コンセプトとは
コンセプトの一般的な定義は「全体を貫く新しい観点」と説明される。現代のビジネスにおいて、その成り立ちの中心を捉えられるのは「何のために存在するのか」を示す言葉である。即ち、コンセプトメイキングとは新たな意味を創造することなのである。コンセプトは、次の3つの役割を持つ。
- 意思決定のための明確な判断基準になる
- つくるもの全体に一貫性を与える
- 顧客が支払う対価の理由になる
人はモノに意味を見出すことで価値を感じる。コンセプトとは「価値の設計図」だと言える。
機能するコンセプトの条件
機能するコンセプトには、次の4つの条件が必要である。
①「顧客目線」で書けているか
「誰を」「どのように幸せにするか」を顧客目線から明確にする必要がある。
②「ならでは」の発想はあるか
チーム独自の「ならでは」と呼べる発想を見つける必要がある。強く好かれるためには、嫌われることを恐れてはいけない。
③「スケール」は見込めるか
そのコンセプトで、ビジネス目標を達成できるボリュームを担保できるか検証していおく必要がある。
④「シンプル」な言葉になっているか
言葉がシンプルでなければコンセプトは機能しない。簡単に理解でき、覚えられる、流通するよう、できる限り短く発話しやすい言葉で表現する必要がある。
コンセプトを導く「問い」のつくり方
コンセプトの半分は問いづくりで決まると言っても過言ではない。いいコンセプトを導くためには、筋のいい問いが必要不可欠である。筋のいい問いの性質は、「自由度 × インパクト」で表現することができる。
次々と発想が生まれてきたら「自由度」が高い問いである。反対に筋の悪い問いは、答えの選択肢を極端に狭めてしまう。「インパクト」には、多くの人に影響を与える「広い」インパクトと、その人の人生を変えるような「深い」インパクトの2種類がある。
問いを変えることで視点を変え、視野を広げ、それまでになかった領域での思考を導くことを「リフレーミング」と呼ぶ。枠組みを変えることで、解決策の幅は劇的に変化する。リフレーミングを実践するには、次の8つの問いをすり替えながら視点を切り替えて行う。
- 全体の問い:部分より全体で解決するなら?
- 主観の問い:あなただけの偏愛やこだわりは?
- 理想の問い:目指すべき理想の変化は?
- 動詞の問い:その行動を再発明するとしたら?
- 破壊の問い:破壊すべき退屈な常識は?
- 目的の問い:それを手段にしたら目的は何?
- 利他の問い:それで社会はどう良くなるの?
- 自由の問い:(直感で7つの手順には収まらない問いを書く)
顧客目線で設計する「インサイド型ストーリー」
「問い」ができたら、ストーリー形式に当てはめながら解を考える。顧客目線のストーリーとは、「顧客を救済する物語」である。次の4つのCをつなげて物語にする。
- Customer(インサイト):ユーザーが困っている
- Competitor(競合):しかし、誰も助けない
- Company(自分だけのベネフィット):そこで、私たちが「こんな手」を差し伸べる
- Concept(新しい意味):つまり、これが解決策
・インサイト(言語化されていない、まだ満たされていない欲求)
インサイトを見つけるには「AだけどB」という矛盾する2つの心理の中に見つかる。
ex.手間をかけたくない × 手抜きはしたくない = オイシックス
・競合
次の3つの視点から、競合の弱みと顧客に対する手ぬかりを見つける。
- カテゴリー:同一カテゴリーの競合は誰か
- ジョブ:同じ仕事を成し遂げる競合はどこにいるか
- タイム:同じ時間を奪い合う競合は誰か
・カンパニー
商品・サービスの強みを分析する際は、次の3つに仕分けて考える。
- ファクト:その商品やサービスが持つ揺るぎない客観的事実
- メリット:ファクトがもたらす一般的な便益
- ベネフィット:ターゲットに特に強く訴える便益
未来目線で設計する「ビジョン型ストーリー」
顧客は本当に欲しいものを言葉にできない。だからこそ、つくり手がまず先に価値あるものをつくり提示する方法が、未来目線で物語るビジョン型ストーリー設計である。
コンセプトはビジョンへと向かう第一歩として「現在」に記述される。
- 創業:ミッション(担い続ける社会的使命):何のために生まれたのか
- 現在:コンセプト(価値の設計図):今、何をつくるのか
- 未来:ビジョン(目指すべき理想の未来):何を目指すのか
物語る際には、これらを①ミッション(そもそも)、②ビジョン(いつか)、③コンセプト(そのために今)の順番に並べる。
インサイト型とビジョン型は、本来どちらも考えるべきものである。コンセプトは顧客のインサイトに応えるものとして、そして組織やチームのビジョンを叶える一歩目として、2つの目的のために設計されるものである。