富を築くために何より重要なのは、株を買い続けること
「ジャスト・キープ・バイイング」とは、収益を生み出す様々な資産を継続的に購入することだ。細かな戦略はそれほど重要ではない。何より大事なのは、「どんな金融資産をいつ、いくらくらい買うべきか」ではなく、ただひたすら買い続けることだ。家賃や住宅ローンを払うのと同じように投資を習慣にし、食料品を買うように頻繁に金融資産を買うだけだ。
正式には、このアプローチは「ドルコスト平均法」として知られている。
分割投資より即一括投資の方がパフォーマンスが高い
投資判断の指針となるのは「ほとんどの市場は、ほとんどの期間、上昇している」という情報だ。米国市場だけでなく、世界中の株式市場は長期的にプラスの傾向を示している。この経験的証拠は、私たちができるだけ早く投資すべきであることを示唆している。なぜなら、投資を遅らせるほど、いざ投資する時に高い価格を払わなければならなくなるからだ。だからこそ、最適な投資時期を待つのではなく、今できる投資を思い切ってすべきなのだ。
「即一括投資(投資資金すべてを一度に投資すること)」と「分割投資(時間をかけて少しずつ投資すること)」を比較すると、概して分割投資の方がパフォーマンスが低い。分割投資は即一括投資を平均で1年当たり4%下回っている。この24年間で分割投資が即一括投資を下回る割合は76%にもなる。分割投資が即一括投資を大幅に上回っているのは、大きな市場暴落が起こる前のピーク時だけである。
神でさえドル・コスト平均法には勝てない
1920〜1980年のいずれかの時点から、米国株に40年投資したとする。投資法は次の2つ。
- ドル・コスト平均法:毎月40年間投資する
- バイ・ザ・ディップ(押し目買い):毎月貯金して相場の下落時のみに買う
この2つを比較すると、40年という期間の70%以上で2のパフォーマンスが1を下回る。つまり、底値がいつかをあらかじめ知っていたとしても、ドルコスト平均法には勝てない。2は、あらかじめ深刻な下落が近づいているのを知っていて、完璧に予測できる場合にのみ機能する。
つまり、底値を待って現金を貯める意味はないのである。つまり「ジャスト・キープ・バイイング」(ドルコスト平均法)の方がはるかに優れた投資法なのである。そして、できるだけ早く、頻繁に投資すべきという結論が導き出される。これは時間や場所を超える原則である。
投資の「不運」を軽減する方法
歴史を振り返ると、株式市場は大きな波があり、変動を予測するのは容易ではない。1910年以降にS&P500に投資した場合、どの年代に投資していたかによって、10年間にわたって毎年のリターンが最高で+16.6%、最低で-3.1%になることもある。だが、期間を30年間に広げると、年率リターンの差は、はるかに小さくなる。
長期的に投資額をつぎ足していくと、次第に投資したお金の量が増えていくので、投資期間全体のうち後半のリターンが重要になってくる。引退が近づき、老後生活に入る時期にリターンが大きくマイナスになると、資産が大幅に減る可能性がある。幸いこの時期に1、2年市況が悪い年があっても、老後に大きな影響はないことが研究によって示唆されている。但し、10年続くと大きなダメージになる可能性がある。
投資では運がカギを握っているのは事実だ。だが、思っている以上に、自分の将来のファイナンスはコントロールできる。市況のマイナス面を回避する方法は次の3つ。
- 低リスク資産に分配投資する
- 市場の低迷時は、資産の取り崩し率を減らす
- パートタイムの仕事をして収入を補う
相場の変動を恐れるな
リスクを避け続けている人は、何年経ってもリターンを得ることはない。だが、それはリスクを取りすぎたのと同じくらいダメージを被る可能性があることだ。もし投資によって資産を増やすことを望むのなら、ボラティリティと周期的に訪れる資産の下落を受け入れなければならない。これは、長期的に投資で成功するための入場料なのだ。
株の最大下落率が5%以上の年には、全資産を債券に移し、それ以外の年には全資産を株式に移すとする。これを1950〜2020年にかけて、毎年1ドル投資を続けた場合、投資を続けて一度も退場しなかった場合に比べ、資産は9割も少なくなる。これは市場を退場している期間が長すぎるからだ。つまり、5%以上の下落率を回避しようとするのは慎重すぎることになる。
資産を最大化するために回避すべき下落率は最大15%超だ。株価が最大15%超下落する年には債権に投資し、それ以外の年には株式に投資することで、資産を最大化できる。但し、それがいつ発生するのかを正確に知るのは不可能だ。そのために、私たちは分散投資ができる。