DEEP PURPOSE 傑出する企業、その心と魂

発刊
2023年2月17日
ページ数
340ページ
読了目安
563分
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社会的な課題解決と利潤を両立させるパーパス経営の本質
企業の社会的責務をパーパスとして掲げながら、高い業績を上げてる企業はどのような経営をしているのか。
「商業的な利潤か、社会的な奉仕か」という二項対立問題を解決し、うわべだけのパーパスに終わらず、優れた業績を上げ続ける企業の考え方が示されている一冊。

企業にもSDGsやESGへの対応が求められる時代にあって、注目を浴びているパーパス経営の基本と本質がわかる内容になっています。現在のほとんどの企業にとって必要不可欠な経営の考え方を理解できます。

「都合のいいパーパス」問題

パーパス・ステートメントの中で、最も説得力があるものは、基本的で相互に関連した特徴を2つ持っている。

  1. 会社にとっての野心的な長期目標を描き出す
  2. 目標に理想主義的な彩りを与え、会社をもっと広い社会的責務の実現にコミットさせる

 

最高のパーパス・ステートメントは、利潤や商業的な優位性の利己的追求を超越し、何らかの形で社会や人類に奉仕を行うよう組織に呼びかける。

 

しかし、実のところ、理想主義的なパーパス・ステートメントを採用し、社会に奉仕する各種活動を行いつつ、ステークホルダーに深刻な被害を引き起こす製品やサービスを販売し続ける企業はいくらでもある。こうした企業は「都合のいいパーパス」と呼ぶものを実践している。都合のいいパーパスにもレベルがある。

 

①偽装としてのパーパス

気高い存在理由を、とんでもなく利己的な目標や、ときには犯罪行為を追求するための隠れ蓑として利用する。

 

②周縁部でのパーパス

パーパス・ステートメントを採用し、それを実現する手立てを講じるが、そうした活動は中核事業にとっては二次的なものとして扱われてしまう。利潤を生み出しつつ高次のパーパスに奉仕するような、創造的な新製品やサービスを作り上げられない。こうした企業は株主価値の最大化を成功の主要な尺度としており、うわべだけの立派さを維持できるだけの金額しか還元しない。

 

③ウィン=ウィンだけのパーパス

一部の最先端企業は、中核ビジネスを見直して株主と社会の双方に価値をもたらそうとする。ウィン=ウィンだけのパーパスを追求するだけでも、同業他社に比べれば遥かに先を行っており、その企業活動の中核にパーパスを押し込んでいる。資本主義の転換を目指すこうした企業は、複数のステークホルダーを持つアプローチを採用し、意識的にCSR以上の活動を目指す。だが、こうした企業は、ウィン=ウィンが可能と思える範囲までしかパーパスを実現しようとしない傾向にある。企業の財務業績や顧客の要望に応えることが、他のステークホルダーより優先される。

 

様々な都合のいいパーパスが広まっているために、パーパスだけでなく、資本主義が自己改革して気候変動、格差、人種的公正といった実存的な問題に取り組めるかどうかという広い問題についても、冷笑的な態度が生まれた。こうした冷笑的態度の責任は、パーパスひいては社会的価値へのコミットメントを、単なる便宜上のものとして扱った企業やリーダーにある。

 

パーパスがもたらす4つの便益

パーパスは、そのビジネスがステークホルダーたちのために、利潤が出る形で解決しようと意図している、商業的社会的問題の統合ステートメントである。

多くのリーダーたちが形式的にしかパーパスを追求しないのは、うわべは熱心に見えても、パーパスへの献身が事業の業績をどのように拡大するのか、充分に理解していないからだ。

 

ビジネスは何のためにあるのか、という最も簡単な質問から始めて、ディープ・パーパス・リーダーたちはこのステートメントを、事業やそのアイデンティティと活動を理解するための究極的な基盤として位置づける。そして、ディープ・パーパス・リーダーたちは、ほとんどのリーダーよりもパーパスの道具的な価値を理解しており、パーパスによる業績改善をもっと充分に実現している。

パーパスが業績にもたらす便益には、次の4つのレバーがある。

 

①方向的

ディープ・パーパスは「北極星」となり、イノベーションを方向づけるのに役立つ。将来を考えるにあたり、企業はしばしば追求可能な無数のビジネスモデルや技術から、どれかを選ぼうと苦闘する。リーダーたちの視野を狭めることで、パーパスはイノベーション予算の配分に役立つ。この集中で企業はさらに、その狭い範囲でもっと広くホリスティックに考えられるようになり、システムアプローチを使うことで、イノベーションに到達したりする。

 

②関係的

ディープ・パーパスはエコシステムのパートナーたちの信用と信頼を維持し、長期関係を確立できるようにする。パーパスはそれを2つのやり方で実現する。まず、サプライヤー、起業家などとの長期パートナーシップを構築する論理を提供してくれる。そして、信頼と仲間意識を醸成することで関係性の質を向上させる。

 

③評判的

ディープ・パーパスは、顧客の親近感、忠誠、信頼を構築するのに役立つ。今日の顧客は、企業の存在理由やそれが体現する道徳的価値に基づいて購買決定をしたがるようになっている。

 

④動機的

ディープ・パーパスは仕事を昇華させ、従業員の動機付けと啓発を可能にする。企業は野心的な戦略目標を立てるだけでは、内在的に労働者たちを動機付けることはできない。パーパスは共有されたアイデンティティの感覚を生み出す。そのアイデンティティは今度は内在的な動機を湧き起こせる。

 

こうしたレバーすべてで実現される業績改善は、ステークホルダーとのトレードオフを扱いやすくし、万人にとって価値を増し、部分的には勝つが部分的には負けるという可能性を減らす。これがさらに、パートナーシップを強化し、業績をさらに改善する。

パーパスのレバーを最大限に活用するためには、リーダーシップについての考え方を変え、自分の道徳的な立場とステークホルダーとの相互依存の両方を認識することだ。

 

参考文献・紹介書籍