ポール・ランドのデザイン思想

発刊
2014年12月26日
ページ数
96ページ
読了目安
34分
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美しさと目的に適うこと
IBMのロゴなどを手がけた、20 世紀を代表するグラフィックデザイナー、ポール・ランドが、広告デザインの原則について書いた本です。デザインの本質について、その思想が書かれています。

グラフィックデザインとは

グラフィックデザインとは、見る者に美しいと感じさせるもの。物の形や2次元空間の特性を利用するもの。記号論、サンセリフ(ゴシック体)の活字、幾何学を駆使するもの。コンセプトを抽象化したり、変形したり、変換したり、回転したり、拡張したり、繰り返したり、反映したり、いくつも集めたり、再編成したりするもの。
だが目的に適っていなければ優れたデザインとは言えない。

 

グラフィックデザインとは、動的均斉や非対称性を想起させるもの。きちんとまとまった1つの構造になっているもの。直感、あるいはコンピューター、創意、あるいは座標系によって生まれるもの。
だが見る者にメッセージを伝えられなければ、優れたデザインとは言えない。

メッセージをヴィジュアル化して人に伝える場合、ひと目で発信者の意図が理解されなくてはならない。それがどんな方法でも、相手に何か主張したいのか、それとも情報を提供したいのかにかかわらず、大勢が目にする広告掲示板から個人的な出産報告に至るまで。つまり、美しく、目的に適っていなければならない。

 

創造力と表現

アイディアがありきたり。また、そのせいで独創性のない作品に仕上がる。それは扱う対象のせいではなく、命題への取り組み方が間違っている可能性が高い。適切な答えが導き出されていないと、対象の美点がうまく伝わらない事がある。

 

イギリスの画家ロジャー・フライは、扱う素材とデザインの組み合わせ方についてこう述べている。「ある素材にデザインを加える場合は、次の事を心に留めておけば、素材とデザインの相乗効果を期待できるかもしれない。素材そのものを、あるいはデザイン性を目一杯強調するのではなく、直感的な情報はあまり与えず、見る者の想像力をかき立て、説明するのではなく感じさせる事によって心を動かすのだ」。

 

美意識が感じられなかったり、現物を見たまま表現したりしたヴィジュアル・メッセージは、知的好奇心をかきたてる事がなく、見た目の面白みにも欠ける。同様に、活字書体・幾何学模様・抽象的な形を不用意に使うと、自己満足だけの作品になりさがる。反対にアイディアの本質を表現するために試行錯誤した結果、あるいは目的意識・独創的な発想・分析判断から生まれたヴィジュアル・メッセージは、斬新であるだけでなく、有意義で印象的である。

 

美しく、目的に適うこと

歴史的にも証明されているが、美しさと実用性が両立していないと、そしてコンセプトが制作物に反映されていないと、美的価値は生まれない。同様に、美学を全く考慮しなかったり、芸術家が作品に全面的責任を負わなかったり、一人でやるべき事を細かく分担したり、複数のお偉方の意見だけで制作したり、創造の工程をきちんと踏まなかったりすると、将来的には、作品の価値だけでなく、制作者の価値も下げてしまう。

美しさと実用性は、互いの存在によって生まれる関係が理想だ。過去においてはただ美しいだけの物はほとんどなかった。シャルトル大聖堂の壮麗なステンドグラスはパルテノン宮殿やクフ王のピラミッドと同様に、きちんと役目を果たしている。すばらしいゴシック様式の大聖堂の外装は人々を中へと誘い、内部のバラ窓は神聖な雰囲気を醸し出すのだ。

 

デザイナーの命題

デザイナーは通常、先入観を持って作業に取りかかる事はない。むしろ、緻密な調査と観察の結果アイディアが生まれ、そのアイディアを元にデザインをする。そのため、デザイナーが自分に課された命題に対する適切な答えを見つけるには、どうしてもある種の思考プロセスを経なければならない。

意識してか否かはともかく、デザイナーは分析し、解釈して、考案する。デザイン業界、その関連業界における科学的・技術的進歩を常に意識していなければならない。即興で、工夫して、あるいは発見により、新しい技法や組み合わせを生み出す。

 

デザイナーが扱う要素は大きく3つに分類できる。

 

①与えられる物・条件
(製品、宣伝文句、商品コンセプト、ロゴマーク、体裁、媒体、制作行程など)

②作品の見た目に関わること
(スペース、コントラスト、バランス、調和、調子、繰り返し、シルエット、まとまり、形、色、重さ、分量、価値、質感など)

③心理的な要素
(美意識や錯覚についての問題、デザイナーの責任感、見る者の直感や感情)

 

与えられた素材が適当でなかったり、曖昧だったり、面白みがなかったり、さもなければ視覚的メッセージを発信するのにふさわしくなかったりする事もしばしばあるので、デザイナーは命題を考え直したり、別の表現方法を模索したりしなくてはならない。具体的には、与えられた素材のほとんどを切り捨てる、あるいは変更するといった作業だ。デザイナーは分析する(入り組んだ素材を、どのように、なぜ、いつ、どこといった単純な構成要素にまで分解する)事から、命題に対する答えを探し始める。