Amazon Mechanism イノベーション量産の方程式

発刊
2021年11月25日
ページ数
336ページ
読了目安
508分
推薦ポイント 6P
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アマゾンの組織としてイノベーションを生み出す仕組み
AWS、Kindle、アレクサ、Amazon GOなど、Amazonでは実は数多くのイノベーションが生み出されている。その背景には、組織としてイノベーションを生み出す仕組みがある。
Amazonのイノベーションを量産する仕組みを体系立てて解説し、どのようにすれば組織としてイノベーションを生み出せるのか、Amazonの裏側を紹介している一冊。

イノベーションを起こし続けるアマゾン

アマゾンの成長の本質を突いた言葉は次の3つ。

  • 顧客中心
  • 発明
  • 長期思考

常に「顧客」を中心にして考え、その満たされていないニーズは何かを追求し続ける。満たされていないニーズを満足させるためには「発明」が必要である。「発明」によりこれまでに存在しなかった大規模なイノベーションを実現していくには、それが既存のサービスや製品の「カイゼン」「進化」による持続的イノベーションでない以上、「長期思考」がなければならない。

 

アマゾンで、何らかの計画や目標を立てる時には、必ずそれを実現するためのプランやメカニズムが伴っていなければならない。プランやメカニズムが伴わない形で、例えば「来期は売上を10%伸ばします」と宣言しても、「それはグッド・インテンション(よき意図)だね」と言われてしまう。「よき意図」とは「実現根拠のない望み」ということである。つまり、プランやメカニズムがない目標は「夢」と変わらない。
アマゾンは、ビジョンを「グッド・インテンション」で終わらせないために、イノベーションを起こし続けるメカニズムを創業した時から作り続けてきた。

 

「普通の社員」たちを起業家集団に変える仕組み

①「PR/FAQ」で「逆方向に思考する」

アマゾンでは、イノベーションを創出するための思考プロセスを「ワーキング・バックワード(逆方向に思考する)」と呼ぶ。具体的には「顧客ニーズからスタートしてそのソリューションとなる製品・サービスを発案する」ということである。

その中核を担うのが「PR/FAQ」と呼ばれる企画書である。アマゾンで新たなサービス・製品を提案する際には、誰もが必ずこのPR/FAQのフォーマットを用いる。「PR」はプレスリリース、「FAQ」は想定問答。アマゾンではサービスや製品の開発する前にプレスリリースを模したPR/FAQを書く。自分たちが企画するサービスや製品が、実際に市場に導入された時、新聞などのメディアへリリースし、掲載される記事がどのようになるかを想像して書く。

アマゾンがPR/FAQで実現しようとしているのは「顧客を起点に考える」ということ。作り手の立場の「プロダクトアウト」の考え方を排除し、市場にいる顧客が求めるものを作る「マーケットイン」を徹底する。

PR/FAQに具体的に盛り込まれる要素が次の3点

  • どのようなサービス・製品が市場導入されるのか?
  • 使用する人にとってどんな利点があるのか?
  • 実際使ってみた人のフィードバックはどうか?

 

PR/FAQには、想定される発売期日を必ず入れるのがルールで、概ね3〜5年後に設定されることが多い。このPR/FAQは、誰が書いてもよく、どのタイミングで会社に提案してもいいことになっている。情熱を持つチームや個人がPR/FAQを書き、上長や決裁権限を持つ人に提案していくことになる。

 

②「沈黙から始まる会議」で「社内政治」を撲滅する

アマゾンの会議資料には下記のルールがあり、PR/FAQも、これらのルールに従って作成される。

  • 会議資料にパワーポイントを使うのは禁止
  • 会議資料は、必ずワードファイルで1枚、3枚ないし6枚にまとめる
  • 箇条書きは禁止
  • グラフや図を使うのは禁止
  • 意見はすべて散文形式で表現する

このルールに則って、ワードファイルに散文で書くと、次のようなことを深く検討しなくてはならないことに気づく。

  • 自分の提案したいことは要するに何か?
  • その提案の根拠は何か?
  • 実現性はどの程度あるか?
  • 実現のための方法は、自分が提案している方法以外にないか?

 

会議冒頭には、長い沈黙の時間が流れる。なぜならワードで作成された会議資料を全員で黙読してから、議論を始めるからである。アマゾンでは提案内容を事前に伝えたり、打診したりしないルールが徹底されており、根回しの余地がない。

 

③「イノベーションサミット」で、イノベーションの風土醸成

アマゾンでは、定期的に「イノベーションサミット」という社内イベントを開催している。参加者は日常業務を離れ、普段、所属する部署の垣根からも解放される。いつもとは違うメンバーとチームを組み、新しいイノベーション提案に挑戦する。これが1年に1回開催されるというだけで、社員の日常の意識と行動が変わる。アイデアを考えることの強い動機付けになる。

 

④「ワンウェイ・ドア」と「ツーウェイ・ドア」で区別する

アマゾンでは「それはワンウェイ・ドアか、それともツーウェイ・ドアなのか?」という問いを投げかけられる。ワンウェイ・ドアとは、一度ドアを開けて部屋に入ってしまったら引き返せないドア。ツーウェイ・ドアとは、部屋が望ましい場所でないとわかったら引き返せるドアである。

ツーウェイ・ドアであれば、事前に十分な調査や分析ができなかったとしても、それを理由に歩みを止める必要はない。逆にワンウェイ・ドアならば、慎重に予測し、検討してからドアを開ける。「ツーウェイ・ワンウェイ」の場合分けによって、意思決定のハードルを上げ下げし、プロジェクトの進捗のスピードをコントロールするのが、アマゾンの仕組みである。

 

⑤「奇妙な会社である」ことを自認する

アマゾンは「自分たちのやり方は変わっている」という強い自負がある。逆に言えば「変わったやり方を肯定し、推奨し、促進する」のが社風である。

 

⑥リーダーシップ原則

ベゾス・レター アマゾンに学ぶ14ヵ条の成長原則

アマゾンのすごいルール