変化を受け入れ、対応するために必要なこと
人生とは選択の連続だが、その選択が「正しい」か「間違っている」かは、明確にわかるものではない。この「確信できない状態」を受け入れて生きていかなければ、簡単に挫折してしまう。確信を持てないと、私たちは将来を少しでもコントロールしようとする。そこで何らかの行動を起こすのであれば生産的だが、大抵は非生産的なまま終わってしまう。最悪のシナリオを思い浮かべて苦悩し、エネルギーを消耗し、活力を奪われる。
はっきりしない状況に直面しても冷静でいられる人は、先の読めない状況をかえって楽しむことさえある。新たな状況や課題に積極的に心をひらく思考スタイルをとっているからだ。現実生活で、ちょっとした予測のつかない状況に慣れるよう心掛ければ、耐性が身につきやすい。
「スイッチクラフト」とは、複雑で予測不能な世界を生きていく上で必要な「切り替える力」を指す。素早く、しなやかに切り替えられれば、過渡期を乗り越えやすくなる。自分のウェルビーイングを高めるには、変化を迫られるたびに受け身で対応するのではなく、自らを導いていかなければならない。人生で成功し、幸せになる道を決める大きな要因は、別の手法に切り替えるタイミングと、そのやり方を心得ていることだ。
切り替える力の4本の柱
「切り替える力」には4本の柱があり、それぞれが重要な役割を担っている。これら4本の柱が合わされば、困難な状況にも対応できるだろう。
①すばやく柔軟に対応する
柔軟ですばやい思考の切り替えと行動によって、人生は変わる。すばやく柔軟な対応力を発揮する上で重要な要素は4つに分けられ、それぞれの行動を起こす必要がある。
- 変化に適応する
常に環境が変わっていくことにもいい面があると強調し、困難よりもチャンスに目を向ける。 - 目標と願望のバランスをとる
自分が立てた目標と願望のバランスをとり、優先順位をつける。 - 視点を変える
視点を変えれば新たな印象を受け、別の可能性に目を向けることができる。ポイントは「異なる複数の視点から解決策を考える」「問いかけの内容を変える」「楽観的になるように心掛ける」「他の人ならどう対処するか想像する」 - 実行機能を高める
実行機能は人間が生き延びる上で基本となる認知能力で「行動の抑制」「ワーキングメモリ」「認知的柔軟性」の3つの能力で構成される。これらを伸ばせば、時間の使い方を管理する、集中力を維持する、衝動を抑える、1日の内にすべきことを把握する、複数のタスクを順番にこなすことが可能になる。
②自分を知る
思考・感情・行動を認識し、それらが他者にどんな影響を及ぼすかを自覚する。自己認識力が高い人は、どうすればもっとうまくやれるか、自分の行動のどんな点を修正すればいいかを検討できる。その力が高いほど、機敏な行動をとれる。
自分はどの程度、物事に対して偏見をもた図、新たな変化に柔軟に対応しているか。どの程度、知的謙虚さを持ち合わせているか。問いかけを続ければ、自分を深く知ることができる。
「自分を知る」能力を高めるには、自分の信念や価値観をよく理解しなければならない。自分の信念の本質を探るため「思考日記」を書いたり、人生における核となる価値観を明確にするために「パーソナル・ストーリー」を書き出せば、本当の自分が浮かび上がってくる。
③感情への気づき
感情は私たちに現実を認識させる。それによって、今の目標から別の目標へと切り替えることができる。感情のおかげで、目標を達成するためにどんな行動をとったらいいか、適切な判断を下すこともできる。
ポジティブとネガティブ、両方の感情を整理して調整し、利用する。生き延びる上ではネガティブな感情が役立つが、ポジティブな感情も過小評価してはならない。レジリエンスを高めるには、ポジティブな感情が欠かせない。ポジティブな感情は、新たな経験や人間関係に心をひらかせ、好奇心と創造性を刺激する。
感情の調整は「切り替える力」には欠かせない。自分の感情をより正確に表現できれば、感情が一層明確になり、その意味を把握しやすくなる。そうすれば、状況に対処する際に感情を細かく調整できるようになる。
④状況をつかむ
直観は、周囲の環境や背景を把握することで機能している。周囲の環境の微かな情報をもとに、私たちが適切なタイミングで適切な判断を下せるようにする直観は「切り替える力」にも欠かせない。
直観は、記憶や認知システム機能の延長上にあるもので、人生の経験に強く影響を受けるメンタル・スキルだ。直観的な知識を得るには、知性による分析ではなく、実際に行動を起こした時だ。直観は経験を重ねることで発達させることができる。