ヒューマノクラシー 「人」が中心の組織をつくる

発刊
2023年12月6日
ページ数
496ページ
読了目安
642分
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推薦者

柔軟でクリエイティブな組織のつくり方
従来の官僚主義的な組織マネジメントでは、柔軟性やクリエイティビティが発揮されず、変化の激しい時代には対応ができない。官僚主義の対局にある「人」が中心の組織マネジメントについて、その方法論を説いている一冊。

官僚主義から脱却し、働く人々が自由に能力を発揮する組織の事例を紹介しながら、これからの組織に求められる新たなマネジメントの方法が書かれています。

官僚主義とヒューマノクラシー

中・大規模の企業のほとんどは、社員を狭い役割に押し込め、成長を妨げ、人を単なる経営資源のように扱う。この原因は、保守的な権力構造、息苦しいルール、有害な社内政治をはびこらせる官僚主義にある。官僚的な組織は、惰性的で、動きが鈍く、働く人の意欲をそぐ。また、一握りの幹部だけが変化を起こす力を持っているが、その幹部は大抵否定的で、傲慢で、昔のやり方を踏襲するので、組織は方向性が定まらない。だから、根本的な変革はいつまで経っても実現されない。

 

官僚主義以外のやり方でも組織づくりは可能である。世界にはポスト官僚主義に進むパイオニア企業が出現しており、これらの企業は「人の力を最大限に生かすこと」を目標にしている。この強い思いこそが「ヒューマノクラシー」の精神であり、官僚主義の「人のコントロールを徹底しようとする姿勢」とは対照をなす。

 

組織を不自由にしている障害を取り除くには、官僚的マネジメント・モデルを根底から問い直す必要がある。柔軟で、クリエイティブで、情熱に溢れた組織を築くには、人々の努力を引き出し、それをまとめていくための新しいアプローチが必要である。

私たちは組織の中心に、構造やプロセスや手法ではなく、人間を置く必要がある。組織効率を求めてコントロールを最大化しようとするマネジメント・モデルではなく、従業員の貢献を最大化しインパクトを生み出すマネジメント・モデルが必要だ。私たちは官僚主義をヒューマノクラシーに置き換える必要がある。この2つのモデルの違いは次の通りである。

 

・官僚主義:人間=道具。人間を組織により奉仕させるにはどうすればよいか

・ヒューマノクラシー:組織=道具。どんな組織なら人々から最高の力を引き出し、その力に値する組織になれるのか

 

ヒューマノクラシーの基本原則

マネジャーは、計画立案や予算編成、業績評価などのプロセスに執着しがちだ。しかし、ヒューマノクラシーの実現を目指すなら、プロセスに注目するだけでは不十分だ。個々のプロセスはそこでの状況に適したものである場合が多い。従って、1つの組織で効果があっても、別の組織ではうまく機能しないかもしれない。

もし私たちが組織の能力を、その中で働くくらい豊かにしたいのであれば、最初から作り直さなければならない。まず、人間が「資源」や「資本」と見られることがない世界観が必要だ。そして、目標はコンプライアンスを最大化することではなく、最大限に力が発揮できるようにすることだ。そして、すべての構造や仕組み、工程や手法に、以下の新しい原則を埋め込む必要がある。

 

①オーナーシップ

起業家精神の土台となるのはオーナーシップだ。全ての事業のオーナーは意思決定をする自由と、成功に賭けてみる自由を持っている。従業員の「意欲」「仕事への満足感」「組織へのコミットメント」に最も強く相関しているのが「権限移譲」である。

 

②市場

意思決定の権限はトップに集中している。企業のレジリエンスを高め、よりイノベーティブかつ人間的にするには、この点を変えなければならない。集合知、機敏な資金配分、柔軟な調整、競争がもたらす規律、これらは市場から得られる恩恵である。

 

③健全な実力主義

実力主義によって、社会的なランクやコネに関係なく、個人が自由に力を発揮し成功できるようになり、その結果、人材のリターンが高まる。官僚主義を実力主義に置き換えるには、次の4つのことをする必要がある。

  1. 人事評価の浄化
  2. 知性と権限の整合
  3. 報酬と貢献度合いの調和
  4. 自然で動的な階層組織

 

④コミュニティ

コミュニティは個人の幸福と共同で成果をあげるために不可欠なものである。コミュニティを第一とし、事業をその次とする組織を築くには、次のような材料が必要である。

  1. 大切にできるミッション
  2. オープンなコミュニケーションと透明なデータ
  3. 自分自身でいられる安心感
  4. 自己決定する権利
  5. 同僚同士の説明責任
  6. 相互への敬意
  7. 家族のような感覚

 

⑤オープンであること

組織や社会はオープンであれば栄え、そうでなければ活気を失う。オープンで多様性であれば、膨大な組み合わせの可能性をつくり出す。アイデアや才能、資源が新たな形で混ざり合うほぼ無限の機会が生じる。

 

⑥実験

組織が進化するペースは、大部分が実験の数によって決まる。それにもかかわらず、多くの企業は「やってみて学ぶ」ことに熱心な従業員をあまり歓迎しない。組織の上から下まで「言うだけでなく、形にしてみる」という精神が大事である。

 

⑦パラドックスを超える

規律と柔軟性、規律とクリエイティビティ、丁寧さとスピード、慎重さとリスク選考などのトレードオフは、もっと深いところにあるパラドックスを反映している。それは「深化」と「探索」の間の緊張感だ。パラドックスに対処するには3つの優れた戦略がある。

  1. 片側だけに寄ったトレードオフの隠れたコストを直視する
  2. 現場の従業員がリアルタイムで賢明なトレードオフの判断ができるよう、教育し、技術を与える
  3. コントロールの手段をつくり変える