DRINK あなたが口にする「飲み物」のウソ・ホント

発刊
2023年4月5日
ページ数
408ページ
読了目安
593分
Amazonで購入する

Amazonで購入する

飲みものに関する科学的な研究結果
水やお茶、コーヒー、お酒など、様々な飲みものについて、科学的に研究された内容を紹介している一冊。
お茶やコーヒーが本当に健康に良いのか、アルコールが身体に及ぼす影響など、その飲みものにはどのような成分が含まれており、それがどのように健康に影響するのかがまとめられています。
一通り読むと、飲みものについて詳しくなり、明日から何を飲むかを考えるきっかけになります。

飲みものとは何か

食べものについては、何を選ぶか、それが健康にどう影響するかを深く考える人は多い。しかし、飲みものに同じくらい注意を払う人はおそらく少ないだろう。それが単なるグラス一杯の水であろうと、起き抜けのエスプレッソであろうと、すべての飲みものは、私たちの体に何らかの形で影響を与える。

 

口から飲み込んだ液体は、食道から胃を通って腸に到達し、そこで水分の大半が吸収される。ただ、飲みものに含まれるタンパク質や糖質をはじめとする一部の栄養素については、小腸を通じて血液中に放出可能な状態まで分解する必要がある。お酒に関して言えば、そのアルコールの大半は胃壁を通じて血液中に入る。血液が肝臓に移動すると、そこで栄養素が処理・貯蔵され、さらに有害物質も大半は分解される。そして、必要に応じて、血液内に保持された残りのミネラルや栄養素はその後、血流に乗って体内をめぐり代謝され、様々な効果を及ぼす。最後に残ったものは腎臓に辿り着き、老廃物が濾過され、尿として体外に排出される。

 

水は、体の大部分の機能に関わっている。体の約6割は水分でできていて、体重70kgの人であれば全部で約42ℓの水分が含まれていることになる。そして体からは日々、大量の水分が失われるため、脱水症状にならないよう補給する必要がある。

デスクワークに就いている成人であれば、1日2〜3ℓほどの水を消費する。体は特定の栄養素を処理してエネルギーを得る際に、副産物として1日約250〜350㎖の水を生成するが、それ以外の水分は食べものや飲みものから摂取している。摂取した水分の内、2〜3割が食べもの、残り7〜8割が飲みものによるものだと推定される。そして、日々、主に尿(1〜2ℓ)、便(200㎖)、呼吸(250〜350㎖)、汗(450㎖)などで水分を失っている。皮膚や肺から失われる水分量は気候や温度、湿度によって変わる。

では、水分の補給に際して、気をつけるべきことは何か。とりあえず、砂糖やアルコールなど、体に良くないものが含まれていないという点で、水が特に好ましいのは確かだ。それでも、アルコール飲料を除いて、ほぼすべての飲料が水分補給に役に立つ。お酒にも水は含まれているが、尿の排出を促すので、体内から失われる水分の量が増える。

 

水の中に気をつけるべきものは含まれているのか

飲み水に含まれている薬品は不安材料だと言える。世界中の水道には、抗生物質、ホルモン剤、抗うつ剤、鎮痛剤、向精神薬など、色々な薬品が微量ではあるが含まれている。こうした薬品が水道に混入するルートは様々で、私たちの体から排泄されたものだったり、不適切な処分によるものだったり、農業に使われたものだったりする。こうして混入した薬品の内、大半は私たちの元に届く前に分解されるか、浄水処理によって取り除かれる。だが、一部は残る可能性がある。水道会社は現在でも水道水からすべての薬品を完全に取り除くことはできないし、残留した薬品が我々の健康にどのような影響を与えているかもわかっていない。

 

カフェインは本当に体に良いのか

カフェインの様々な潜在的なメリットについては、長年議論されてきた。カフェインを含む飲みものには健康に効果をもたらす可能性があるにもかかわらず、一定量を毎日飲むのが良いと公的に推奨されてはいない。逆にカフェインには有害な副作用があることが知られているので、摂りすぎを防ぐために摂取量が制限されている。カフェインを摂りすぎると、焦りや不安、心拍数の上昇、頭痛、吐き気などが起きる可能性があり、子供の場合には行動障害につながる場合もある。骨粗しょう症にも関連している。ただ、どの量をもって摂りすぎとするかは、個人の体質やカフェインへの感受性によって大きく変わってくる。とは言え、大半の大人の平均摂取量は推奨量(成人の場合、1日400mg以内)の範疇に収まっているため、あまり心配する必要はない。

 

お茶は健康に良いのか

お茶の抽出物とそこに含まれる特定の化合物は、動物実験では健康に有益だと判明しているが、人間への健康効果については、全体として決定的であるとは言い難い。お茶が、がんや心臓病、認知症、糖尿病、関節炎をはじめとする多くの病気のリスクを減らすかどうかについて、人間を対象にした研究では、一貫した結果が出ていない。不確定要素があまりに多いせいで、お茶の健康効果を特定するのが難しくなっているようだ。

 

コーヒーは健康に良いのか

多くの観察研究によると、普段からコーヒーを飲むと早死にするリスクが下がるという。さらに、コーヒーは特定のがんの発症リスクを抑える可能性が高いという結論が出ている。コーヒーを常飲すると心臓に悪影響があるという声も一部にはあるが、科学的な裏付けがない。メタ分析からは、コーヒーには心血管疾患、パーキンソン病、脳卒中のリスクを低下させたり、2型糖尿病、肝疾患、胆石症を予防するといった効果があることを示す十分な証拠が見つかっている。とりわけ2型糖尿病の発症リスクを下げる効果を裏付ける証拠は有力だ。

現在までの研究結果によると、定期的なコーヒーの摂取が、認知能力の低下防止や認知症やアルツハイマー病の発症リスク低下と関連していることを示す兆候がいくつか見られる。だが、データは確固としたものではなく、エビデンスは現時点では決定的とは言えない。

 

参考文献・紹介書籍