ビジネスを成功に導くデータ活用実践ガイド

発刊
2023年11月7日
ページ数
224ページ
読了目安
331分
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推薦者

DXを成功させるために必要な手順
DXで失敗しがちな考え方を指摘し、顧客体験価値のつくり方から、顧客データ基盤の構築の仕方まで、実践的な手順を紹介している一冊。
なぜ多くの企業で、うまくデータを扱えず、DXが進まないのかがよく理解できます。DXを成功に導くためには、まずどういった要素が必要になるのかを整理することができます。

顧客体験価値をデザインする流れ

DX推進や体験創造を成功させるためには、顧客と社会に対して、どのような価値を提供するのかという目的を明確に定めることが必要である。目的を見失わずにデータという手段を使いこなすことで、顧客の提供価値および社会への存在意義をより強固にすることができる。

 

顧客体験価値の創造に際して重要なポイントは、企業のパーパスと一貫性を保ったものを策定することである。そのためには、次の流れで顧客体験価値をデザインする。

 

①デザイン基準を策定する

パーパスを因数分解し、自社が提供する顧客体験価値において行うこと、行わないことを明確にする。デザイン基準を定義するには、パーパスを実現する上での重要要素(KSF)に分解し、体験で担保すべき要素を把握することが必要である。

KSFに因数分解する際の留意点は、提供する価値や顧客体験だけではなく、それらを実現するために必要なデータ・組織・システムなどの環境も含めて分解し、アクションに落とし込めるようにすることである。KSFを分解した後は、デザイン基準を定めていく。デザイン基準では、次の要素を決める。

  • Must:議論の余地なく、必ず実行すること
  • Should:必須ではないが、重要なこと、推奨項目
  • Could:ゴールの実現には直接関係ないが、可能であれば入れたいこと
  • Won’t:議論の余地なく、絶対に行わないこと

ここで大事なことは、絶対に行わないこと(Won’t)を明確にすることである。

 

②顧客の課題を調査し発見する

顧客体験における課題設定を実施する際には、定量・定性の両データを用いる必要がある。定量的な顧客データが現時点で取得できていない、または限定的な情報しか取得できていなかったとしてもよい。定性データを活用するというマインドセットと、データを取得するための定性調査の知識・経験さえあれば、走り出すことは可能である。

 

③課題解決につながる価値を定義する

定量分析・定性分析を通じて導出したインサイトに対して、提供すべき顧客体験価値を定義する。その上で、競合や既存サービスにないユニークネスを確立する。

ポジショニングマップを定義する上では軸の選定が肝要である。企業として持ち合わせている独自性や、顧客が意思決定する上での重要要素をベースとして考えることが一般的である。

 

④プロトタイピング

顧客体験価値の大枠が決定した後は、実際にその価値を提供するプロダクト・サービスの具体化へと移行する。発掘した顧客のジョブを達成したいと考えた際に、何がそれを高めてくれるのか(ゲイン)、逆に何がそれらを阻害するのか(ペイン)について、ヒアリングで出てきた事柄をベースにしつつ、プロジェクトメンバーで議論し、整理する。この体験価値の具体化タスクでは、次の2点が大切である。

  1. 1人で考えないこと
  2. 企業側の視点を忘れること

実際に顧客体験価値の具体化を進める際には、「価値提案キャンバス」というツールが有用である。

 

⑤顧客体験の検証

顧客にとっての理想的な体験を具体化しても、それは仮説に基づいた構想に過ぎない。想定顧客にプロトタイプを使ってもらい、現実世界におけるテスト、すなわち顧客体験の検証として初めて、その体験に価値があるか否かを客観的に評価することが可能になる。

 

顧客データを統合し、顧客体験価値向上に利用する

顧客体験価値向上のために企業がまずやるべきことは、自社の顧客の理解である。ターゲットとする顧客像が曖昧なままでは、顧客が真に求めているものを理解できず、自社がどのようなサービスを展開していくべきなのかも決まらない。

様々な顧客接点から得られるデータをもとに、顕在的・潜在的な顧客の声を知ることは可能である。データから顧客の全ての情報を把握することはできないが、顧客のデータをつなぎ合わせることで、顧客1人1人に対する理解を深めることが可能である。企業が持つ顧客接点は多岐にわたる一方で、それらのデータが統合されておらず、十分に活用できていないケースがほとんどである。顧客体験価値の向上を目的とした場合、この顧客データを統合することが重要なポイントになる。

 

データ分析する際に必要となるのがデータ基盤である。データ基盤の役割は、次の3つの領域に大別することができる。

  1. データ収集・蓄積(データレイク):元データをそのままコピーして一元的に集約して保存する
  2. データ加工(データウェアハウス):データクレンジングをし、加工・結合したデータを格納する
  3. データ抽出・集計(データマート):利用用途に合わせて抽出・集計したデータを格納する

 

顧客データ基盤は一般的な情報系のシステムとは大きく異なり、システムを一度構築したら完了ではない。初期構築時の厳密な要件定義やシステム設計以上に、早期のリリースとその後の運用の中でビジネス要件を定義し、その実装を機動的に行える体制構築が顧客データ基盤には求められる。