解像度を上げる 曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法

発刊
2022年11月19日
ページ数
352ページ
読了目安
559分
推薦ポイント 10P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

新規ビジネスを立ち上げる際に最も重要なこと
優れた起業家に共通する顧客や市場への「解像度の高さ」をどのように手に入れればいいのか。数多くの起業家を支援してきた著者が、新規ビジネスの立ち上げや起業に必要な顧客や市場の理解を高めるための方法論をまとめた一冊。

どのようにして、顧客の課題に辿り着き、優れた解決策を生み出せば良いのか、必要な姿勢や考え方、手段が書かれています。新しいビジネスに取り組む際には必須となる内容になっています。

解像度を上げるための4つの視点

議論の見通しが悪い、言説の内容が曖昧、論点がはっきりしない、物事を十分に理解できていないと感じる、こうした思考の状態のことを「解像度が低い」という。逆に明晰な思考ができている状態のことを「解像度が高い」と表現する。

どんな仕事であっても、解像度を上げることで現状への理解を深め、時には新しいビジネスや改善の機会を認識し、時には新たな脅威を見つけて、効果的に業務を遂行できるようになる。逆に解像度が低い状態で業務や意思決定をするのは、霧のかかった中で射るべき的が見えないまま、当てずっぽうに打ち手という矢を射るようなものである。

 

相手の持つ課題を、時間軸を考慮に入れながら、深く、広く、構造的に捉えて、その課題に最も効果的な解決策を提供できていることが、解像度が高い状態である。つまり、解像度の高さは、次の4つの視点で構成される。

 

①深さ

原因や要因、方法を細かく具体的に掘り下げること。深さがなければ、課題を考える時も何が根本的な問題であるかがわからない。

 

②広さ

考慮する原因や要因、アプローチの多様性を確保すること。課題を考える時にも、広く原因を把握し、異なるアプローチや視点を幅広く検討することで、元々考えていたのとは別のところにある原因や可能性に気づくことができる。新規事業やスタートアップの場合、十分な視野の広さがなければ本当の課題に気づくことができない。

 

③構造

「深さ」や「広さ」の視点で見えてきた要素を、意味のある形で分け、要素間の関係性やそれぞれの相対的な重要性を把握すること。要素が適切に構造化されていなければ、単なる知識の羅列になってしまう。共通する部分はどこで、違いは何なのか、どういった関係性にあり、その中でも最も重要なのはどれで、それはなぜなのかを理解していなければ、新しい洞察を導くことはできない。

 

④時間

経時変化や因果関係、物事のプロセスや流れを捉えること。私たちの世界には時間が流れており、解像度を上げる対象となる世界は変わり続け、深さ、広さ、構造は常に時間と共に変わっていく。時間が過ぎると顧客の行動は変わり、市場も刻一刻と変わる。

 

「深さ」「広さ」「構造」「時間」は、どれか1つに集中的に取り組めばよい訳ではない。4つが相互に影響しあって、解像度は上がっていく。これら4つのどれかが足りずアンバランスだと、解像度は上がらない。アンバランスの中で最もよくあるのは、深さが足りないパターンである。そのため、まず「深さ」から始めるのが良い。

 

昨今はインターネットで検索すれば様々な情報を誰でも獲得することができる。しかし、一定以上に深い情報はインターネットでは手に入らず、希少性が高まっている。そこでまず、現場に転がる希少で具体的な、深い情報を先に得て、解像度を上げる。まず深さを確保することで、解像度を上げるサイクルが回り始める。

広さと構造にこだわりすぎて、際限なく調査や分析ばかりしてしまい、現場に行かないために深さを十分に確保できず、解像度を一定以上に上げられない状況はしばしば見聞きされる。

 

解像度を上げるための基本姿勢

解像度を上げるためのポイントは次の3つである。

 

①まず行動する

「情報」と「思考」と「行動」を組み合わせ、それぞれの「量と質」を高めていくことで、高い解像度へと辿り着くことができる。材料となる情報が間違っていれば、どんなに思考能力が高くても正しい答えは出ない。解像度を上げるにはまず、情報や思考が粗い状態でも、行動量を増やす、とにかく最初に行動し始めることが大切である。なぜなら、行動することで、周囲や市場からのフィードバックという、本やインターネットではなかなか手に入らない情報を得ることができるからである。また行動して得られた経験によって、実感を伴った自分だけの思考も促されるようになる。

情報を得たらすぐに思考し、思考したらすぐに行動し、行動をして情報を得たらまた深く思考する、これを短時間で繰り返すことが解像度を上げるコツである。

 

②粘り強く取り組む

情報と思考と行動の全てにおいて、時間を十分にかけることも重要である。起業のアイデアであれば、約1000時間、1つの領域に取り組んで初めて光明が見え始めるというのが経験則である。まず少なくとも200時間を情報と思考と行動に使わなければ、最初のそこそこ良いアイデアに辿り着くことはできない。

 

③型を意識する

行動量を上げるために、手当たり次第、できることをすべてやれば良いという訳ではない。行動をする時には効率的な手段やベストプラクティスがある。

 

ビジネスにおいて解像度を上げるべきなのは顧客の「課題」とそれに応じた「解決策」である。ビジネスでは、顧客や社会の持つ「課題」を「解決」することによって価値が生まれる。