うまいを上手く伝えて売れるを作る 驚きの商品開発術

発刊
2023年8月23日
ページ数
256ページ
読了目安
309分
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ヒット商品をつくるための商品開発術
大手コンビニやスーパーなどで、新商品の開発に携わってきた著者が、ヒット商品を生み出すための商品設計・ブランディングの方法を紹介している一冊。

どのように顧客が求めている商品コンセプトをつくり出し、それをヒット商品としてつくり上げるのか。これまで著者が携わってきたヒット商品が生み出されるまでの事例が詳細に書かれており、参考になります。
特に食品関連の新商品を扱うバイヤー、マーチャンダイザーにとって役に立つ内容になっています。

市場全体を俯瞰する視点を持つ

大きくヒットする商品開発は「気づきのアンテナを立てる力」が高くないとできない。商品の持っている「特徴」や「強み」を見つけたり、色々な障害になっている「壁」の存在に気付いたりするのにも「気づく力」が必要になる。

 

「気づく力」の基本は、高い位置から広い視点で市場を眺めること。森、林、木の視点から数値ですべて話せるようになると、伝わりやすい。

  1. 森を見る視点
    市場規模や伸び率、人口動態などのマーケットの変化の方向を考え、その中でお客様がどんなことに不満を持ち、不便を感じているのかを探る。
  2. 林を見る視点
    商品のコンセプトを踏まえて、自分たちの強みや独自性を言語化し、ターゲットとすべきお客様のセグメントを明らかにする。
  3. 木を見る視点
    競合の存在を意識し「原料・配合・工程」で他と差別化し、デザインやキャッチコピーなどでその違いをお客様に訴求していく。

「気づく力」が最も必要とされるのが、最初の「森→林」のステップである。この森の視点の気づき力で、商品が売れるか売れないかは8割方決まると言っても過言ではない。

 

一次情報から仮説を立てる

気づきのアンテナを立てるコツは、仕事と生活を分離しないことが大切である。これは、商品を買ってくださるお客様は生活者であって、プロではないという視点を持つことである。プロの常識が、一般人であるお客様の常識と同じであるとは限らない。商品開発では、お客様の立場を理解して開発することが大切になる。

 

生活者の感覚を得るためには、「仮説を持って街を歩く」ことが一番である。現状分析をした上で仮説を立て、実際に店舗や産地に行く。ここで大切なのは「一次情報」であり、現地・現物・現実を知ること。生情報のインプットがなければ、現状分析ができず仮説は立てられない。

この仮説のよって立つところは、「不満」や「不便」の解決、お客様の「不」の解消である。そこが商品開発の軸になる。

 

商品開発の基礎

バイヤーは商品を次の4つの切り口で見て、これらをクリアする商品を開発もしくは品揃えをする。

 

①品質はいいか(おいしいか)

商品企画・設計のポイントを、それぞれ「原料・配合・工程」の3つの要素に分解して、ヒットした要因やダメだった要因を考えてみる。商品を図式化して自分で方程式をつくれるようになれば、何が売れた要素だったのかがわかる。

 

定番の商品の原材料や味付けは、どれも日本人が好きなものばかりである。つまり、ヒット商品は、日本人が好きなものを掛け合わせるところから生まれる。食品業界で直近の1年間に大きく売れたものを見ても、完全な新商品はほとんどない。定番の商品を磨き込んだものか、基本的な素材同士を掛け合わせたものばかりである。結局、人の好みというものは、時代が変わってもそう大きく変化せず、いつの時代も王道カテゴリーが強い。

だから、定番の素材、定番の味付け、定番の調理法を「原料・配合・工程」の中で組み合わせることで、新たなヒット商品を生み出すことができる。

 

②売れるか(値ごろ感があるか)

お客様に「買おう」と思って頂くための1番のポイントは「値ごろ感」(コスパ)である。「売れる」商品をつくるためには、品質と価格のバランスが不可欠である。どんなに品質が良くても、お客様の望む価格帯から外れてしまえば長続きして売れない。

 

大切なのは、事前にきちんとマーケット調査を行って、その商品についてお客様が「これくらいの値段だったら買っていい」と考えている価格帯を把握し、商品開発を始める段階で価格を決めておくことである。その上で「原料・配合・工程」の中のどの部分を工夫して目標を実現していくかを詰めていく。

品質と価格を詰めていき「このクオリティでこの値段でいいの?」という驚きを誘うくらいの値ごろ感が出て、その商品が定番であるほど、不動の人気を確立することができる。

 

③儲かるか

お客様の「値ごろ感」が一定であり、商品設計で価格が先に決まった場合、「利益」をつくるためには、その売値に見合った水準までコストを下げなければならない。そのために、例えば次のような工夫をする。

  • 商流改善(例)直接取引に変更する
  • 原料改善(例)複数部門で原料を共有する
  • 生産/製造改善(例)空いている製造ラインでつくる
  • 物流改善(例)コンテナ単位で買い付ける

 

④他社にないか

王道の食材や味付けでも、これまでにありそうでなかった組み合わせを見つけ出せれば「他にない」新商品になる。ここでも「原料・配合・工程」という因数分解を使う。

どの時代でも売れる王道なカテゴリーの中で「ここでしか買えないもの」は何かを考えながら、差別化した商品開発を行う。そういう考えてつくったものは、長く売れ続ける。

 

商品設計と伝達設計の両方を常に考えて動く

商品を開発する場合、商品そのものの企画をしながら、それと同時に、その良さをどう伝えていくかを考える必要がある。

 

ブレイクスルーブランディング