これからのブランドに必要なこと
情報もモノも飽和し、コモディティ化が加速している。その結果、ブランドに求められることも大きく変化した。この流れは、ビジネスにおけるデザインの果たせる役割が大きくなったことを意味する。
これからのブランドにとって、見直さなければならない点には、次の2つがある。
①目標
選択肢が細分化し、処理できる情報量を超えている状況の中で、「知りたい」「欲しい」と思われるブランドをつくるには、感覚的な直感「好き」をつくること目標にするといい。「売る」ことを目標にした場合、「値段を安くする」や「機能を増やす」といった数字で分析可能な手法を選びがちになる。
モノの価値は次の2つに分解することができる。
- 機能的価値:品質、性能、原料など
- 情緒的価値:ビジョン、コンセプト、デザインなど
機能は必ず必要でモノの価値の土台になるが、真似をしやすい。対して、情緒的価値は創造性が必要で真似が難しいため、独自性をつくりやすい。この情緒的価値をつくることが「好き」をつくることにつながる。
②方法
「好き」を生み出し、「これがいい」と選ばれる商品をつくるためには、デザインを取り入れた「ブランディングデザイン」が有効である。ブランディングデザインを使って目指すことは2つある。
- ブランドの思想と世界観(=らしさ)に一貫性と独自性をつくること
- ブランドに関わる全員が、ブランドの思想と世界観を理解し、共創できる状態をつくること
この2つを叶える仕組みをつくることで、ブランドの情緒的価値を高め、お客様にブランドを「好き」になってもらう。
ブランディングデザインを成功させる4つのポイント
ブランディングデザインを成功させるためには、次の4つのポイントがある。
①トップが想いを持つ
ブランディングデザインにおいて最も大切なのは、ブランドのトップ(経営者、責任者)の想いである。「どういう人が、どういう想いでつくったブランドなのか」は共感をつくる上で大切な要素である。
②強みを発見し、世の中のニーズと照らし合わせる
想いはあっても、独りよがりな商品・サービスはお客様に共感されない。そのため、元々持っている魅力と世の中のニーズを照らし合わせて、重なり合う部分を見つけることが必要である。
③「らしさ」に一貫性をつくる
公式サイトやSNS、店舗、広告などお客様との接点ごとに思想や世界観がバラついていると、お客様はブランドを捉えにくくなる。ブランドの「らしさ」をつくるためには、すべての接点に一貫性をつくることが必要になる。
④続けられる仕組みをつくる
ブランディングデザインに終わりはない。ブランドを刷新した後は、お客様の声を聞いたり、時代の変化を取り入れたりしながら、ブランドを育てていく必要がある。
ブランドデザインサイクル
ブランディングデザインは、一度やって終わりというものではなく、長期で取り組むことが前提である。プロセスを繰り返しながら、ブランドを強固にし、競合が簡単に真似できない状態をつくっていく。
ブランディングデザインは、次の5つのステップをぐるぐる円のように回しながら、その輪を大きくしていくイメージで取り組む。ここで大事なのは、プロセスを断片的に実施しないこと。まず5つのステップを1年ぐらいで一巡させることが必要である。
①分析する
- できるだけ少人数でプロジェクトチームをつくる
- ゴールを設定し、ロードマップを制作する
- 自社、市場、顧客についてのリサーチを行い、資産を棚卸しする。
②コンセプトをつくる
- 「ビジョン」「強み」「ターゲット」「問題」を整理し、伝えたい情報を絞って、ブランドコンセプトをつくる
- ブランドの「らしさ」を短く要約し、一言に凝縮したネーミングをつくる
- ブランドの思想をわかりやすく、心に響く文章にまとめたステートメントをつくる
③カタチをつくる
- ロゴ、カラーシステム、フォントのルールなど、ブランドコンセプトを可視化したVIをつくる
- 一貫性を持ったブランド運用を行うためにブランドガイドラインをつくる
- ブランドコンセプトに基づいたプロダクトコンセプトをつくり、商品・サービスを開発する
④伝える
- まずは関わるメンバーが「好き」になるように、トップメッセージ、インナーツール等のインナーブランディングを行う
- ブランドガイドラインに従って、広告を制作し、ブランドの「らしさ」をブラさずに運用する
- メディアや有識者などの第三者を通じて、PRを実施する
- ブランドと相性の良いSNSを運用する
⑤育てる
- 商品開発、広告制作、SNS運用、施策の効果測定などの取り組みを一貫性を持って運営し、ブランドを育てる
- 時代の変化を汲み取り、社内の声やお客様の声を集めて、仕組みを見直す