今後ほぼ不可欠となる高性能AI
GPT-4は「大規模言語モデル(LLM)」と呼ばれる自然言語処理システム、つまり高性能AIだ。ユーザーが単語や文を入力すれば、それに対して多様で筋の通った文章が返ってくる。GPT-4もChat-GPTに利用されている旧モデルも、開発を手がけたのはOpenAIという名の研究機関だ。2015年の設立時にOpenAIが掲げた使命は、最先端の高性能AIツールを大勢の人々が直接自分の手で利用できるようにすることだった。
現代人の行動は、仕事でもそれ以外でも、情報を処理して実行に移すことが大半を占める。そこにGPT-4の助けが入れば、スピードは飛躍的に上がり、行動できる範囲と視野も広がる。今後数年以内に、このツールはほとんどの専門職をはじめ様々な職種で、ほぼ不可欠な助手となるだろう。GPT-4なしには仕事も遅く内容も薄くなり、周りに対して大きなハンデを背負ってしまうのだ。
GPT-4は高度に文脈を踏まえた新しい検索ができるだけでなく、アイデア出しや制作作業の支援ツールとしても極めて多用途に使える。ユーザーのスキルがどの程度であっても、GPT-4はその人の能力と生産性を高められるので、初心者からプロまでどんな人にも役に立つ。つまるところ、GPT-4は、インターネット、モバイル機器、クラウドコンピューティング、データ分析といった、この30年間の最重要技術を巧みに活用し、常にアクセスできるAIの多様な力を何億人もの手に届けるテクノロジーなのだ。
GPT-4は意識を持たない
GPT-4は、様々な文脈で適切な文章を生成する能力を急成長させてきた結果、いまや人間に似た知性を備えているようにも見えつつある。しかし、GPT-4は意識を持たない。それを認識しておくことこそ、GPT-4をいつ、どこで、どのように使えば最も生産的かつ責任ある使い方ができるのかを理解する鍵だ。
本質的にGPT-4は言語の流れを予測している。インターネット上に公開されている膨大な量のテキストから、個々の意味単位の間に存在する最も一般的な関係を認識するよう学習したLLMは、ユーザーのプロンプトに対して、文脈上適切で、わかりやすい表現で、事実に沿った返答をかなりの確率で生成できる。
しかし、一方で、事実と異なる内容、明らかに意味をなさない発言、あるいは実際には根拠のないデタラメを返してくることもある。いずれの場合も、すべて計算とプログラミングに過ぎないのだ。LLMは、少なくとも今のところは、常識的な推論をしたり世界の仕組みを考えたりするための事実や原理までは学ばない。質問をしても、やり取りの目的についてLLMは何も理解していない。LLMは生成する回答について事実関係の確認や倫理的判断をしているわけではなく、入力されたプロンプトの単語の並びに対して回答すべき内容をアルゴリズムで推測しているだけだ。
GPT-4をどうやって活用すべきか
GPT-4を使えば、使わない場合よりもはるかにゴールに近いところからスタートできる。GPT-4がそのように役立ってくれるのは、Wikipediaや従来型の検索エンジンなどの既存の情報源とは大きく異なる方法でウェブ上の情報を手に入れて合成する能力があるからだ。膨大だが構造化されていない知識や様々な表現を、より結びつきの強い相互運用可能なネットワークに組み込むおかげで、私たちは人類が集合的に備えるアイデアや効果をもっとうまく組み合わせられるようになる。
GPT-4は、生産性を最大限発揮して作動するために人間の「注意、好奇心、責任」を必要とする「ツール」である。人間が一切の管理や関与をせずにGPT-4にすべての作業を行わせれば、その能力は落ちる。しかし、人間がGPT-4を助手やパートナーとして扱うことでその能力ははるかに上がる。GPT-4の文章生成能力、効率性、合成能力、拡張性と、人間の創造性、判断力、指導力が融合するのだ。
悪用される可能性もゼロではない。それでも、GPT-4が可能にするあたらしい世界の中心に人間が立つことで、全体として最良の解を導くための最も健全な公式が得られる。この場合、GPT-4は人間の労働や主体性を奪うのではなく、人間のの応力を高めてさらなる繁栄をもたらすはずだ。
これから私たちは、GPT-4をはじめとするAIにより、あらゆる業界の動向や働き方、キャリアパスに大きな変革が起きるのを目にするだろう。自らのワークフローに、最も革新的かつ生産的な方法でAIツールを組み込む方法を見つけた企業や職種、個人が最高の成果を上げる。逆にこの変化に戦略的に適応できない者たちは、変わりゆく市場の中で、存在価値や競争力を維持するのに苦労することになる。
今この瞬間に最も良い方向に舵を切るには、前向きな視点が必要だ。かつてフォードのモデルTやAppleⅡを受け入れた時と同じような気持ちで、AIを受け入れるべきだ。これまで、革新的な技術は常に未来の仕事を生み出してきた。それはきっと今回も変わらないはずだ。