コミュニティとは
デジタルの世界で良く用いるコミュニティとは、デジタル・ITに関わる共通の目的意識をもとに、企業が提供する、自己研鑽や情報交換をするための仮想・物理的な場や集団をいう。企業は、ユーザーといかにコミュニケーションを確立し、その声にスピーディに対応することができるかが問われる。そのため、企業はコミュニティを運営したり参加することによって、ビジネス上の競争力を確保していくことが求められている。
コミュニティには、およそ次の2つの形態が存在する。
①企業内コミュニティ
デジタル技術を活用し、自社のDXを推進するため自社のデジタルスキルを醸成していくもの。企業各々でのデジタルスキルの醸成や底上げを目的に、特定IT分野、サービスなどの勉強会等を実施する。大企業では部門同士の交流やベストプラクティスの横展開を目的に、成功事例の共有会も実施される。
参加メンバーはデジタルスキルや知見の獲得に意欲的な人が多く、一部のリーダーにより自発的に組成されることがほとんどである。
②ユーザーコミュニティ
ITソリューション・ベンダー自らが自社製品・サービスのファンと共に友好的な関係を構築していくもの。既存ユーザー企業に対して、最新の情報を届けたり、ユーザーに主に事例などの情報を発信する場を提供したり、新規ユーザー企業を獲得するため、セミナーやイベントなどを実施する。特徴は、ほとんどがオフィシャルにコミュニティマネージャーが設置され、予算や体制も用意されることである。
コミュニティ立ち上げ時の6つの鉄則
コミュニティの成功を決める、立ち上げ時の重要なポイントは次の6つである。
①「越境」を目的要素として取り入れること
DXでは、いわゆる「企業内個人」がそれぞれ「越境」を意識して活動していくことが不可欠である。企業、部門、役割、物理的ロケーションなどの様々な枠を飛び越えて情報をやり取りし、自社にとって最適なデジタルサービスを選択し競争力を高めていくことが求められるからである。
②レアなテーマ設定をすること
コミュニティが持つべき活動テーマ、将来のゴールを設定する。コツは2つ以上の要素を組み合わせること。
ex.「金融業界に特化 × テクノロジーを学び共有する」
このテーマは、ビジネス領域でレアであることが重要である。ありきたりな掛け合わせのテーマだと、既に外部に存在していることが多々あるので、スケールしない。
③参加メンバーが何かしらのギフトを得られること
参加者が、コミュニティ活動を通して何を得ることができるのかを明確にしておく。
④立ち上げ当初から自走までの熱量を設計すること
発起人は、1〜2年もしくは数人のリーダーが育つ段階まで、支部や分科会レベルまで細かくサポートすることが肝要である。オンラインベースで、容易に希薄な関係性になってしまいがちだからこそ、細やかなコミュニケーションを継続していくことが重要である。
⑤コミュニティマネージャー(中心人物)の後継者を意識すること
強烈なリーダーシップを持った人が発起人として推進し、活気のあるコミュニティであればあるほど、そのリーダーが脱退した後に衰退の道を辿る。後継者を考慮しつつ運営すること。
⑥スポンサーを見つけ予算を確保すること
予算が付いているということは、単なる活動資金があるということではなく、そのコミュニティが所属企業の戦略上必要なものとしてオフィシャルに認められていることと同義である。コミュニティに日々貢献してくれている社内外のメンバーのモチベーションにも深く影響する。予算の獲得活動は、初期段階から継続的に取り組んでいくべきコミュニティマネージャーの必須タスクと言える。
役割設計
コミュニティの目的が定まれば、必要最低限の機能とオプショナルな機能を洗い出す。そして、それらを担ってくれる仲間がどのくらい必要なのかを想定し、協力を募る。
これは企業内コミュニティ、ユーザーコミュニティそれぞれに共通する事項であり、初期段階で明確にイメージを持っておくべきことである。「何に協力が必要か」を知ることで、自分たちに現時点で不足している要素を早期に発見することができる。
立ち上げ時にセットする主な役割には次のようなものがある。
- 発起人:発起人は2名程度がベスト
- アンバサダー:公式非公式問わず宣伝広告する人
- コミッティメンバー:速やかに意思決定するための少人数のグループ
- スポンサー:価値を生み出し続け、運営を継続するにはスポンサーと予算の獲得は不可欠
- フォロワー:初期段階から確保できていると初動が素晴らしいものになる
プロセスとツール
それぞれの役割に適切な人材をアサインできたら、活動していくにあたっての目標数値や活動場所、必要最低限のツールなどを整備していく。
- KPIやOKRなどの目標を設定する
- 予算を確保するためのアウトプットイメージをつくる
- コミュニケーション導線を設計してみる
- コミュニケーション導線を具現化するツールを準備する
- 「行動規範」を用意する
- 参加メンバーを守る「会則」を定める