UXデザインはなぜ必要なのか
UXデザインとは「誰かの体験を設計すること」である。元々、アプリやWEBサービスで使われることが多かったUXデザインは、様々な分野で必要になってきている。その主な理由は次の3つである。
- DX
UXデザインが、DXによる「最先端のテクノロジーやデータ、斬新なビジネスモデル」と「それを最終的に使う多様な人間」の架け橋を担っている。 - モノからコトへ
モノはあくまで手段であって、物を売ってどう使うかはお客さん任せでは通用しなくなった。 - サブスク化
売って終わりではなく、利用し続けてもらい、満足し続けてもらわないと成り立たなくなった。
UXデザインの5ステップ
体験を設計することは、映画やドラマの「設計」である脚本作りにたとえ、5つのステップで説明できる。
①体験の主人公の解像度を上げる
物語の主人公に、想定ユーザーや顧客を置く。その上で、主人公がどんな人かを明確にする。主人公の生き様が目に浮かび、映画を作れるくらいに解像度を上げる。解像度を上げる項目は、次の通り。
- 基本的な属性情報
- ライフスタイル
- 情報感度
- 興味関心
第1歩として、どんな課題感を持つ人を主人公にしたいかを言葉にしてみる。課題感は、抽象的になりすぎずイメージが湧くもの、それでいて各論になりすぎず一定の範囲内で普遍的なものにするのがポイントである。
※よく使うツール:ペルソナ、共感マップ
②結末を描く
主人公に最終的にどう感じてもらいたいか、何を実現して欲しいかという、体験を通して提供したい価値を定める。まずは仮置きで、この後のステップを進めながら、戻ってきて加えたり削ったり、徐々に磨いていく。基本は、ステップ1で設定した主人公の課題感を満たす価値を考えること。
※よく使うツール:価値マップ
③シーンを多面的に理解する
結末が描けたら、体験を提供する時、主人公が置かれているシーンを明確にしていく。主人公のどのようなシーンでの体験作りをしていくかで、体験に求められるものは全く違ってくる。シーンを規定するポイントは次の6つ。
- 出来事&タイミング
- 役割意識&想定される影響
- 人の目
- 物理的な環境
- 制約条件
- 期待値&先入観
④あらすじを決める
点としての一瞬の体験だけでなく、その前後まで視野を広げ、線として、時系列で体験を組み立てる。時系列で広く体験を見る必要があるのは、課題の発見がしやすくなること、人の一瞬一瞬の体験のクオリティは前後の出来事に大きく左右されるからである。時系列で並べて整理するのは、次の4つが基本である。
- 出来事
- 顧客の行動
- その時々の顧客の気持ちや思考
- その時々の顧客が接する情報や人や物
こうした体験をあらすじとして時系列で描いたものを「ジャーニー」と呼ぶ。このジャーニーの長さと粒度も大事であるため、状況に応じてチューニングする。
※よく使うツール:カスタマージャーニーマップ
⑤登場人物と小道具を配置する
登場人物は、設計しようとしている体験の中に登場して、主人公の体験や感情に影響を与える人たちのこと。小道具は、主人公が影響を受けた雑誌、テレビ、広告、待合室のソファ、プライバシーを守る仕切りなど。脚本のあらすじ上で、どのタイミングで、どんな登場人物と小道具が、どんな役割で、どんな風に主人公と接するのかを配置していく。
体験を成功に導く22パターン
- 言い訳の提供:何かあった時の「言い訳」を提供すれば「普段はしないこと、できないことができる」という体験
- 所属感アシスト:最適な方法で「居心地」の良さを感じてもらう体験
- ハードル下げ:「お試し無料体験」など、効果的にハードルを下げる
- 罪悪感の転嫁:ユーザーが気づいていない罪悪感を見つけ、それを転嫁する仕組みを体験に埋め込む
- 見えない化:あえて見えなくすることで体験の魅力を高める
- 心のサンクコスト:「せっかく〜したんだから」で継続する力を引き出す
- 自分で決めない:決めるという行為の負担、難しさ、副作用を背負わせない
- 失敗OK:体験に失敗OKという体験を埋め込む
- 難問:プライドをくすぐり、一部の人を引きつける
- トライアル2.0:トライアルできる範囲、方法などの常識を破り、新しい体験にする
- 使う分だけ:使う分だけを特定して分ける
- 理由の説明:ユーザーに納得感を持ってもらう
- プロセス参加:完成に至るプロセスにユーザーを巻き込む
- 使い道の明示:使い道を適切な切り口で開示する
- 診断:ユーザーを理解し、その理解に基づき体験をカスタマイズする
- 応援のリッチ化:応援という体験の質を上げる
- 無名からの育成:貢献の余地がある無名の頃からの応援という体験
- 差からの連帯:差があるからこそ参加できるという体験
- 脱顧客:「顧客だから」と絶対視していた暗黙の前提の意味を見直す
- 貢献の余白:未完成であることが価値になる
- ナラティブ:物語をユーザーが自分を主語にして語り直す
- マイルド参加:気軽な緩い参加が許される