自分自身の内側から問いを立てる
研究というものは、研究者が自分の中にある問題を見極め、それに対してどうすればいいか考えることから始まる。しかし、その研究に着手する前の段階が最も難しい。どんな問いを立てたいのか、どんな問題を解決したいのかまだわからない段階が一番難しい。誰しも、自分のやりたいことに気づいているとは限らない。
「何を研究すればいいのか」という問いに答えられるのは自分だけである。研究の着手段階では、まず自分自身の内面を見つめ、次に外側に目を向けるという2つの作業が必要になる。
最初に直面する難題は、興味の持てるテーマを見つけることではなく、その一般的なテーマを具体的な一連の問いへと変身させることだ。テーマは、範囲が広すぎるし、抽象的すぎる。研究の際初期の段階で必要なのは、きわめて個人的な問いに答えることだ。
- 自分自身を検索する
一次資料の検索結果を用いて、そのテーマの内自分にとって最も関心のある側面を把握し、その関心に基づいて問いを作成する。 - 退屈を手がかりにする
積極的に嫌いと感じる自分の感情に注意し、このテーマに関心があれば「当然」興味があるはずなのに興味が持てない、そういう問いを特定する。どんなことに興味がないのか理解することで、本当に興味があることを見極める。 - やるなら思い切り小さく
突っ込んだ調査を始める前に、自分のテーマに関する事実重視の具体的な問いを生み出す。
問いを鍛える
適切な問いにたどり着くには、研究の積み重ねが必要である。その後には、それらの問いに答え、新しい問いを生み出すためにさらに研究が必要になる。初期段階では、今ある問いに磨きをかけて、新しい問いを生み出すことだ。多くの問いの根底にある問題を見極め、正確に言語化する。
- 問いに診断テストを実行する
語彙や文法や表現に注意し、問いの文章が具体的かどうか、また特定の結果を期待する偏ったものではないかどうか確認する。 - 一次資料を使って問いを鍛える
今立てている問いを強化するために、キーワード検索を実行する。この検索によって見つかる一次資料には、それまで気づかなかった新たなキーワードが含まれている。 - 思い込みを可視化する
研究に持ち込んでいる自分の思い込みに気がつき、それを利用して問いを立てる動機となった問題を特定する。 - 問いと問いを結びつける問題を特定する
複数の問いの根底にある問題を明らかにする
プロジェクトを設計する
問題にたどり着いたら、次は手持ちの資源を考え、何を達成できるか判断する。具体的には、問いに答えて問題を解決するためにどんな一次資料が必要か考えるとともに、プロジェクトを組み立てるのにどんな資源が必要かということも考えなくてはならない。
- 一次資料をシリアルの箱と同じように扱う
一次資料の1つ1つについて、複数のジャンルの問いを立てる習慣をつける。それによって、自明ではなく、従って見過ごされやすい問題を見つけられるようになる。 - 一次資料を思い描く
一次資料を探そうとは、最初の内は思わなかった場所を特定する。これによって研究の包括性や独創性、重要性が高まる。 - 資料を用いて点と点を結ぶ
研究の早い段階で、柔軟かつ懐を広く保ちつつ、資料批判について考え始める。 - 意思決定マトリックスを使い、計画を調整する
研究の成否に、プラスにせよマイナスにせよ大きな影響を与えそうな要因を想定し、それに応じて計画を調整する。 - 研究計画書を作成する
未完成のプロジェクトについて、正式な計画書を作成し、自分の研究を支援してくれるよう他人の説得を試みる。研究計画書が、現時点での自分の思い込み、他人がその研究のどこに興味を感じるかなどをくっきりと浮かび上がらせる。
自分の問題集団を見つける
研究を前進させる問いや問題を知り、自分の先入観や能力や限界を把握した後は、自分自身の枠を乗り越え、それらの問いや問題のすべてを、他の人々にも理解できるような形に翻訳しなければならない。それがうまくいけば、自分の問題は彼らの問題ともなる。
自分の問題を気にかけているのは1人ではない。他にも気に病んでいる人々がいる。自分の問題を共有する研究者のコミュニティをどうやって見つければよいか。
- 変数を1つ入れ替える
問題とその問題の具体的事例とを区別する。研究すべき問いのどの要素がその問いの「必須成分」なのかを特定する。これができれば、自分の問題を共有する他の研究を見つけやすくなる。 - 自分の研究の前と後の章には何が書かれているか想像する
あるテーマの中で最も興味深いと思う問題を特定するため、問題重視のより大きな枠組みの中で研究プロジェクトを構想する。その上で、その枠組みに参加している問題集団のメンバーを見つける。 - 自分の集団を探す
自分の問題集団による二次資料を用いて、さらに多くの問題集団の資料を見つける。