TALENT 「人材」を見極める科学的なアプローチ

発刊
2023年4月21日
ページ数
480ページ
読了目安
510分
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本当に必要な人材を見極め採用するための方法
学歴偏重主義による従来の採用アプローチでは、本当に自社に適した人材を採用できるとは限らない。
そもそも仕事で成果を上げるために必要な才能とは何なのか。

本当に優秀な人材を特定するための基準、面接方法、質問の仕方、勧誘する方法までを紹介している一冊。人材の才能について、科学的エビデンスも検証しながら、人材採用のあるべき考え方とノウハウが書かれています。

隠れた人材を探せ

行き過ぎた学歴偏重主義による従来のお役所的な人材探しのアプローチは、学歴や階層、コンセンサスにこだわるため、アウトサイダーにより良いチャンスを与える上で、理想とはほど遠い。昔から現在に至るまで、最も生産性の高い人々が必ずしも最も適した仕事に就けるとは限らない。今も昔も人材を十分に活用できておらず、才能を無駄にしている。

 

過小評価されている人材を見出すことは、個人的、組織的に優位に立つための最も有効な手段の1つであり、それが人材探しの実用的価値だ。大企業なら高い報酬を提示して「見るからに」優秀な人材を雇うことができる。しかし、小規模な企業の場合、大手と肩を並べるのはなかなか難しいだろう。やる気に満ちた忠実な唯一無二のチームをつくるには、これまで見落とされていたキャリア後半の女性や目立たないはみ出し者のプロデューサー、隠れた天才を的確に選び出すのが一番だ。

 

面接における質問の方法

・人格は週末に表れる

人材に関して的確な質問をすることは非常に重要だ。特に高いランクの求人の場合、余暇に関する質問は不可欠だ。い一流のパフォーマーは長い間練習を休んだりしない。相手の話や様子から、余暇に何かの練習やスキル磨きをあまりしていないように感じたら、非常に高い期待に応えたりできる器ではないだろう。

 

・事前に準備されがちなストーリーについては質問しない

わかりきった質問は、わかりきった回答を引き出してしまう。前職における成功や失敗に関する質問をしてはいけない。候補者が一緒に働きやすいタイプがどうかも聞かないこと。どの候補者もこの手の質問については回答を準備しているからだ。

 

・雄弁さを過大評価してはならない

ほとんどの人は、言葉遣いが上品で雄弁な人々を高く評価しがちだ。このことを常に念頭に置いておくこと。でないと、口達者だが実力のない人物を採用し、貴重な創造的才能のある人を見落としてしまうかもしれない。

 

・メタ質問で相手の自己認識を確認する

小さいスケールの質問をするよりも、より大きい視野で捉えた方が役に立つことが多い。例えば、候補者は自分自身や世界における自分の位置についてどのくらいよく理解しているか。

「あなたが信じていることの中で、最も理屈に合わないことは何ですか」といった質問は、回答者の自己認識についての説明を求める。回答者がいくつの文化的、知的世界に精通していて、自分自身の視点をどれだけ理解しているかを確かめる。候補者がどれだけアイデアに精通し、異質な視点をどれくらい早く理解できるかテストする。

 

人材にIQは必要か

発明家を探している場合、他のどの測定可能な変数よりもはるかに重要なのはIQである。その上、IQの測定値が高くなるほど、発明家である可能性が一層高くなる。しかし、医師や弁護士など他の主要な専門職に関しては、IQが及ぼす影響はずっと少ないことが証明されている。

市場の頂点においては、知能その他の才能を持った人物を見つけることが比較的重要である。しかし、対象とするのが一般の人々の場合、実績と成功に及ぼす知能の影響は少ない。他の要素はほとんど考慮せずにIQの高い候補者を探すのは才能ある人材を見つける上で良い方法とは言えない。

 

ほとんどの人はある種の頭の良さに価値を見出すため、明らかに頭のいい人々を求めていたら、彼らに最高の金額を支払うことになる。しかし、明らかに頭のいい人々が、必ずしも明らかな掘り出し物だとは限らない。一般的に危険なのは、知的な人ほど知能を過大評価しがちだということである。

 

文脈によって必要な特性は異なる

シリコンバレーのベンチャーキャピタルが性格の評価によく使っているものに「ビッグファイブ理論」がある。これは、人間の性格を最もシンプルで感覚的に理解できる説明的要素(五つの因子)に要約することを目的としている。

  1. 神経症傾向
  2. 外向性
  3. 開放性
  4. 協調性
  5. 誠実性

 

これらの性格特性について、どれが良いか悪いかを条件反射的に判断すべきではない。これらは特定の仕事について、特性の組み合わせが望ましいかどうかで判断しなければならない。但し、性格特性は測定が難しく、面接で見抜けるとは限らない。

ビッグファイブ理論は性格について考え始めるための総合的な手引きとなる。この理論は、本当に重要なのはどの特性かという持論に直感が流されないよう、牽制してバランスを取る役割も果たす。

 

本当に重要な特徴は何か

特にトップレベルの人材を探している場合、過小評価されがちな概念が「スタミナ」である。最も成功した人々は、他の人よりもはるかに多くのエネルギーとスタミナを持っている。

スタミナは「GRIT(やり抜く力)」と比較するとわかりやすい。GRITは「個人的に意義のある長期目標を達成するための情熱と粘り強さ」と定義されている。GRITの特徴の1つは、情熱ではなく「努力の粘り強さ」であるが、これはスタミナの概念に近い。

スタミナは、短い時間面接しただけでは判断が難しい。そのため「人格は週末に表れる」という質問をする必要がある。