呼吸過多が病気の原因になっている
健康とフィットネスを妨げる大きな要因は「慢性的な呼吸過多」という状態だ。大抵の人は自分でも気づかない内に、適正量よりも2〜3倍は多く呼吸している。摂取する水や食べ物の適正量が決まっているように、呼吸にも理想的な量がある。食べ過ぎが健康を害するのと同じように、呼吸のしすぎは体に悪い影響を与える。慢性的な呼吸過多は「健康状態の悪化」や「体力低下」の原因になり、結果として仕事や運動のパフォーマンスを下げることになる。さらに「不安障害」「喘息」「倦怠」「不眠」「心臓病」といった症状や病気を引き起こし、「肥満」の原因にまでなることもある。
安静時から正しく呼吸すること
安静時の呼吸が、運動時の呼吸も決めている。安静時から呼吸過多の状態にある人は、運動時も呼吸過多になる。安静時にたくさんの空気を肺に入れても、血中の酸素は増えない。むしろ、持久力を高めたいなら一番やってはいけない。安静時に正しく呼吸すると、筋肉、肺、心臓に適量の酸素が供給される。その結果、運動中に息切れしなくなり、より効率よく体を鍛えられるようになる。
ボーア効果
肉体が活用できる酸素の量は、血液中にある二酸化炭素の量で決まっている。二酸化炭素は、血中の酸素が体内に取り込まれる量を決めるという、重要な役割を果たしている。この働きは「ボーア効果」と呼ばれている。そして、重要なのは、呼吸の仕方によって、血中の二酸化炭素濃度が決まるということだ。
呼吸過多の状態になると、吐く息が多すぎるので、肺、血液、組織、細胞の中の二酸化炭素が適正量よりも少なくなる。この状態は「低炭酸ガス血症」と呼ばれ、ヘモグロビンが酸素を手放さなくなることにつながる。その結果、組織や臓器に送られる酸素も少なくなる。そして、むしろ酸素がさらに減ってしまうことになる。その一方で、呼吸のレベルを適正に保っていると、血中の二酸化炭素の圧力が高くなり、ヘモグロビンが酸素を手放しやすくなる。そして酸素がきちんと筋肉や臓器に放出される。運動時に筋肉に酸素を効果的に送ることができるほど、筋肉はよりハードに長時間にわたって働いてくれる。
正しいエクササイズを定期的に行えば、二酸化炭素への耐性が高まり、最大酸素摂取量も向上させることができる。運動をすると代謝が活発になり、さらに通常より多く二酸化炭素が生成されるからだ。この状態を長く続けると、やがて呼吸の受容体が高炭酸の状態に慣れ、運動時に息が切れなくなり、筋肉に酸素が十分に行きわたるようになる。そして、強度の高い運動をしている時に酸素を効率よく使えるようになると、最大酸素摂取量の値も高くなる。
呼吸を改善させる方法
運動パフォーマンスを向上させるには、安静時に常に鼻呼吸でいることが鍵になる。
・起きている時も寝ている時も常に鼻呼吸をする
(寝る時に口にテープを貼ると効果的)
・ため息をつかない
・あくびをする時や話す時に大きく呼吸をしない
・1日の自分の呼吸を観察する