Net Positive 「与える>奪う」で地球に貢献する会社

発刊
2022年10月13日
ページ数
536ページ
読了目安
684分
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これからの企業経営に求められる原理原則
株主の利益のためだけに経営するのではなく、企業を取り巻くあらゆるステークホルダーに責任を持ち、長期的な成功を目指す経営のあり方を、ユニリーバの元CEOが説いています。
SDGsやESGなどによって、少しずつ企業経営の考え方が変わりつつある中、いかに企業は責任を負い、社会全体のためになるべきか、5つの重要な原則を紹介しています。

ネットポジティブ企業の5原則

ネットポジティブな企業とは、影響を与えるすべての人のウェルビーイングを、すべての製品、事業、国・地域において向上させ、従業員、サプライヤー、地域社会、顧客、さらには将来世代や地球そのものなど、すべてのステークホルダーに貢献する企業である。

経済や地球を存続させようとするなら、企業はそこを目指さなければならない。究極の問いは「あなたの会社があることで世界はよりよくなっているだろうか?」である。

 

「責任」こそが、普通の企業とネットポジティブな企業を分ける中心的要素である。結局のところ、現行の株主資本主義モデルは明らかに責任を負わず、汚染や格差などの問題を「人ごと」と見なすことで、多大な利益を企業にもたらしている。従って、責任を負うことが最初の一歩だ。

責任を中心とした、5つの重要原則が、企業パフォーマンスを新たな次元に引き上げる。これらの原則を支えに、企業リーダーは視野を広げ、仕事について考え直し、社会における企業の役割をつくり変えることができる。この5つをしっかり実践することが、単に経営状態の良い善意の企業と、ネットポジティブ企業を分けるポイントになる。

 

①意図するかしないかに関わらず、自社が及ぼすすべての影響・結果に責任を負う

新しい世界では、サプライチェーン全般から製品ライフサイクルの終わりまで、ビジネスのあらゆる影響に企業は責任を負わなければならない。企業が人々や地球に及ぼす影響すべてに責任を負うというのは、リスクや問題点を見つけることに限定されない。あらゆる影響を綿密に調べることで、効率アップやコスト削減の機会が生まれたり、成長のためのイノベーションが起きたり、人々のつながりが深まったりするプラス面もある。

すべてに責任を持てば、企業の文化や重点を置く課題が変わり、人間らしさが増す。経営幹部と従業員はもっと幅広い影響について考え、すべての関係者のウェルビーイングを増進させ、ネットポジティブへ向けて努力するようになる。

 

②企業と社会の長期的ベネフィットのために活動する

社会に奉仕するネットポジティブ企業を築くのは長い道のりだ。果実の大部分は現在の経営陣が去ってから得られる。企業そのものも長続きするとは限らない。

長期的な価値の創造とは、単年で大きな目標達成を狙うのではなく、一貫した取り組みによる複合的効果を得るために毎年投資し続けることを意味する。企業はシナリオプランニングのような方法を使って、思考範囲を広げるべきだ。この時に重要なのは、詳細な戦略策定ではなく「己は誰なのか」を考えること、つまりパーパスを考えることだ。

 

③すべてのステークホルダーにプラスのリターンをもたらす

現在、ほとんどの大企業は外部集団と誠実に協業しているが、それでも最初は「我々にどんなメリットがあるのか」と問いがちだ。ネットポジティブ企業はステークホルダーのニーズを最優先する。どんな企業も顧客のニーズを満たし、顧客の暮らしをよくするために存在する。そこでこの理屈を発展させ、従業員や地域社会の繁栄にも手を貸せないか考えることだ。

すべてのステークホルダーにプラスのリターンをもたらすといっても、全員を同時に満足させる必要はない。等しく注意を払い、等しく資源を配分する必要もない。全員を同時に優先することはできない。但し、それぞれのグループにとっての長期的アウトカムはプラスでなければならず、そこには株主も含まれる。

 

④目標ではなく結果として、株主価値を高める

株主価値は結果であり、目的ではない。世界に貢献する長期志向の企業をつくる上で唯一最大のハードルは、四半期決算に対する執拗な重圧だ。それは企業や経済をねじ曲げてしまう。短期重視の圧力から逃れる最善の方法は、投資家とあまり話さないようにすることだ。

一般的に株主は利益が順調に増えることを望み、企業は彼らを満足させようとして経営にあたる。しかし、多くの投資家は企業の長い友人にはならない。株式の平均保有期間は20世紀半ばには8年だったが、2020年には約5ヶ月に急減した。株主を崇め奉っている限り、ちゅき的な思考を要する、すべてのステークホルダーのウェルビーイングに資する最適なシステムは構築できない。

 

⑤システミックな変革を推進するためにパートナーと協業する

大掛かりなシステム変革には、企業のコントロール外にあるグループ(他社、地域社会、NGO、政府、消費者、サプライヤーなど)とのパートナーシップが不可欠だ。うまくいけば、ステークホルダーのネットワークは相乗効果を発揮し、より大きな成果をより早く実現できる。ネットワークが効果的であるためには信頼が必要であり、それは自身の課題や失敗をさらけ出すことで醸成される。
そうした信頼を築き、パートナーシップを成功させるためには、上記4つの原則を満たすことも必要だ。責任を負い、長期的に考え、他者のために働き、株主を適切に扱うこと。それができなければ、物事を大きく捉えることはできず、ステークホルダーに信頼されることもない。

 

5つの原則を絶対に譲れない条件とすることで、サステナビリティに長けたプレーヤーが一定の成果を出すだけでなく、世界的な企業が人類のためにより多くの価値を創造することができる。