人を見極めるためのフレームワーク
人を見るためには、人間を建築物のように階層として捉えるといい。イメージは地下深くにつくられた建物である。
1F:経験・知識・スキル
B1F:コンピテンシー(行動特性)
B2F:ポテンシャル
B3F:ソース・オブ・エナジー
浅いものほど他人から見えやすく、わかりやすく、変わりやすい。一方、地下に潜れば潜るほど見えにくく、わかりにくく、変わりにくい。こうした建造物のように人の内面を捉えると、人を見ることが非常に楽になる。
経験・知識・スキル
相対的には表面的なものであり、履歴書から簡単に読み解くことができる。誰が見ても、誰が聞き出しても、比較的見間違わないものであり、ファクトとして伝えられやすい。そのせいで、ほとんどの面接は、この階層を触るだけで終わってしまい、全体を見た気になっている。
その気になれば捏造すらできる薄っぺらな情報で、大事な人選びの決断を進めてしまうことで生じる採用ミスはあちこちで起きている。
コンピテンシー
コンピテンシーとは「好業績者の行動特性」である。その人が「どんなシチュエーションで、どういうアクションを取りがちか」という、固有の行動パターンを指す。相手のコンピテンシーがわかると、相手の将来の行動を予測するのに使える。ビジネスの現場で人を見極める際には、大体5〜7個のコンピテンシーを取り扱うが、代表的なものは次の3つである。
①成果志向
何かのノルマを課せられた時に、成果志向が低レベルの人は「難しいとやめてしまう」、中レベルの人は「絶対にやり遂げ、目標はなんとか達成しようとする」、高レベルの人は「目標は越えることが当たり前で、そのための動きを早期から逆算でき、目標超えの結果を繰り返してナンボと考える」。
②戦略志向
低レベルの人は「自部門の戦略を立てることはできる」、中レベルの人は「自社全体の戦略を策定できる」、高レベルの人は「業界や産業全体の戦略を立てられる」。
③変革志向
「現状打破のために何をすべきか」「変化の方向性はどのようなものであるべきか」といった物事を変えてゆく行動特性。
これらの具体的な中身の高度さ、緻密さを探っていく。コンピテンシーを見抜くためには相手の「意見」ではなく「取った行動=ファクト」にフォーカスする。具体的に「あなたはその時、何をしたの?」と、相手が取った「行動」にフォーカスして深掘りすることで初めて、有益な情報=コンピテンシーが見えてくる。
コンピテンシーを見極めようとする際に重要なことは「先にエピソードありきで、それをコンピテンシーに仕分ける」ことである。まず相手が答えた「自慢話」のうち、知りたいコンピテンシーに関わる物が出てきた際に、話を少し遮って、次のような質問を重ねて深掘りしていく。
- ちょっとそこ、もう少し教えて頂けますか?
- 具体的にはどうやったのですか?
ポテンシャル
経験・知識・スキルやコンピテンシーは、物心がついてから、学習と体験を通じて形作られ、変化していく。これらはコップに注がれる水だ。そしてコップそのものが、器=ポテンシャルである。人の器の大きさ、伸びしろは次の4つの因子で測ることができると言われる。
①好奇心
好奇心が優性因子であり、他の3つの因子を育む。新しい経験、知識、率直なフィードバックを求めるエネルギーの強さと、学習と変化への開放性がこれにあたる。
- 吸収:「とにかく知りたい」という好奇心を持つ
- 更新:古い知識をアップデートする
②洞察力
新しい可能性を示唆する情報を収集し、理解するエネルギーの強さを指す。
- 集める:様々な情報を集め、整理し、意味を理解することにワクワクする
- つなげる:離れたものの共通項を見い出す
③共鳴力
感情と論理を使って、自身の想いや説得力のあるビジョンを伝え、人々とつながろうとするエネルギーの強さを示す。
- 結ぶ:相手とのつながりポイントを無意識に探し、自らのビジョンやアイデアを伝える
- 響く:エネルギーの交換を無意識に求め、それがわずかな時間の間にどんどん高まっていく
④胆力
大きなチャレンジがある課題を好み、困難な目標に向かって戦うことに強いエネルギーを得て、逆境から素早く立ち直る力を持つことを指す。
- 腹落ち:迷いがありながらも、それらをすっぱり断ち切って、覚悟を決める
- 律する:自分を厳しく律しないといけないと考え、その壁を越えていくチャレンジにエネルギーが高まる
「エネルギー」とは、時に無自覚に、自然と湧き起こる「熱量」のようなものだ。好奇心、洞察力、共鳴力、胆力の4モデルごとに相手を掘り下げて、全体のエネルギーレベルを統合し評価すると、器の大きさが測れる。
ソース・オブ・エナジー
ソース・オブ・エナジー(エネルギーの源泉)とは、その人の精神性であり、次の2つである。
①使命感
②劣等感
事を成す人となるには、行動の源泉である「使命感」や「劣等感」の強さと、矢印を他人や環境ではなく、自分に向けられるか否かにかかっている。