今いる小さな場所で他人と比較しない
メタ思考とは、自分の認知活動や性格を俯瞰で見て認識する活動のこと。「外」の視点を獲得すれば、今自分がいる1つの世界の中で他者との比較に苦しむのではなく、自分がいかに小さい場所でちょっとした差に過敏になっているか、その視野狭窄に気づくことができる。そして、1つの価値観に縛られずに自分が面白いと感じることに正直に、より自由に生きられる。
1つの会社の中でポジションや評価にこだわることは、人生にとって極めて小さな話である。自分の人生をより良いものにしたい時、会社という1つの場所の中だけで考えていても、あまり意味がない。人生では、自分が負けないルールを自分でつくり、同じルールで縛られた競争に参加しなければいいのである。
他人と比較しないためのアイデアの1つが「自分1人だけで楽しめるルールを考える」ことである。「自分しかいない競技をつくる」という具体的なアクションに切り替えてしまうのが有効である。
複数の自分を使い分ける
今の時代を生き抜くのに役立つのが「エイリアス」という概念である。エイリアスとは「別名」や「リンク機能」という意味だが、会社にいる自分や仕事をしている自分など、特定の場所にいる自分それぞれを、自分の名前をまとった分身として捉える考え方である。
つまり、今の会社や組織、コミュニティなどにいる自分を、自分の人生やアイデンティティと同一化する必要は全くないということ。そうではなく「会社には、私という機能の一部を提供している」というように、自分の人生をより自由に、もっと柔軟にデザインしていくあり方である。
エイリアスの概念は仕事でもあらゆる場面で効果的に使える。仕事に関する具体的なメリットでは、「複業」がしやすくなる。エイリアスは、時と場所によって自由に掛け合わせるといい。まるで自分を使ったゲームをしている感覚で、複数のエイリアスを、その都度適切な複数の場所に置きながら、同時並行で軽やかに行動する。これくらい自分を「メタ思考」できるようになると、会社生活のストレスは相当軽減される。
外に出て、自分を客観的に見る
今や成功したとみなされる人生に見本などなく、どのような道を進めばいいか、自分で考えなくてはならない。となると、私たちは自分が持つ「ものさし」の種類をもっと増やす必要がある。自分で自分を理解して、自分で自分の仕事を定義し、自分で自分のモチベーションを上げていけるように、多様なものさしで人生を考えていかなくてはならない。それには、「メタ思考」の力を持つことで、問題や課題を見つけて「言語化」できる力を養う必要がある。
他者の定義に従って生きるのか、自分の定義で生きるのか。そのことを普段のちょとした行動から自分に問い直してみることが大切である。他人が決めた何かに、気づかない内に自分が「とらわれている」ことも、たくさんあるからである。
社会には多くの人が快適に過ごせるように決められたルールがたくさんある。しかし、そのルールはいつどんな時でも最適解とは限らない。私たちがルールはいつでも守るべきものという思い込みに縛られているのは、誰かが決めたルールに従うことはラクだからである。思考停止はラクなのである。
しかし、何が正解かなんて本当は誰にもわからない。新しい局面に遭遇したら、その都度自分で考えなくてはならない。
必要なのは「新しいものさし」である。自分が属する会社や組織、コミュニティ以外の「外のものさし」を持って自分をメタ思考するところから始める方がいい。
別に今いる場所や条件を全て捨て去って、身一つで「外」の世界へ出ていく必要はない。自分が所属している場所を、いつでも戻ってこられるベースとして確保した上で、それ以外の場所にちょっと参加するくらいのイメージで「外」の世界を知ることから始めればいい。
いずれにしても、「外」の世界を知らなければ、自分がとらわれているものを客観的に見て、自分にとってそこにいることが幸せなのか否かをはっきりと認識することはできない。いつもの自分の「外」の世界へ出て、知らない価値観に出会っていく行動を積み重ねていく過程で、自分の「思い込み」を少しずつメタ思考できていく。
複数のコミュニティを往復する
複数のコミュニティに接点を持ち、色々な人たちと触れ合うことは大切である。色々な人たちに話を聞いて、「自分ができること/できないこと」「得意なこと/得意ではないこと」「好きなこと/好きではないこと」を把握していく。そんな幅広い視点を確保していると、自分自身のことを「メタ思考」しやすくなる。
複数のコミュニティを往復しながら、新しい人間関係をつくり、自分の視野を広げていくことが、同時にメタ思考力を高めてくれる。