半農半X的 これからの生き方キーワード AtoZ

発刊
2023年6月26日
ページ数
192ページ
読了目安
241分
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これからの生き方のヒントとなる視点
人や地域などをテーマに、アルファベットAからZまで26のキーワードをあげるという「AtoZ」という編集手法を用いて、これからの生き方を提示している一冊。

「半農半X」というコンセプトを掲げ、多様な生き方を提示してきた著者が、様々な分断が起きている現代においてこそ必要な考え方を書いています。一歩下がって、人や物事を広く見つめる視点を手に入れるのに役立ちます。

A:間柄

日本の古い言葉に「在り合ふ」という言葉がある。「在り」は存在を意味し、「合ふ」は出会いを表す。それぞれ別々に生まれてきたものが、ある時、偶然か、因縁か、出会う不思議。人生がクロスする。

漢字の「合」という字は「助け合う」「意見を述べ合う」「交換し合う」の「合う」と考えれば美しい。「合」が減りゆく時代に、取り戻すべきは「合う」である。しかし今、この人生がクロスする「縁」が危うい世になっている。

 

「在り合ふ」に関連する言葉に「関係性」という言葉がある。「半農半X(使命多様性)という生き方」は「関係性の回復」のことである。自分自身、他者、社会との関係性の回復。全てが分断される世において、関係性がますます課題になる中、どうすればそれを変えていけるのか。

それは、自分の役割に気づくこと。今を生きていることの不思議さに気づくこと。そして他者のキーワードや他者のXに関心を持つことである。

縁について、私たちはすごくもったいないことをしているのかもしれない。思い切って手紙やメールを書いてみる、話しかける、会いに行ってみる。今後の人生には「橋をかけること(関係性の回復や創造)」が重要である。

 

B:武器収集&ブリコラージュ

人生100年時代という長い人生を歩んでいく特に若い人にとっては、「武器収集=新しい思想の探索、(再)発見」という視点は重要である。

フランスの文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースの言葉に「ブリコラージュ」がある。これは、周辺にある素材を自由な発想でレシピのないものを即興で器用につくってしまうことを言う。武器を色々組み合わせて、ブリコラージュして、さらに自分しか持っていない独自の武器に育てる。やりたいことを叶えていくためには、準備も必要である。

 

K:組み合わせ&交換

1人の人生においても、地域としても重要なキーワードが「組み合わせ」である。最近は「半農半X」も「農山漁村発イノベーション」といって、農と何かを組み合わせる、イノベーションという観点から評価を受けている。「半林半X」といった、農以外の多分野でも応用されている。

「組み合わせ」にさらに「交換」というキーワードを加えてみる。交換を活発化させるという可能性。私たちはそのパワーを忘れていたり、未実践なのかもしれない。

 

P:試作品をつくる

「センス・オブ・ワンダー」の心を持ちつつ、新しい「組み合わせ」を模索し、「試作品をつくる」ことが、これからの生き方の決め手になる。アイデアは重要だが、アイデアを出すだけで安心して、その後動けない人、忘れてしまったり、継続して考え続けることができない人が多い。

とにかく初めの一歩力。何かが動き出す「試作品をつくる」ことが重要である。Pが持つメッセージには、「動く」「初めの一歩を踏み出す」ことが重要という思いが込められている。それができたらすべてOKである。とにかく実験の精神を持ち、実験室に立ち、手を動かしてみることが大切である。

 

大事なのは、形にするのを忘れず実行すること。しかし、私たちは忘れやすいし、忙しい。アイデアはメモしないと3秒で消えてしまう。そうならないためにはまずメモを書き留め、忘れないために、毎日目がいくところに置いたりしないといけない。

 

S:センス・オブ・ワンダー

「センス・オブ・ワンダー」とは、自然の神秘さや不思議さに目を見張る感性のこと。宝物を発見できる力。アートの源。これがあれば、どんな世になろうとも生きていけるのではないか。

種まきでも、草取りでも、農的なことはセンス・オブ・ワンダーを取り戻すのにとてもいい。カントリーウォーク、村歩きもおすすめである。歩くことでセンス・オブ・ワンダーを育むことができる。散策中、見つけた面白いもの、宝ものをメモし、歩いたあと、発見したものの発表会をすると効果的である。

 

私たちの感性は良くなっていると思う反面、もしかしたらものすごく退化してしまっているかもしれない。退化していることを教えてくれたり、叱ってくれたりする人が、周囲にいることは大事である。

子供から大人になるにしたがってなくしていくセンス・オブ・ワンダー。今はセンス・オブ・ワンダーを持った大人がたくさん要る時代である。

 

X:多様なX(使命多様性)&X meet X

人の持つXの違い、ユニークさを「使命多様性」と呼ぶようになった。そうした視点を得ると、他者の見え方に変化が生じる。個性も見えやすくなる。人に会う時は、この人の「Xは何だろう」という視点で話を伺ったり、意見交換をしたりする。

この人にも、あの人にもみんな、それぞれのXがある。時々「自分のXが見つかりません」と尋ねられることもある。そんな時は「自分のXにこだわらなくても、周囲の人のXを応援するというXもある」という。今はゴールした人だけでなく、アシストした人もリスペクトされる社会である。使命多様性とアシストをリスペクトする社会。こんな視点がもっと増えればいい。