給料 あなたの価値はまだ上がる

発刊
2023年6月15日
ページ数
320ページ
読了目安
576分
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会社はどのように給与を決定するのか
スターバックスやナイキなどのグローバル企業で、給与決定の仕組みづくりに関わってきた著者が、企業側がどのように報酬制度を設計し、どのように給与を決定するのかを解説。
その上で、給与を受け取る側は、どのように自分の価値を評価し、会社側に公正な給与を求めれば良いのか、その戦略を紹介しています。

会社がどのような仕組みとロジックで給与を決定するのか、そして公正な給与を実現するには、会社、従業員はどのように対処しなければならないのかが理解できます。

あなたの価値はどう決まるか

自分の価値を知るには、まず会社の目で見た自分の職務とは何かを知ることだ。最低でも、職務記述書には、会社での自分の立ち位置を理解するのに役立ついくつかの基本的な要素が必要になる。基本は、職位によって異なる職務の肩書、ジョブファミリー、ジョブレベルだ。職務記述書が古びて見えるほど、給与が公正かどうか心配しなければならなくなる。自分の職務記述書が、実際にやっている仕事と一致していることを確認すること。それが給与の基準となるからだ。

 

自分にとっての公正な給与がどのあたりかを判断する前に、給与範囲の仕組みを知る必要がある。給与範囲とは、ある職務について可能な報酬額のことで、その職務に就く人には決められない。給与範囲には、最小値、中間値、最大値がある。給与範囲は、1つのジョブレベルから次のジョブレベルへと、適切な段階を踏んで上がり、「給与構造」を形づくる。
あらゆる人は職務とレベルに応じた範囲内で給与を支払われるべきだが、一部の企業には、特定のグループの人たちに最大値以上あるいは最小値以下の給与を支払うことを許容している。こういう例外には常に曖昧な政治的逸話があり、従業員にとっては決して望ましくない。自分がその立場にあるなら、なぜ、いつまで自分の給与が範囲から外れているのか尋ねてみるべきだ。給与範囲の最小値より低い給与を払うことは、どんな理由であれ受け入れられない。

会社は同じ職務に就く熟練した人や未熟な人を含め、システム全体の給与を最適にしようとしている。自分が給与範囲のどこに位置するのかが重要になる。

 

給与範囲をどうつくるか、その人の給与をどこに配置するか、その人の可能性と昇進を支えるためにどんな選択をするかは、公正な給与のパズルにとって重要なピースだ。誠意ある給与を念頭に置いて運営されている企業は、これらのピースがどのように合わさるのかを従業員に示し、いくらの給与をなぜ支払うのかを説明し、給与の決定についての釈明や間違っていた場合の調整を求められた時も差し障りのない環境をつくっている。

 

会社がどのように職務の価格を決め、給与範囲をつくっているかを理解することは、自分自身の公正な給与の戦略を立てる重要な第1歩だ。

 

昇給を求めるための戦略

給与設定の枠組みを理解すれば、いつどのように昇給を求めるか、あるいは会社のやり方を変えさせるかを決めるための、状況に合わせた戦略が立てられる。

一方、企業は公正な給与を実現するためにどれほど大きな役割を担っているかを認識する必要がある。給与についての情報や会話のギャップを埋めようとする従業員の手助けをすれば、企業の競争力はさらに高まる。すべての企業は従業員に、できるだけ多くの時間、最も付加価値の高い仕事に集中してもらいたいはずだからだ。

誠意ある給与がうまく機能するようなモデルをつくって維持するには、給与を与える側と受け取る側の両方が、独自の「4P」を通じた意志決定をすることだ。これを「フェアペイ・ミックス」と呼ぶ。以下のそれぞれのPが給与の問題を解決するための新たな視点を与えてくれる。

 

①プロセス(Process)

年次評価や雇用、昇進慣行など、会社が従業員の給与の設定や増額をするために行う継続的な維持活動のこと。プロセスを使って昇給を主張するには、まず会社のカレンダーとプログラムを知り、声をあげなければ長期的に給与がどうなるかを評価することから始める。もし会社のプロセスが不備なせいで、実際の給与と得るべき間に重大な隔たり(10%以上)があることを示せるなら、会社に昇給とプロセスの修正の両方を提案して構わない。

 

②許可(Permission)

昇給を求めてもよいとされる最も一般的な許可の機会は、昇進した時と雇用された時だ。このタイミングでは、従業員が発言することを会社は予期している。会社はすでにキャリアに対する投資する決断を下したのだから、機会を逃すことなく、公正な給与を求める主張をすること。昇進する際には、新しい職務で自分が給与範囲のどこに位置するのかを必ず尋ねるべきだ。

 

③優先(Priority)

「優先」を使った主張は、会社を大改革する必要がある時に行う。そのような状況では、会社に内省を促して、公正な給与を優先するよう説得しなくてはならない。もし、人事チームが役に立たないばかりか、CEOに公正な給与を真剣に受け止める意志がなければ、個人が会社の優先順位に影響を与える能力には限度があるので、あとは集団が頼りになる。最後の「力」が登場する。

 

④力(Power)

給与に対する力を行使する状況は、次の3つがある。

  1. 給与について質問がある場合:大人数の職務では全員のための給与プログラムに注意を向けさせる
  2. 外部の会社からのオファーがあった場合:会社のプロセスのまずさを示す証拠として捉え直す
  3. 団体交渉協定がある場合:団体交渉力を使って変革を求める