ドローン1.0のビジネス
ドローンとは「電動で飛行し、人が乗らずに遠隔操作や自動操縦で空を飛ぶもの」である。2015年、航空法にドローンの構造に関する内容や飛行空域、飛行方法を規制する内容が制定された。この前後から、ドローンを活用して行われ始めたビジネスを「ドローン1.0のビジネス」としている。ドローン1.0のビジネスとして代表的なものは以下の3つ。
- 空撮:ロケ番組で上空から撮影している映像の撮影
- 点検:鉄塔や送電線、ソーラーパネルなどをドローンに搭載されたカメラを使って調べること
- 農業:ドローンから農薬などを散布すること
ドローン1.0のビジネスでは、航空法により、ドローンを人の上空で飛行させることはできない。そのため、飛行させる際には、ドローンが飛行する場所に人が立ち入らないように管理する必要がある。そのため、補助者を何人も配置しなければならない状況が多くあった。結果的に、自由なルートで長距離を飛行させることができず、ドローンを人が目で見える範囲内、即ち「目視内」で飛行させなければならなかった。
ドローン2.0のビジネス
規制があることで進められなかったドローンの活用だったが、2022年12月の改正航空法の施行で、ドローンを人の上空で飛行できるようにし、操縦者や補助者が目視しなくても良いように規制緩和が図られた。このような人の上空で、あまり人手をかけずにドローンを活用して展開するビジネスが「ドローン2.0のビジネス」である。
ドローン2.0のビジネスには「物流」「警備」「公共利用」といったものが挙げられ、これから発展することが期待されている。人の上空でドローンが飛行できることになったことで、物流、イベント会場での警備や、通学路上で子供たちを見守るような公共利用が進むと見込まれている。
ドローン3.0のビジネス
2025年開催予定の大阪・関西万博の最大の目玉とされているのが「空飛ぶクルマ」である。会場内外に設けられた離発着場を空飛ぶクルマが飛行して結ぶという取り組みが計画されている。この空飛ぶクルマが町中を飛び交う時代を「ドローン3.0時代」と定義している。
空飛ぶクルマが飛行機やヘリコプターと決定的に異なる点は「パイロットが乗り込まずに遠隔操作や自動操縦する」ことと「電動化」である。空飛ぶクルマは「人が乗れるほど大きくなったドローン」であると言える。
ドローン3.0時代には、ドローンが物だけでなく、人も運ぶようになる。また人が乗れるほど大きなドローンが飛行できるのであれば、人の代わりに多くの物を積むこともでき、物流もさらなる改善が期待される。
これから伸びるドローンビジネス
政府は「空の産業革命ロードマップ」を策定。ここには、各分野における今後のドローンの活用方法についても指針が示されている。つまり、政府がこの分野に力を入れることを表明しており、今後伸びてゆくビジネスのヒントがある。
- 農林水産:農薬散布、ほ場センシング、肥料散布、播種、受粉、収穫物等運搬、鳥獣害防止、森林センシング
- 測量:空撮、3次元データ作成
- 医療:僻地の医薬品配送、機材・血液等の緊急輸送、救援物資の配送
- 警備:侵入監視・巡回監視
- 災害対応:被災状況の把握、災害現場における機材搬送、救助・捜索
日本国内の2023年度ドローンビジネスの市場規模は3828億円。2028年度には9340億円まで成長するという。こうしたドローン業界おいて、既にパイロットの数は多い。いま圧倒的に足りない人材は、ビジネスをプランニングする人、あるいはエンジニアである。ドローンビジネスではパイロットを目指すのではなく、ドローンを飛行させずにビジネスを展開する方法がある。
ドローン3.0時代が来る
空飛ぶクルマは自動車の運転が困難になる高齢者の足や、観光資源としての利用が想定され、各地方自治体からも期待が寄せられている。東京都では現在「東京ベイeSGプロジェクト」として、2023〜2025年度にかけて、野村不動産が行う空飛ぶクルマ用浮体式ポートの実現可能性を検証する事業、丸紅エアロスペースがHEXAを使用した有人による2地点間飛行の実証などを行う予定である。
これとは別に2022年8月「都内での空飛ぶクルマの社会実装を目指すプロジェクト」が1件採択された。プロジェクトで三菱地所は、バーティポートをビルの屋上や駐車場などに設置を検討。2023年にはまずヘリコプターを利用して空域や航路を検証し、2024年に空飛ぶクルマが飛行する予定である。
空飛ぶクルマの航続距離は機体によって100〜300km。時速100〜200kmは出せる。これらの機体が関東平野に投入されると、水戸市や宇都宮市など北関東から東京都心までわずか30分。十分に通勤圏内になる。関東平野は空飛ぶクルマにとって魅力ある地域である。