組織の中で公平さを求めるのは無駄
組織スキルを身につける第一歩は、「組織の掟」を受け入れることである。組織の中では、民主的な価値観がいつでも通用するわけではない。職場も民主的であるべきだという思い込みに固執していると、いずれ失望する。組織で生き残り、圧倒的な成果を上げるには、次の組織の掟を受け入れなければならない。
- 組織は民主的ではない
- 力の大きさは人によって違う
- あらゆる決断は主観的である
- あなたの上司はあなたの人生の大半をコントロールする
- 組織で公平さを期待するのは不可能である
組織とは、力関係のはっきりしたヒエラルキー構造である。そうなっているのは、すべての人が合意するまで待っていたら、時間ばかりかかって何も決まらなくなってしまうからである。物事を決める権限を持つ人が存在するということは、私たちはいつでも、上の人の決断に従わなければならないということである。その決断を下すのは人間である以上、主観的なものである。
また、組織で働くというのは、報酬、福利厚生、興味深い活動、家の外に出るチャンスなど、仕事をするモチベーションになるあらゆるものと引き換えに、自分の人生をコントロールする権利の一部を手放すということでもある。時に私たちは、このコントロール権を取り戻そうとして、愚かな行動に走ってしまうことがある。
大抵の場合、組織のヒエラルキーですぐ上に位置する人は、大きな力を持っている。給料も評判も担当する仕事も、昇進も上司が決め、さらには全般的な人生の質も上司の影響を受ける。まずこの事実を受け入れること。それができれば、次の必要なのは、ボスを効果的に管理することだとわかる。大切なのは、自分が上司をどう扱うかということである。
組織で生きるスキルと知性を身につけたいなら、組織の掟を受け入れることが絶対的な前提条件である。そうでないと、自分の扱われ方が「公平」かどうかということを、いつも気にかけていなければならなくなる。組織で公平さを求めるのは、完全にエネルギーの無駄遣いである。組織スキルの高い人は、完全な公平さを実現するのは不可能であり、またそんな必要もないということを知っている。
相手との力関係を見極める
組織スキルでは、レバレッジの力学を完全に理解することがカギになる。レバレッジとは「他人に自分のして欲しいことをさせる能力」のことである。人と人との関わりには、大抵何らかの形でレバレッジが働いている。
・レバレッジを左右する要素
役職、地位、相手が必要とするリソース、ライバル、力のある人とのつながり、代替が難しい能力、評判、業績、人間関係
自分が持っているレバレッジと他人が持っているレバレッジを正確に把握する能力は、組織を生きる上で欠かせないものである。組織で自由に働ける人は、どんな状況でも「レバレッジ方程式」を正しく計算することができる。レバレッジの計算を間違えると、大抵の場合、レバレッジの少ない人が不利益を被ることになる。
自分のレバレッジを過大評価すると、エゴは満足するかもしれないが、いずれ失敗することは避けられない。反対に謙遜や自信のなさからレバレッジを過小評価すると、今度は他者に影響を与え、最終的な目標達成に向けて前に進むチャンスを逃すことになる。
職場でどんな経験をするかということは「公平さ」で決まることは滅多にない。本当に力を持っているのは「レバレッジ」である。レバレッジの低い人たちは「公平さ」にこだわる。彼らは自分が受けた不当な扱いに腹を立て、会社の決まりや上のやり方に納得できないと文句を言う。一方、レバレッジの大きい人たちは公平さにこだわらない。彼らが重視するのは、自分を目標へと近づけてくれる「行動」である。結果を出すことと、人間関係を築くことにエネルギーを集中させる。
組織スキルを劇的に高める7つのレバレッジ・ブースター
組織スキルさえあれば、様々な方法で自分のレバレッジを上げることができる。
①結果を出す力
組織の競争力を高める、生産性や効率性を上げるといった結果を出す。特に有効なのは、重要な意思決定者に自分の能力を認めてもらうことである。
②知識の力
その仕事に詳しい人は、周りから貴重な情報源として一目置かれるようになる。
③態度の力
一緒に働くのが楽しい人になる。そのためのコツは、友好的で協力的な態度を保ち、喜んで周りの助けになることである。
④共感の力
相手の気持ちを本気で理解しようと努力する。
⑤ネットワークの力
組織内外でポジティブな人間関係を築く。社内や社外のネットワークが広いほど、仕事で成果を出すことができる。
⑥巻き込む力
自分の意思決定、行動、プロジェクトに協力してくれる人が多いほど、より良い結果につながる。
⑦距離を置く力
仕事との間に適切な距離を置き、物事を客観的に眺め、中立的で冷静な判断をする。