・発散・優先順位づけを行いながら価値提供していく。
①鳥の眼:全体の俯瞰
3〜5年、時に10年くらいの未来を見据えた上で「あるべき姿」や「やるべきこと」を考えていく。スタートアップは、少し先の未来に対して最適化するプロダクトマーケットフィット(PMF)を目指すことが重要である。
特に最初の1歩をどこに踏み出すかという見極めが非常に重要だ。そのために「鳥の眼」を活用し、起業家がどう1歩目を踏み出し、その後、どのようにより広い市場に対応していくかの視座を与える。
【フレームワーク】
STEEP/トレンド分析、ターゲット市場の魅力度検証、TAM /SAM/SOM、Go-to-Market、ロードマップ策定
②虫の眼:顧客心理/ステークホルダー心理の詳細理解
顧客1人1人の心理やインサイトに迫り、その解像度を上げる。顧客のことを常に手触り感のある1人の人物として捉えることが非常に重要である。また、ターゲットとなる顧客の心境や状況は刻一刻と変化していく。それを受け止め、常にプロダクトにフィードバックしていくことが勝ち続けるために必須になる。
【フレームワーク】
真の課題理解/課題の構造化、モチベーショングラフ、UXエンゲージメントマップ、マーケティングファネルと5つの不、真のPMF
③魚の眼:仕組みを構築して戦わずして勝つ
PMFはスタートアップにとっては非常に重要なマイルストーンだが、PMFは最終ゴールではない。事業の最終ゴールは「持続的に勝ち続ける仕組みを作ること」だ。そのために、事業を静的ではなく動的に捉えて、勝ち筋を見立て構築していく「魚の眼」が要になる。
勝ち続ける事業の要の1つになるのが、違いを作ってつなげるフライホイールを構築すること、ダイナミックなネットワーク効果を構築することだ。そうしてMOATを構築する。
【フレームワーク】
MOAT構築、ネットワーク効果、コールドスタート問題解消、フライホイール構築
④医者の眼:起業家のメタ認知促進/組織のプレマチュアスケーリング防止
スタートアップや新規事業が失敗する最も大きな要因の1つが時期尚早の拡大(プレマチュアスケーリング)だ。まだ期が熟していてないにもかかわらず、拡大思考に走ってしまうことだ。スタートアップであれば、PMFしていないにもかかわらず、どんどん広告を打ちマーケティングしてしまう。
まずは、バケツの穴を塞ぐことを目指すことが重要だ。BtoBならば、顧客が他の顧客を連れてくるような口コミが発生している状態。BtoCならば、SNS等で話題になり、需要や引き合いが殺到するような状態を目指す。その状態を達成してから、バケツに水を入れないと、湯水のようにリソースを使うことになり、燃え尽きるリスクが高まる。
【フレームワーク】
ライフジャーニー、起業家OSアップデート、KPIの設計と運用、スタートアップバランススコアカード、スタートアップの目利き
⑤人の眼:腹落ちして行動量を増やす
人が一番信頼するのは、結局「人」である。起業参謀に託された使命は、他の人から信頼/リスペクトされ、信頼に基づき起業家の背中を押すことである。起業参謀は、ただ単なる知見の提供だけでなく、エネルギーやパワーを注力していくことが求められる。そのために有効なメンタリングスキルや傾聴スキルを磨く必要がある。
【フレームワーク】
リーンキャンバス、MSP/MVP/Prototype、CPF/PSFテンプレート、自社の魅力化ドキュメント